戻る <<戻る | 進む>>
第2話 青風 ◆BlueWmNwYU 投稿日:  2006/11/21(火) 14:13:37
『踊る!? アメリー御殿』 (第2119話として採録済みを修正)

第一幕 踊る大広間

 此処は、今をときめく藩王様がお住まいのアメリー御殿。
 サリーを纏った3人の女中さんが、白亜の大広間でお仕事の最中です。

 おや、どこからか音楽が流れてきますよ。

 ちゃんちゃんちゃんちゃん
   ちゃらーんららん
     ちゃんちゃんちゃんちゃん

「サァーアー、急ぎましょー。
 もーうすーぐ旦那様がーお帰りにー成りーますわー」
 エリザベスちゃんが音楽に合わせて歌います。
 すっちゃすっちゃすっちゃと踊るステップも軽やかです。
「アーラー大変ーー、旦那ー様はーー気むずかしいーー方ですからーーー」
 フランソワーズちゃんも続きます。
「そーーれに引き替え、妹のーラスカ様はーーとってもー優しいーお方ー」
 是はタイワンちゃんです。
 此処で音楽に合わせ3人揃って右へ1回ターン。
 ぱんぱん、と手を打ち鳴らして左へターン。
 なかなかよく揃っています。
 と、突然左右からサリーの地球組女子がすたたたと登場し、3人の周りをぐるっと囲んでステップに加わります。
 テンポの速い曲に合わせくるくると舞い踊り、タイミングを合わせて艶やかなサリーをひらひらとなびかせるその様子は、とても見事なものです。

「ねぇ聞いた? あの嫌らしい番頭の奴の噂」
 タイワンちゃんがしゃべり出すと、ぴたっとステップも止まります。
 すすす、と何事も無かったかの様に左右に消える地球組女子。
「噂には聞いていましてよ」
 エリザベスちゃんが応じます。
「そうですわ。あの無節操で役立たずで女たらしの」
 これはフランソワーズちゃんです。
「マカロニーノの奴がラスカ様に言い寄って居るんですって!?」
 3人同時に叫びます。
第二幕 卑劣な悪党マカロニーノ

 どん どん どん どーーん!

 低い太鼓の音が響きます。
「おい、女中ども! 仕事をさぼっているなぁ!」
 どら声と共に、番頭のマカロニーノ君がホールを見下ろす2階バルコニーから堂々の登場です。
 真っ黒な口ひげと真っ黒な衣装にターバンを巻いた、なんとも判り易い悪役の扮装をしています。
「ああ、忙しい、忙しい」
 わざとらしく女中3人が下手へ退場して行きました。

 ずんか ずんか ずんか ずんか

 うって変わって低い調子の音楽です。
「おーおぅー、我が麗しのラスカ様ーー!
 何故にこの私めに振り向いて頂けぬーーー」
 ごろごろぴっしゃーーん
 突然の雷鳴が響き渡り、なぜか建物の中が暗くなります。
「まさか、あの貧乏士族のタケシとかいう小僧めを好いているのかぁ!」
 マカロニーノ君が叫びます。

 ずんだん ずんだん ずんだん ずんだん

 ドラムの低いリズムに合わせてどしんどしんと足下を踏みつけ、
「ラスカ様と夫婦になってーーー」
 両手を天に振り上げ、
「この家を乗っ取る私の計画がーーー」
 足音も高く階段を下り、
「あんな貧乏武術師範なんかのせいでーーー」
 此処で大きく息を継ぎ、
「台無しだーーーーー!」
 と、見事に甲高い声で歌い上げました。

 此処でステップを止め、ぽんと手のひらを打ち
「そうだ、あの兄妹2人にあの若造を始末させれば……ふっふっふっ」
 ぎらりと辺りを睨みつつ、マカロニーノ君は下手へ退場して行きました。

 ぴょーん びょん びょん びょん びょびょん びょびょん

 高い弦楽器の音楽と共に、正面奥の扉が左右に開け放たれました。
 薄いピンクのサリーに身を包んだ、ラスカちゃんの登場です。
「ああーー、私はーー聞いてしまった、恐ろしい悪巧みーーー」
 ここで手をもみ絞り、
「早く、早く愛しいタケシ様へお知らせしましょーーう」
 サリーの裾をひらめかせながら、そのままつつっと上手へ退場して行きました。
第三幕 襲撃、ゲルマッハ兄妹

「おお、お稽古の時間に遅れてしまった」
 今度は、その愛しいタケシ様ことウヨ君が下手から登場しました。
「一体何処ですか、愛しいラスカ姫」
 ポッと頬を赤らめながら高く声を張り上げます。

 がらがらどっしゃーん

 突然の雷鳴と稲光。広間の中に突風が吹き荒れます。
 ずんだん ずんだん ずんだん
 音楽も突然緊張感の有るものに変ります。

「可哀想だが、キサマはラスカ様にはもう会えん。
 オマエの命は我ら兄妹がこの場で貰い受ける!」
 左右から突然斬りかかる人影2つ。
 とっさに抜き放たれるウヨ君の愛刀、関の孫六。
 ひょう、と横なぎの迎撃を受けるは三日月型の大刀二本。
 がきん、と手応えがしたかと思えば飛びすさぶ暗殺者2人。
「誰だ!」
 誰何への返事はまたも斬撃。
 受ける刀がその切っ先を切り飛ばす。
「なかなかやる」
 刺客の一人、ゲルマッハ君が思わず呟く。
「我ら兄妹、オマエに恨みはないが」
 アーリアちゃんが大刀を腰だめに構える。
「オマエの生を望まぬお方がいらっしゃる!」
 そのままウヨ君へ向けて、捨て身の突進。

 さしものウヨ君も絶体絶命かと思われた、まさにその瞬間。
「お止めになって下さい!」
 必死の声で飛び込む、うす桃色の人影。

「あぁ!」
 ラスカちゃんが血を流しています。
 思わずウヨ君が抱きかかえます。
 その目には、呆然と立ちすくむゲルマッハ兄妹も目に入りません。
「なんと云う事だ、ラスカ姫!」
 抱きしめるウヨ君の腕に力が籠もります。
「ああ、愛しいタケシ様」
 抱きかかえられる彼女も、すでに夢見る瞳。

 音楽が女性のコーラスに変りました。
 左右からすすすと再び地球組女子の登場です。
 二人の周りをぐるりと囲んで
 ああ、二人の愛は永遠 恋人達に祝福あれ
 と歌って踊ります。
 若い恋人達は自然に顔を近づけあい、ついには互いの唇を……。
第四幕 踊れ、大団円!

 劇的なフィナーレを迎えるまさにその瞬間、
「HEY,YOU! どさくさに紛れて何をしとんのじゃ!」
 ウヨ君の後頭部にカチンコがうなりを上げて飛んできました。
 ごきっ
 命中音と共に崩れ落ちるウヨ君。
「きゃあ、タケシ様!」
 ラスカちゃんはすっかり成りきっています。
「オマエもいつまでやってるんだYO!」
 声がした方には、きんきらきんのターバン姿のアメリー君が怖い顔で立っていました。



「あーあ、台無しだよ」
 イン堂君がぼやきます
「うわあああ、今のは私のシナリオじゃないよう……」
 困惑するニホンちゃんです。
 そうです、みんなはイン堂君のお家でビデオムービーの撮影をしていたのでした。
 彼のお家ではビデオムービーがとっても流行っていて、実はその本数はアメリー家をも越えているのです。
 それならと、クラスのみんなでイン堂君のスタイルで一本撮ってみようという話になったのです。
 監督もちろんイン堂君。脚本はなぜかニホンちゃん。
 主演はウヨ君とラスカちゃん。
 題して「踊るアメリー御殿」撮影好調、だったのですが。

「フランソワーズさんならともかく、何故私が女中ですの?」
「あら、貴女にこそお似合いの役かと思いますわよ」
「僕はあんなひどい男ですかぁ!」
「あはは、其処の脚本て最高だったよね」
「何故私だけサリーを着ないのだ?」
「ウヨの刀、アレ本物だったろう……?」

 いろいろと皆さん不満が有るみたいですね。
 でも、一番不満だったのは彼でしょうか?
「い、妹に何をさせる気だぁ!!」
「落ち着いてください、お義兄さん」
「お義兄ぃッ――――……!」

解説 青風 ◆BlueWmNwYU 投稿日:  2006/11/21(火) 14:20:02
解説
世界で最も映画を撮っている国は何処でしょう?
実はハリウッドを押さえて堂々の一位は、インドなのです。

ttp://indokeizai.com/industry/movie.html


……という薄いネタを強引にこじつけて、
マサラムービーネタを投稿したのが05/01/18。
もう、1年と10ヶ月前になるんですねえ。
手直ししていて、しみじみ進歩してないなーと実感しました。
反省? いや、あまりしてないですw
自分ではこういうテイスト好きなもんだから、はい。
そのうちまた、この手のコメディー書いてみたいと思います。

この作品の評価を投票この作品の評価   結果   その他の結果 Petit Poll SE ダウンロード
  コメント: