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第2150話 ウィンザー家の執事 投稿日: 05/02/08 21:58:40 ID:1dJK/R7t
 ロール・プレイング・ゲーム 1/3

 春の午後。放課後の5年地球組の教室で頂上会議のメンバーが何やら話し合いをしています。
「確認する。リズ、兄さん、アメリーが剣の攻撃。フランソワーズは退避、ニホン、マカロニーノは防御」
 悪の枢軸キッチョム君をボコる相談でしょうか?
「よろしくてよ。では、先攻決めのダイスを振りましょう」
「このターンの先攻は…… テイ!」 コロコロコロ
どうやら、アーリアちゃんをゲームマスターとしたRPGをしているようです。

「ドラゴンの先攻ね…右前足の攻撃! ニホンに18ポイント!」
「ん〜〜 ここで集中力ロールを使わせてもらうわね」 コロコロコロ
「えっへっへっ回避成功! ダメージゼロ!」
「ドラゴン左前足の攻撃! って本当なの? ニホンに4ポイント??」
「ヘッヘー 鎧でガッチリガード ダメージゼロ!」
「(…この子は守りに回ると本当に硬いわね……)では、気を取りなおしてドラゴンの尾の攻撃。
 えー、フランソワーズに21ポイント!」
「あーん 死んじゃったー」
「では、後攻の勇者達の攻撃ね」
 エリザベスちゃん、ゲルマンスキー君、アメリー君が順にダイスを振ります。
「…合計36ポイントのダメージを受けたドラゴンは崩れるように倒れ息絶えました。
 …兄さんのクリティカルが効いたわ。リーダーのリズ、今後の行動は?」
「このミッションのボスは倒しましたから、マカロニーノが宝物攫い、ニホンが怪我人の治療、
 アメリーとゲルマンスキーが死体を担いでダンジョン脱出で宜しいかしら」


 ロール・プレイング・ゲーム 2/3

 ガラッ!
「コラッ! 下校時刻を過ぎてるニダ! とっとと帰るニダ!! って何やっているニカ?」
 やってきたのは、週番のカンコ君とベトナちゃん。放課後の見回りです。
「RPG(ロール・プレイング・ゲーム)をやっていたんだ」アメリー君が答えます。
「あーる・ぴー・じー?」カンコ君、ベトナちゃん共、怪訝な顔をしています。
「面白いゲームだよ、そうだ、来週はオレとフランソワーズが週番だし、二人が代わりに入らないか?」
 頂上会議のトップ、アメリー君に誘われたカンコ君、歓喜のあまり飛び上がって叫びます。
「ハイッ! ハイッ! 参加するニダ!! 何があっても意地でも参加するニダ!」
 一方のベトナちゃんはずっと小首を傾げています。
(あーる・ぴー・じーって何かしら? ホー叔父さんに聞けば教えてくれるかしら?)

 翌週の放課後、ゲームのメンバーが集まってきました。
「初心者がいるのでキャラの職業は俺の方で決めさせて貰った」
 本日のゲームマスター、ゲルマンスキー君が説明を始めます。
「カンコはスカウト(偵察)、ベトナちゃんには僧侶を担当して貰おうと思う」
「で、私達の受け持ちキャラは何になりますの?」
「ああ、リズ、水晶を探しているパーティがあったろう。リズが魔法戦士、ニホンが神官戦士、
 マカロニーノが魔法使い、そしてアーリアが狂戦士(バーサーカー)だったやつ」
ゴキッ!!! 鈍い音と共にアーリアちゃんの踵がゲルマンスキー君の首筋にヒットしました。
 ゲルマンスキー君が妙な角度に曲がった首を何でもなかったように直た後、
カンコ君のダダコネが始まりました。
 ロール・プレイング・ゲーム 3/3

「ウリは戦士がいいニダ、ニホンのように『女神の盾』『愛国者の兜』『チョバムの鎧』
 『滑らかな剣』を装備するニダ!」
「それは無理だ。カンコ」ゲルマンスキー君が静かに言います。
「君のキャラはレベル1だ。そんな重装備をしてみろ……ほら、重量過多で一歩も歩けないだろう」
「…でも、戦士がいいニダ!!」
「戦士は被害担当でもあるんだ。だから、高レベルのキャラで固める必要がある。
 君が前衛にたっても、ヒットポイントが低いから、すぐに死んでしまう。」
 ゲルマンスキー君の理屈攻撃には、さすがのカンコ君もかないません。
「それにだ、カンコ。3人はそれなりに成長したキャラだから重い武具を装備できるんだ。
 ニホンは治療も行うから防御優先だし、リズは三叉の矛装備のため盾を持たず、軽い『鷹の兜』をかぶっている。
 155センチのグレートソード『SP2000』は怪力アーリアだから装備できるんだ」
グワァッシャッ!! 嫌な音と共にアーリアちゃんの踵がゲルマンスキー君の脳天にヒットしました。
「…今のはイイ蹴りだったぞ…」
 ゲルマンスキー君はそう言いながら、異様な角度に曲がった首を直しています。
「ところで、ベトナはまだ来ないのか?」と、何事も無かったようにアーリアちゃん。

ガラッ 教室の扉が開いてベトナちゃんの登場です。
「遅くなってごめんなさい、一度家に戻って準備したから」
「ギャーーー!!!」化鳥のような悲鳴を上げたカンコ君、窓から脱兎のごとく逃げ出します。
 そこには……
 黒パジャマにサンダル履きで水道管のお化けを抱えたベトナちゃんが小首を傾げて立っていました。
 その日のゲームでは、スカウト担当になったベトナちゃんが大活躍し、大いに盛り上がったそうです。
 めでたし、めでたし。

 ベトナちゃんの活躍は、後日、エリザベスちゃんがアメリー君にこう話したそうです。
「ベトナはスカウトの天才よ、オージーといい勝負」


解説 ウィンザー家の執事 投稿日: 05/02/08 22:03:13 ID:1dJK/R7t

ベタなネタですいません。小ネタの解説。

女神の盾:イージス
兜:対空ミサイルのペトリオット、ホーク
チョバム:戦車用複合装甲
滑らかな剣:滑腔砲
三叉の矛:トライデント。米英の潜水艦用核ミサイル
SP2000:ドイツの155_自走砲
黒パジャマ:ベトコンは黒っぽい服を着ていました。
水道管のお化け:旧ソ連製の携帯ロケットRPG7
オージー君:ニューギニアで密林戦の経験をつんだオーストラリア兵がベトナムで活躍しました。


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