戻る <<戻る | 進む>>
第1359話 雉虎 ◆/xKIJIcyP2 投稿日: 03/01/01 00:49 ID:u5A/OdVm
ニホンちゃんのお祭り

すでに雪も降りこの地球町にも冬が訪れ
そしてまた新しい年が目前に迫った頃のお話です。

ニホンちゃんのお得意の分野で「マンガ」があります。
ニホンちゃんは毎年の夏と冬に日頃、書き溜めたマンガを
一斉に公開していました。

今年もその冬の公開日・・・
ニホンちゃんはその日を「混み家」と呼んで楽しみしていました。

「ねぇねぇ、今年もウチで混み家やるの。来てくれる?」
終業式も終わり成績表の事でフラメンコ先生から往復ビンタを
食らったカンコ君以外は明日から冬休みを楽しみに控えた子供たちの熱気で
溢れかえった教室でニホンちゃんはクラスメートに問い掛けました。
真っ先に反応したのがニホンちゃんのマンガマニアと呼んでも過言では
無いフランソワーズちゃんでした。
「また冬混みのシーズンですわね・・・喜んでお邪魔させていただきますわ!」
フランソワーズちゃんの目にメラメラと炎ようなものが浮かんでいます。
「え、ええ、来てね。新作もいっぱい用意したから・・・」
そのフランソワーズちゃんの勢いにニホンちゃんも少したじろぎます。
「わたくし、この日のために新作のコスチュームを作りましたの!」
握り拳を顔の前に突き上げ気合いを表すフランソワーズちゃんに後ろの方から
ぼそりと声がしました。
「あら?貴女は毎日がコスプレかと思っておりましたが違うのですね。ほほほ」
フランソワーズちゃんにエリザベスちゃんがちょっと悪意がこもった冗談を
言いました。
フランソワーズちゃんの口元がちょっとヒクッと動きましたが
「あら、芸術もご理解出来ない方は毎日、ジャガイモと黒パンでも食されて
居た方が宜しいかと思いましてよ。ほほほ」
食生活の乏しさを貶された額に青筋を浮かべエリザベスちゃんは
席から立ち上がりました。
「どーいう事かしら?」
「いいえ、別に〜」
額に青筋を浮かべたエリザベスちゃんと口元を引き攣らせているフランソワーズちゃん
の間に挟まれたニホンちゃんはアワアワとするしかありませんでした。
「「絶対にお伺いさせていただきますわ!!」」
エリザベスちゃんとフランソワーズちゃんは怒りのハモリングをニホンちゃんに
ぶつけるとそれぞれ別方向へと去って行ってしまいました。
ニホンちゃんは、ほぅと溜息をつくしかありませんでした。
しかし・・・
その様子を1人にだりと眺める人物が居た事をニホンちゃんは気が付く事をできませんでした。

そして当日、日ノ本家の有明の間は大盛況です。
フランソワーズちゃんはニホンちゃんのマンガに出てくるキャラクターの際どいコスチューム
を身に纏い周囲にどよめきを与えていたのは言うまでもありません。
エリザベスちゃんは「はしたない」と口では言うもののちょっと羨ましいそうな表情をしたので
ニホンちゃんはクスリと笑ってしまいました。
有明の間に入りきれない位に人が集まった頃を見計らいニホンちゃんが宣言しました。
「それでは冬混みの開催を宣言しま・・・」
「待つニダ!」
ニホンちゃんが立っていた後ろの窓が突然開き何者かが闖入してきました。
その闖入者はニホンちゃんの横に並ぶと言います。
「ウリも参加するニダ!」
闖入者はなんと段ボールを抱えたカンコ君でした。
「「「「「「「「えー!」」」」」」」」」」
一同はどよめきます。
タイワンちゃんが立ち上がりカンコ君に向かって言います。
「何を言うの!バカンコ!アンタのマンガはニホンちゃんの真似ばかりじゃないの!」
一同はそーだそーだの大合唱です。
でもカンコ君はニダリと笑うと言います。
「そう言うと思ったニダ。だからウリはニホンとは違うもので勝負するニダ」
カンコ君の顔は自信に溢れています。
「ウリナラはニホンよりIT先進国ニダ。ウリはそれで勝負するニダ」
別物で参加すると言われてしまえばタイワンちゃんもそれ以上は言えず
大人しく座るしかありませんでした。
開催の宣言を邪魔されムッとしたニホンちゃんがカンコ君に尋ねます。
「何を展示しようとするの?ヘンなものなら許さないわよ。」
カンコ君、また余裕の表情で答えます。
「ニホンは、怒った振りをしてもダメニダ。ウリは解ってしまったハセヨ」
その表情にゾっとしたものをニホンちゃんは感じましたが臆さずに聞きます。
「ニホンのパソコンに『2ちゃんねる』というサイトがあるニダ。そこでは
いろいろなチョパーリが話し合ってるハセヨ。その中に『ハングル板』ってのが
あってウリたちの事を称え合ってると昔、ニッテイに拉致されてそのまま日ノ本家に
住んでるザイとニーから聞いたニダ。」
ニホンちゃんは青くなりました。
「カ、カンコ君それはちょっとちが・・・」
カンコ君はニホンちゃんの話を過りそのまま続けます。
「その中にも『ニホンちゃん』ってスレが有るハセヨ。そこでは色々な作家や絵師が
色々とウリを格好良くした小説を書いている聞いたニダ。ウリはチョパーリの事を
少し見直したニダ。だから今回はウリの事を格好良く書いてくれる絵師の絵を集めて
カレンダーを作ったニダ。それで勝負するニダ。」
ニホンちゃんはカンコ君が大誤解している事に気が付きましたが
今更、誤解を解く気力も時間も無いのでそのまま放置することにしました。
「もういいわ・・・好きにして・・・カンコ君・・・」
参加を許可されたカンコ君は大喜びです。
「ウリナラマンセー!チェゴ!チェゴ!アンニョ〜ン!」
紆余小曲折はありましたが何はともあれ混み家は開催されました。
当初の予定通りに人気はニホンちゃんのマンガに集中しています。
カンコ君のブースはマターリとした雰囲気しか流れていません。
それに引き換え、ニホンちゃんのブースは大盛況で
「ニホンちゃん最後尾はここです」
と書かれた札まで出ました。
まるでニホンちゃんは二人いるかのような勢いでお客さんに本を手渡しています。
元々、落ち着きの無いカンコ君は次第にイラつきはじめました。
そこへ別段、マンガには興味は無いが雰囲気が好きだのイメージでやってきた
ゲルマッハ君とアーリアちゃんが通り過ぎようとしました。
「待つニダ!ちょっとウリのカレンダーも見るニダ!」
カンコ君はゲルマッハ兄弟に声を掛けました。
「なんだ?カンコ」
カンコ君はすかさず説明を始めました。
「これはニホンの所のサイトにある2ちゃんねるという掲示版の中にあるハングル
と言う所の中にあるニホンちゃんというスレッドのキャラクター商品ニダ。」
カンコ君が説明している間、ゲルマッハ君とアーリアちゃんはカレンダーを手にとり一枚一枚
眺めていきます。
そして最後の一枚を眺め終わるとゲルマッハは言いました。
「ふむ、2ちゃんねるは知っているがハングルはよく知らんな・・・ただ隔離版とだけは
聞いた事があるが」
「そうなのか?兄上」
アーリアちゃんがゲルマッハ君に尋ねます。
「うむ、詳しい事は知らない・・・ただそう聞いたことがあるだけだ・・・どうした?アーリア」
ゲルマッハ君はカレンダーを見続けるアーリアちゃんに気が付きました。
「この絵、かわいい・・・」
カレンダーを見続ける妹の頭にぽんと手を乗せ言いました。
「欲しいか・・・アーリア」
「ちょっとだけ・・・」
兄に心境を見透かされたのが恥かしいのかアーリアちゃんが俯き答えました。
ゲルマッハ君はポケットから財布を取り出すとカンコ君に言います。
「一つ貰おう。カンコ君。いくらだ?」
カンコ君は大はしゃぎで言いました。
「1万ヲンニダ」
ゲルマッハ君の動きがぴたりと止まります。
「1万・・・・だと?」
カンコ君は大はしゃぎをやめ、少し考え
「あぁ、ここはニホンの家だから、えーっと・・・1千エンニダ」
ゲルマッハ君は財布から替え立て千円札を取り出します。
「本当はマルクかドルがいいんだが・・・だめか?」
「それはウリが困るニダ」
「わかった・・・ではこれで」
ゲルマッハ君は千円札をカンコ君に手渡しました。
アーリアちゃんはカレンダーをそっと胸に抱きゲルマッハ君に言います。
「兄上、いいのか?」
ゲルマッハ君はやわらかい笑顔で答えました。
「うむ、アーリアの笑顔が見れればそれで良いのだ」
アーリアちゃんはカレンダーを強く抱きしめると俯きながら
「兄上・・・・・・・・Danke schon・・・・・」
照れながらか細く言う妹の頭を撫ぜながらゲルマッハ君は言います。
「・・・・・・・Nichts zu danken・・・・・・」
そんな仲の良い兄弟の後ろではカンコ君が
「ウ・リ・ナ・ラ・マンセー!!!」
と大騒ぎしています。相変わらず空気が読めてません。
ゲルマッハ君はくるりと振り向くと言います。
「カンコ君、一つ忠告しておこう・・・千円の値段は書いておいたほうがいいぞ」
レッドデビルのように喜びを狂いで表現していたカンコ君もゲルマッハ君の忠告を
聞いて気が付いたようです。
「アイゴー!値段を書くのを忘れていたニダ!だから客が来ないニダ!」
やがて時は経ち、ニホンちゃんがブースから声をあげました。
「すみません〜これで今日の混み家は終了です〜。皆さん、お疲れ様でした〜」
ニホンちゃんの宣言と共に拍手が起こりました。
「ちょっと待つニダ〜!なんで混み家を終了するニダ!ウリのはまだ完売して無いニダ!
それともウリに対する嫌がらせニダか!それならニホンに謝罪と賠償を要求するニダ!」
カンコ君、火病点火寸前です。
ニホンちゃんはこの行動にはちょっと驚きましたが諭すようにカンコ君に言いました。
「あのね・・・カンコ君・・・あたしも完売してないよ。」
ニホンちゃんの後ろにはまだ本が残っていました。
「何故、完売するまでやらないニダ。それともウリに負けるのがそんなに嫌ニダか?」
カンコ君、顔がキムーティ色に染まっています。
「違うの。勝つとか負けるとじゃないの・・・この残りの本はね・・・今日、会場に
来ていただけなかった方や遠くの方で来たくても来れなかった方にお分けする分なの・・・」
カンコ君は雷に打たれたような気分になりました。
「そうだったニダか・・・ウリはウリは・・・つい全部無くす事しか考えていなかったニダ・・・」
「解ってくれた?カンコ君」
カンコ君は荷物をまとめ始めました。
「そうニダ!もっともっと沢山の人にウリナラの良さを広めなければいけないニダ!
危うくニホンの陰謀に引っ掛かってしまうトコだったニダ!」
「だから違うって・・・・そもそも陰謀なんかじゃないって・・・」
ニホンちゃんは額の汗を拭き拭き、答えました。
そしてカンコ君が荷物を纏め終え帰ろうとした時、ニホンちゃんはどうしても
聞きたい質問をカンコ君にしてみました。
「ねえ、カンコ君・・・2ちゃんねるのニホンちゃんってちゃんと読んだの?」
カンコ君は段ボールを小脇に抱えながら靴を履きつつ答えます。
「まだニダ。昨夜その話を聞いて慌てて作ったからよく読んで無いニダ。これから
帰ってよくウリの活躍を読むことにするハセヨ。」
ニホンちゃんは頬をヒクつかせながら言います。
「読まない方が良いと思うけど・・・・な・・・」
そういった時にはすでにカンコ君の姿はありませんでした。

その夜・・・・
お隣りの家から大きな叫び声が挙がりました。

「あ〜〜〜〜〜〜〜い〜〜〜〜〜〜ご〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

ニホンちゃんは自分の部屋の窓からその方向を見つつ言います。
「やっぱりね・・・」

おしまい

この作品の評価を投票この作品の評価   結果   その他の結果 Petit Poll SE ダウンロード
  コメント: