戻る <<戻る | 進む>>
第36話 名無しさん@誤報大好き♪ 投稿日: 2005/01/23(日) 10:33
「罪なきもの」

「さよなら〜」「また明日」みんなが家に帰る時間です。
校舎を出たヨハネ君の目にとまったのは校庭の隅の人だかりでした。

「どうしたんだろう」と近くに寄っていくと口々にアサヒちゃんをなじる
放送部員たちの声が聞こえてきました。
怒った部員たちに取り囲まれてアサヒちゃんは涙目になっています。

ただならぬ雰囲気に思わず「どうしたの?」と部員の一人に聞いてみました。
「ああヨハネか。いやね、こいつが放送部員が先生の圧力で学校放送の中身を
ねじ曲げたなんてデタラメを書きやがったのさ。取材だとかいって俺たちに
インタビューしておきながら、言ってもいないことを言ったことにされちまって。
もうね、最初から書くことを決めてあって、それに合うように俺たちの言葉を
適当に作っちまったのさ。」
「ふーん、そんなことがあったんだ。」
「な、ひでえ奴だろ。一発ぶん殴ってやらなきゃ気がすまないよ。」

それを聞いてしばらく何かを考え込んでいたヨハネ君は、ポツリと言いました。
「ねぇ、思うんだけど。みんなの中で放送の原稿を書くときにアサヒちゃん
みたいな書き方をしたことのない人から殴ったらいいんじゃないのかなぁ。」
アサヒちゃんを取り囲んだ放送部員たちの声がだんだん小さくなっていきました。
そしてその場から一人、また一人と立ち去っていき、やがてそこにいるのは
アサヒちゃんとヨハネ君だけになってしまいました。

おびえて座り込んでいたアサヒちゃんにヨハネ君はやさしく声をかけます。
「もう大丈夫だよ。これからは、いいかげんな記事を書かないでね。」
アサヒちゃんは大きくうなずくと小走りに走り去っていきました。
「これでケンカもおさまったし。アサヒちゃんもこれからはあんまりアレな記事を
書かなくなるだろうし、よかったよかった。」

次の日、登校したヨハネ君の目に飛び込んできたのは、壁に貼られた学級新聞の大見出し
「発言をひるがえす放送部員」「取材方法は適正」「今必要なのは学校当局との距離では」
ヨハネ君は思わず_| ̄|○して「だみだこりゃ。」とつぶやきましたとさ。

この作品の評価を投票この作品の評価   結果   その他の結果 Petit Poll SE ダウンロード
  コメント: