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第2046話 シェロ 投稿日: 04/11/12 03:34:12 ID:A4zuSoHq
「拝啓 ジョンレノン」

気がつくと、私は巨大な門の前に立っていた。
さっきまで病院のベッドで眠っていたはずなのに。
周りを見渡すと、大きな川が流れ、花が咲き誇っている。
そうか、ここは・・・・・・・
「やぁ、おじいさん」
声を掛けられ、見るとそこには、長髪に眼鏡の、どう見てもアラブの同胞には見えない男がいた。
「む、誰だお主は?」
「あれ、ボクのことを知らないのかい?参ったな、世界ではかなり有名な方だと思ってたのに」
「お主アラブの者ではないだろう?なぜここにいる?ここはアラブの者が終末の日まで留まる場所のはずだ」
私は男に問うと、彼は答えた。
「何故って、ボクはイエス様に連れてきてもらったのさ」
「別の預言者にか?マホメットを信じないくせにか?偉大なるアラーを信じない者がか?」
私はまくし立てる。すると彼は、微笑んでこう聞いてきた。
「ねぇ、おじいさん。あなた達は終末の日にどこに行くんだい?」
「む、神の国に決まっておろうが」
「じゃあさ、神の国ってどんなところさ」
「それはお前、争いもなく、飢えることもなく、皆が幸福に過ごせる場所だよ」
私が答えると、彼は優しく言った。
「・・・・・・そういう場所が、ボクらの神の国だったんだよ」
「・・・どういうことだ?」
「わからない?結局ボクらとあなた達が行きたがった約束の地は、同じところだったんだ。
争いもなく、飢えることもない、皆が幸福に過ごせる場所さ」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
「おいでよ、ここには国境も宗教もない」
彼は私の手を取ると、巨大な門を開いていった。

「よぅ、老けたなアラファト」
懐かしい声がする。そうか、お前もここに来ていたのか。
「随分と久しぶりだなラビン。まさか、ここで会うとはな」
「ああ。貴様ら異教徒どもが全て滅んだ場所が我々の楽園だったはずなんだがな。
考えてみれば貴様らの聖典の一つに我々の聖典もあるんだ。どこから異教徒かは神にも分からないようだ」
昔と違い、ピリピリした雰囲気なしにこの男と会話が出来る。不思議なものだ。
それはここが、約束の地であるからだろうか。
「だが心残りが一つある。お前の家と我々の家の争いを、結局私は収め切れなかった。
ラビン、お前とともに平和に尽力するはずだったのだがな」
「ふん、貴様は死ぬまで頑張ったよ。シャロンがやんちゃ過ぎるんだ」
ラビンはそう言い放つ。まさかこの男に慰められるとは思わなかった。

「皮肉なものだな。望むものも、死してたどり着く場所も同じはずなのに、
教えが違うだけで分かり合えないと言うことは」
私は一人呟いた。死んでから気付くなんて遅すぎる。もう娘や孫を導いてやれないのに。

私にできるのは もはや見守り 願うことだけ 愛する家族の幸福を。


解説 シェロ 投稿日: 04/11/12 03:39:00 ID:A4zuSoHq
久々に書いたらすっげー駄作・・・目次製作者氏はスゲー

元ネタ:アラファト死去
参考:ttp://www.kazokuso.net/shikai/index.html 各宗教の死生観
↑ユダヤ教は自民族以外は全て滅べとか言ってる辺り、辛かったんでしょうねぇ。

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