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第1126話 バランス オブ パワー  その1 投稿日: 02/07/22 10:32 ID:T5VpcIEv
ある日突然、アメリー家の人達が地球町からいなくなってしまいました。
理由はわかりません。原因もわかりません。もしかして夜逃げでもしたのかな?
あるいは、漂流教室状態にでもなってしまったのかな?
ともかく、アメリー家の人達が突然いなくなってしまったことは、ニホンちゃんに危機が訪れることになりました。

「この東亜地区の面倒をよく見ててくれたアメリー家の人達がいなくなってしまった以上、この地区は僕達チュウゴ家が
 リーダーシップを取って頑張っていくしかないアル。そこでニホンちゃんには僕を支えて欲しいアル。是非お嫁さんになって欲しいアル。」
「そうニダ! ニホンちゃんは過去を清算する意味でもそうするのが当たり前ニダ!
 ついでに無期限ビザも寄こすニダ! うちのカード破産者も助けるニダ!」
チュウゴ君とカンコ君は、アメリー家の人達がいなくなった次の日に、ニホン家に押しかけて来ました。
とんでもない反応の早さです。シナリオは既に出来上がっていたのかもしれないと、ニホンちゃんは密かに心の中で思います。

「え・・・っ、でもっ、そのっ、アメリー君の人達がいなくなったからって、いきなりそんなこと言われても・・・ッ。」
ニホンちゃんはいつもの通り、遠回しに優しく拒否をしました。
しかしチュウゴ君もこの機を逃しません。一気にまくし立てて来ます。
「いいから僕の女になるアル! イッコクニセイドで優しくしてやるアル! そして、ひたすら働いて、夫を助ける良い妻になるアル!」
「ついでにこの義理の弟にも奉仕するニダ! もっと島パンツをよこすニダ!」
「いやあぁーんッ!!」
ジリジリと無表情な顔で迫ってくるチュウゴ君と、ハァハァと興奮しながら迫ってくるカンコ君に、真っ赤な顔をして思わず叫び声をあげるニホンちゃんです。
「・・・ク、ククク・・・・・・、クハッ、クハハハハハ・・・・・・・ッ。」
すると突然、誰かを嘲笑するような声があたりに響きます。
「だッ、誰アルかッ!?」
チュウゴ君があたりに向かって叫ぶと、ヌゥ・・・と、ニホン家の玄関から影が浮き上がるように人が現れました。・・・・・・ウヨ君です。

ウヨ君は自らの幼い体躯に似合わず、陰惨な影のような雰囲気を醸し出し、
不気味に口元の片方だけを吊り上げ、クククと冷笑を浮かべて立っています。
「ウ・・・、ウヨ君・・・?」
ニホンちゃんは声をかけますが、いつもと違うウヨ君のダークネスな雰囲気に、三人ともたじろぎます。
「ククク・・・、僕はこういう日が来るのを待ちわびていたんだよ、姉さん・・・。」
ウヨ君は濁った目で三人を見ながら、突然そんなことを言い出します。
「我がニホン家にとって、アメリー家はパートナーでもあったけど、足かせでもあった。しかし・・・、アメリー家がいなくなったということは、
 ニホン家がフリーハンドを得たって事にも成るじゃないか・・・。ククク・・・・・・。」

「な・・・、何アルか? チュウゴ家に逆らうつもりなんアルかッ!? ユージホーセーのないニホン家が、我がチュウゴ家にかなうと思うアルかッ!」
ウヨ君は「スン」と鼻で笑います。
「ユージホーセー? なんだそれは? 紙切れに書いてあるあんな文章を、本気でニホン家が欲しがっていたとでも思うのか?」
「な・・・ッ、なにぃッ?」
「『上に天なく、下に地なく、前に敵なく、後ろに主なし』。チュウゴ、これはおまえの国の言葉だ。
 国に危機が迫っている時に、いちいち法律書を読みながら軍を進めるものがあろうか? 
 まして侵略者が目の前にいて、それが自分の管轄内であるのなら、どうして法に従ったりするだろうか?」
「そ、それこそ軍国主義アル! 下克上アル! 関東軍アル! 石原莞爾アル!」
「やかましい! 今現在も侵略が家訓のオマエに言われる筋合いはない!」
「うちには花火も沢山あるアルヨ! 花火を持ってないニホン家が我が家に逆らえると思ってるアルかッ!!」 

そう揺さぶりをかけてくるチュウゴ君に、ウヨ君は全く動じず、目を閉じて、冷ややかに笑みを浮かべます。
「ククク・・・、ホントに? 本当にニホン家が花火を持っていないとチュウゴ家は思っているのか?」
「何ッ!? ま・・・ッ、まさかオマエ・・・ッ。」
「極秘中の極秘! 我がニホン家は花火を、リュー君のところに隠してあるのさ! しかもアメリー家製の爆裂水系花火弾をな!」
ウヨ君の言い放ったその言葉に、その場のみんなは凍りつきました。

「そッ、それは超犯罪アル! 裏切り行為アル! 国際法違反アルッ!!」
「だから極秘中の極秘なのさ! ニホン家は闇でアメリー家と密約を交わして、
 誰にも知られず! 栄々と! ひたすら隠し続けてユージに備えていたのだからな!」
ウヨ君の爆弾発言に、チュウゴ君は目に見えて青ざめた顔を浮かべました。

「言っとくがチュウゴ、どうしても姉さんを無理やり嫁にしようってンなら・・・・・・・・・・、俺は微塵の躊躇もなく、水系花火を使う。」
チュウゴ君はピシッと固まります。
「お・・・ッ、おまえッ! 水系花火を本気で使う気アルか!? 地球町が大火事になってもいいアルかッ!? 地球町が消えてしまうアルヨッ!!」
「フン・・・、ニホン家が消滅した後に、地球町がどうなろうと知ったこっちゃない。・・・・・・・・ 一緒に逝くか?」

恐ろしいことを平然と言ってのけるウヨ君です。あるいは破滅の狂気に酔っているのもしれません。
ニホン家の人間は今でこそ穏和ですが、危機が迫ると、敵に向かって集団自決をも辞さないという、恐ろしい一面を隠し持っています。
現在においても、人生に一度挫折したぐらいで即自殺・即心中という道を選んでしまうあたりが、そういう一面の名残りであるのかもしれません。
「く・・・ッ、撤退するアル。ここは痛み分けにしておいてやるアル・・・ッ。」

さすがはどこかの感情バカとは違って、冷徹に利害のみを計算し尽くして行動するチュウゴ君。
ニホン家の花火持ってるよ発言に対して、今ヘタに動くわけにはいきません。
こういう時の彼の判断力と決断力は、素晴らしくもあり、恐ろしくもあります。
でもチュウゴ君のその言葉に、チュウゴ君とウヨ君の激しい論戦にただ呆然としていたカンコ君は、ハッと我に返りました。

「え・・・ええッ!? ちょっと待つニダ! チュウゴ君が手を引いたら、
 ウリが一人でニホン家の矢面に立つハメになるニダ! 困るニダ! 
 ちゃんと最後まで面倒を見て欲しいニダ! ちょ、ちょっと・・・ッ!!」

去ろうとするチュウゴ君を慌ててカンコ君は引き止めようとしますが、チュウゴ君はあっという間にジュウケイの山奥にまで帰ってしまいました。
そして残ったのは、逃げるに逃げられないお隣りさんの、カンコ君です。

カンコ君はいつもチュウゴ君に散々利用された挙句、見捨てられています。しかも半万年間ずっと。
そんなカンコ君がさすがに可哀想に思えてくるニホンちゃんです。
「さーてと・・・。散々ニホン家を食い荒らしやがったこの寄生虫はどうしようかな・・・。」
ウヨ君は濁った沼のような目で、カンコ君を見下ろしつつ、ユラユラとカンコ君に近づきます。
「ひぃぃッ!! 許してやるから止めるニダ〜!」
腰が抜けてその場に尻餅をついているカンコ君に対して、ウヨ君はキキキと静かに笑いながら、背中に隠していた日本刀から刀を抜こうとします。すると。
カチャン。
少し白刃が見えたところで、刀を抜こうとするウヨ君の手首を、ニホンちゃんが後ろからそっと掴んで止めました。
「ダメよ。ウヨ君・・・・・・。」
「ね・・・・・・、姉さん・・・・・・。」

ニホンちゃんはウヨ君に諭すように優しく言います。
「チュウゴ家でもカンコ家でも、お花さんや虫さん達が一所懸命、生活しているの。幸せなれるように精一杯、家族を守って生きてるの。
 なのにさっきみたいに、『地球町がどうなっても構わない』なんて、酷いことを言ってはダメ。みんなただ、幸せに平和に生きていたいだけなんだよ?
 いざとなれば花火で全部燃やしてしまおうだなんて、絶対ダメ。・・・・・・ダメなんだよ、ウヨ君・・・・・・。」

地球町内で唯一、アメリー家が花火の威力を試すためだけに、花火の熱い炎で大火傷を負ったニホンちゃん家にしか分からない気持ちです。
ニホンちゃん家がその気持ちを地球町のみんなに訴えなければ、一体どこの家が訴えてくれるというのでしょうか。

「・・・・・・・・・。 うん・・・・・・、わかったよ姉さん・・・・。」
ニホンちゃんにこうまで言われてしまっては、先程のチュウゴ君に対する発言はさすがに失言だったと、ウヨ君は後悔せざるを得ません。
実はチュウゴ君にハッタリをかましていただけのウヨ君なのですが、それは口に出さないで、ニホンちゃんの言葉を素直に受け入れるウヨ君です。
・・・・・・・・水系花火の有無に関しては、どうもハッタリではなかったらしいけど。
「おお〜ッ! ありがとうニダ! 助かったニダ! ニホンちゃんはやっぱり我が家の事大対象に成り得る家ニダ〜! アンニョンハシムニカ〜!!」
やはりカンコ君は節操の欠片もない、属国根性の人のようですが、とりあえず助けてもらって、ニホンちゃんに心から感謝はしているようです。
ニホンちゃんは言いました。
「じゃあ許してあげる。これからは国交を完全に断絶して、お互いに違う歴史を歩みましょうね。
 借金は返さなくてもいいから、もうお金をタカリに来ないでね。あと、文化と技術をパクるのももう止めてね。
 今度またパクッたり、ニホン文化の起源がウラナラマンセーとか言ったら、マジ殺すからね♪」

ニホンちゃんは今まで貯めこんできた憎悪を深く心に沈めたまま、カンコ君に飛びきりの笑顔を見せて、決別の言葉を言い放ちました。
花火も大嫌いだけど、人として言わなきゃいけない事をカンコ君にもちゃんと言えたニホンちゃんは立派です。

「・・・・・・・・・。ア・・・・・、アァァウィゴォォォォォーッ!!!」
カンコ君はなぜか嘆きの叫びをあげています。・・・・・・あれれ? 変ですね?
カンコ君はニホンちゃんが大嫌いなんだから、国交断絶は嬉しいことなんじゃないのかな。
変なカンコ君♪

カンコ君の人達はみんな自分のことを優秀で最高だって言ってるんだから、
ニホンちゃん達なんかと関わらなくたって、半万年でも一万年でも立派に生きていけるよ、きっと♪
頑張ってね♪

今日の晩ご飯のサンマが、妙においしい、ニホンちゃんとウヨ君でした。




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