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第38話 U-33 ◆pbbgGk2I 投稿日: 2005/11/14(月) 01:24
『予定原稿』

「あたしが、一番、記事を、うまく書けるんだ…!なのに、こんなことさせられて…」
 アサヒちゃんはご機嫌斜めです。
「あたしは、地球町の正義と平和のための記事を書こうとしてたのに…。なんでこんな
つまらないことを書かなきゃいけないの」
 アサヒちゃんの怒りの原因は、フラメンコ先生の一言でした。

 放課後、帰り支度をしているアサヒちゃんを呼び止めて、先生が頼みました。
「今度の土曜日は地球幼稚園の運動会ね。先生たちはみんながんばって行事を盛り上げ
ようと一生けんめいなのよ。だからアサヒちゃん、記事にしてあげてね」
「え、ええ。よろこんで」
 言葉とはうらはらに、アサヒちゃんの顔はみるみるふくれっ面になっていきました。

「運動会なんて、毎年やることは同じじゃない。園長先生の挨拶だって、いつもいつも
『この青空の下、力いっぱいがんばりましょう』って、あたしたちが幼稚園のときから
のワンパターンだし、去年の記事だっておととしの記事だって書いてあることはみんな
変わらないのに…。ああ、あたしの文才はこんなことに浪費されてしまうのかしら」
 その時です。アサヒちゃんの頭の中で、ふと何事かがひらめきました。
「そうか、毎年同じか…。それなら…」

 月曜日の朝、登校したアサヒちゃんの目に入ったのは、校門の前で仁王立ちになって
いるフラメンコ先生でした。その手にはアサヒちゃんの新聞が握られていました。
「アサヒちゃん、これはなあに」
 先生が指差したのは、「運動会、園児たちが汗流す」という記事でした。
「なあにって、こないだの運動会の記事ですけど…って、あっ!」
 アサヒちゃんは真っ青になりました。
「しまったぁぁぁ!めんどくさいから会場に行かずに去年の記事を丸写しにして書いた
けど、そういえば土曜日は土砂降りの雨…。(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
 アサヒちゃんは、職員室に連れて行かれて小一時間お説教されました。
 いまでも、学校においてあるアサヒちゃんの新聞のバックナンバーには、その記事の
ところだけが真っ白な空白になっているということです。

(ソース)
埼玉新聞が誤報で編集局長更迭
http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-051103-0014.html

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