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第1723話
無銘仁 ◆uXEheIeILY
投稿日: 03/12/05 22:08 ID:CiCn14h/
「果てしなき闘争 第二章」
先日は喧嘩別れしてしまいましたけれど、どうにも気になるものですから、
あの池に様子を見にゆきましたの。氷の道にも入りましたわ。
そうしましたら、わたくしとんでもない発見をいたしました。あの島には化石が
眠っていましたのよ。そう、あの古代の植物からできる化石ですわ。
アメリーが「自由研究に役立つ」と言ったときは半信半疑でしたけれど、
お母様にこの話をしたら、ぜひ調べて来なさいとおっしゃいました。
そこでわたくし、馬と食べ物と防寒着を用意したんですの。
お父様――ブリテン卿の権勢をもってすれば造作もないことでしてよ。
自慢するわけではございませんけれど、時計台の立地を決めるときも、
この権勢が役に立ちましたわ。ユーロ地区中の男どもをわたくしの富と美貌の
前にひざまずかせましたの。そうそう、あの時フランソワーズは、自分のところに
建てたいなんてわがままを通そうとしましたっけ。
あの子、今になってもそのことを持ち出してはねちねちと不平を並べますのよ。
ま、今度の競争もわたくしが勝つのは当然ですけれどね。
「おはよう。ずいぶん手回しがいいね」
誰かと思えばノルウェーがわたくしに声をかけてきましたの。
そのまま少しばかり話していましたら、今度はアメリーが駆けつけてきましたわ。
「またなんてえ周到さだ。あてつけのつもりかよ」
フフ、アメリー、この間のことは水に流してさしあげてもよろしくてよ。
その代わりお父様に借りたこの馬で、ブリテン卿の威信にかけても絶対に
わたくしが一番乗りの栄誉をいただきますわ。
自信に満ちてそう宣言しましたのに、誰もこちらを見ていませんでした。
先日は霧で見えなかった島が、数十メートルの雪山であるのがはっきりと見て
とれたからですの。そのうえ山へと続く氷の道は山あり谷あり、さしずめ
寒冷地獄といったおもむきでしたから。
それを見てベルギーがぽつりと言いました。
「凄い――僕も準備して来よう。そうだ、パトラうわなんだおまえやめrがbjあn」
みな準備不足を感じたらしく急いで走ってゆきましたわ。
さあ、七つの池を制覇したブリティッシュ魂を見せつけてさしあげようかしら。
ノルウェーの登場は少しばかり想定外でしたわね。わたくしひとりで先に進める
とばかり思っておりましたもの。
さて、とにかくテントを張らなければお話になりませんことよ。わたくしは前回の
経験から勘で張りましたけれど、かれはわたくしより奥に張りましたわ。
図書館で古地図を見て、安全そうな位置を調べたんですってよ。
どちらが正解ですかしらね。
必要な荷を馬に積みなおしてテントを離れたのはよかったのですけれど、
出発した途端に吹雪に見舞われてしまいましたの。全く不運でしたわね。
そのまま進んでおりましたら、今度は馬が足を折ってしまいました。
たしか、深い谷の近くで滑ったせいでしたかしら。
落ちなかっただけでも幸いでしたわ。
吹雪も激しくなるし散々な行程でしたけれど、諦めるなんてわたくしのプライドが
許さなくってよ。ええ、ひとりで荷物を引きずってでも進みましたわよ。
今頃ノルウェーがどの辺りまで進んでいるか考えると気が気では
ありませんでしたわ。
何時間経ちましたかしら。いつしか吹雪がわたくしの視界を奪い、左右はおろか
上下さえ分からなくなってしまいましたの。
風が顔を切り裂き、雪がひざまで積もってきていました。
こんなことなら馬でなく犬を連れてこればよかったのですわ。
そう考えかけましたけれど、人間に忠実で寒さに弱い犬を過酷な労役に供する
なんて、心優しいわたくしには気が引けますのよ。
荷を引く両手が火照り、無感覚が痛みに変わり始めたころ、霞む視界のかなたに
かすかに山頂が見えてきました。あのときの喜びといったら、とても言葉では
表せませんわね。初登頂の栄誉があれば吹雪のひとつやふたつ、どうってこと
ないんじゃありませんこと。
凍てつく指で方位磁針と地図を取り出し、間違いないことを確認すると、最後の
一歩を踏み出しましたわ。(つづく)
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