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第1372話 ナナッシィ 投稿日: 03/01/11 17:02 ID:SQvKT7Jo
『サクラとムクゲ』

今日は冬にしては暖かく、爽やかな陽気です。
お日様も明るく地面を照らし、そこに三人の影をくっきりと映しています。
ニホンちゃん、ウヨ君、タイワンちゃんは仲良く下校途中でした。

「でね〜、ようやく私の家に町内一高い建物ができるはずだったのに
 あのバカンコのせいでとんだケチつけられちゃった気分だよ〜」
「せっかく姉さんと頑張ってたのに、地震とかあって完成が遅れてましたから
 余計腹も立ちますよね。しかもよりによってあのカンコですか」
「問題はそこなのよ。あいつが一人で作りきれるとは思えないんだけど・・・
 もしやろうとすれば事故が起こるの目に見えているし・・・ねぇニホンちゃん?」
タイワンちゃんがニホンちゃんに話を振りました。
しかし、気がつけばそこにニホンちゃんの姿はありません。
二人が振り返ると、いつの間にかニホンちゃんは一本の木の前で立ち止まっていました。
どうやら、木を眺めているようです。
「姉さんどうしたの?」
「あ・・・うん、桜はまだ咲かないかな・・・って」
駆け寄ってきたウヨ君を一瞥して返事をすると、
ニホンちゃんは再び桜の木に視線を戻しました。
タイワンちゃんも歩み寄ってきます。
「もう姉さん、まだ冬なんだからちょっと気が早すぎるよ」
「でも、桜って奇麗だよね・・・待ち遠しい気持ちは分かるなぁ・・・
 桜が咲くと、春!って感じするしね。確かニホンちゃん家の花だったっけ?」
「うん、特別家で決まってるわけじゃないけど、
 私の家族はみんな大好きだし、一番人気のある花だよ」
「今年もニホンちゃん家でお花見したいなぁ・・・」
「そうだね・・・」「そうですね・・・」
暫し、三人が華やかな桜満開の景色に思いを馳せていると・・・
「でも、桜は咲いてからすぐ散ってしまうニダ。しおしおニダ」
空気を読まない事と雰囲気をぶち壊す事にかけては町内一、
強引愚マイウリ(意味不明)カンコ君、ニダニダと登場です。
一方、ちょっと早い春気分を味わっていた三人は少々ご機嫌ナナメ。
「まったく、貴様はいつでも何処でも涌いて出てくるな」
「人をダニやゴキブリ扱いするなニダ!」
「・・・似たようなもんじゃない(ボソッ)」
「ニ、ニダァァァァァァァ!」
あからさまに不快感を口にするウヨ君とタイワンちゃん、
早くもカンコ君と一触即発モードです。
その危険な空気を感知したニホンちゃんがとっさに話題を変えました。
「と、ところでカンコ君家のお花は何?」
「ウリナラコッ(わが国の花)ニダカ?ムグンファニダヨ」
「それってムクゲのこと?。確か『無窮花』って書くんだよね」
「ニダニダ、ニホンにしてはよく勉強しているニダ。
 ウリナラではムグンファは『永遠に咲き、また咲いて、散らない花'』と言われ、
 1株で2〜3千余輪の花が咲き、株分けしてもしっかり根付くニダヨ」
「ほえ〜」
「夏から秋にかけての盛りの時季には、一つ花が落ちても新しい花が次々と咲き、
 桜とは違って約100日間も咲き誇る実ぅに生命力の強い花ニダ!ムグンファチェゴ!」
「すご〜い」
ムクゲの生命力とカンコ君の偏った知識に素直に感動しているニホンちゃん。
一方、ウヨ君とタイワンちゃんはなにやら笑いをこらえている模様です。
「・・・オイ、そこ何を笑っているニダ?」
「い、いやスマンスマン。お前に相応しすぎる花だと思って・・・」
「ニ、ニダ?」
「今までいろんな連中から散々虐げられてきて、それでも生き長らえてきた、
 ある意味尊敬に値するその往生際の悪さ・・・いやしぶとさは、その花そっくりだよ」
「ア・・・」
「どんなにやり込められても失敗しても、しつこく同じ事繰り返す点も似てない?」
「それに町内の何処行っても、同胞で集まってウリナラ精神を突き通してる事もな」
「ア、ア・・・」
「もしかしたら、地上に最後まで生き残る人類はカンコ一族かも・・・」
「ハッハッハ、そりゃいいですね。よかったな、カンコ人類の起源はウリナラで、その最後もウリナラだってさ」
「アイゴォォォォ〜〜〜!」
せっかくの知識を披露したのに、お約束通りカンコ君は泣きながら逃げていきました。
「ま、ムクゲそのものには罪は無いし、よく見れば奇麗な花だけどね」
邪魔者の駆逐に成功したタイワンちゃん、すっきりした顔でムクゲにフォローを入れました。
ウヨ君も清清しい表情でさりげなくガッツポーズです。
しかし、二人がふと見るとニホンちゃんは桜の木に背を張り付かせて、目をうるうるさせていました。
「・・・そ、それじゃ私はパ〜ッと咲いてササ〜ッと散るわけですかぁ?あうあう〜」
「い、いや姉さん、我が家で桜が好かれるのはむしろ、その儚さの中に見出される・・・」
「ええ〜ん、やっぱり儚いんだ〜〜」
必死に入れようとしたウヨ君のフォローはむしろ逆効果、
ニホンちゃんは先程のカンコ君同様に泣きながら逃げていっちゃいました。
「あ、ニホンちゃん待って!こら、ウヨ君の馬鹿!」
「ご、ごめんよ〜話聞いてよ〜ねえさ〜ん」
「エエ〜〜〜〜〜〜ン」
二人はものすごい勢いで遠ざかっていくニホンちゃんの背中を急いで追いかけていきました。

春めく日々はまだ遠く、身を切るような寒さが続きます。
しかし、冷たい空気に晒されながらも
その内に力強い息吹を秘めた桜の芽が、静かにその時を待っていました。
そんな、少し長めの冬の日のお話です。

おしまい。

解説 ナナッシィ 投稿日: 03/01/11 17:12 ID:SQvKT7Jo
(解説)
「前にもいたニダ!」というアイゴー!な厳しい指摘を受けて
姑息な改名を遂げたナナッシー改めナナッシィです。(多分これならいない・・・はず)
それと一応調べたのですが、ムクゲは既出じゃないとは思うのですが・・・
もし既出だったら、ご指摘を。参考までに↓
http://welcome.korea.com/japanese/generalinfo/general_about03.asp
http://www.konest.com/basicfile/profile.htm
http://www.eisai.co.jp/museum/herb/familiar/flower.html

あと、一つ目ageちゃいました(汗 謝罪します〜ゴメンナサ〜イ。

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