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第2177話 ab-pro 投稿日: 05/03/04 00:46:25 ID:nBZJbKwr
 「パラ雄君、さようなら・・・」
 そこはパラ雄君の家の前。パラ雄君と同い年の小さな女の子が、涙が
こぼれ落ちそうになるのを懸命にこらえながら、小さく手を振りました。
 「・・・ツバルちゃん。また学校で会えるから」
 引きつった笑顔のパラ雄君も、ぎこちなく手を振り返します。
 「パラ雄君の家は大丈夫だよね?」
 「・・ニホンちゃんの家から秘密兵器を買うんだ。たぶん大丈夫だっ
て父さんも言ってた」
 そう言いながら、パラ雄君は懸命に笑顔を保ち続けます。
 「ツバル、もう行くぞ」
 少女の父親でしょう。家財道具を満載したトラックの運転席から顔を
だした男の人が、ツバルちゃんを手招きします。
 「ツバルちゃん!ニュージーランドさんの家に行けば、また会えるん
だよね!」
 「・・うん。また遊ぼうね!」
 ついに堪えきれなくなったのか、涙を溢れさせたツバルちゃんは、く
るりと身を翻してトラックに駆け出しました。
 やがて、走り出すトラック。パラ雄君はそのトラックが見えなくなる
まで、ずっとその姿を見つめるしかありませんでした。

 こうして、パラ雄君の家のご近所さんで、パラ雄君の幼なじみのツバ
ルちゃん一家は、長年住み慣れた家を捨てて、ニュージーランドさんの
家に旅立っていったのでした。

 次第に従業員さん達も引っ越しを続け、やがて誰もいなくなるであろ
うツバルちゃんの家だった場所。
 よく見れば、玄関先まで太平洋池の水で水浸しになっています。 
 ゆっくりと、本当にゆっくりと、しかし着実に増水が続く太平洋池。
 この地域に建っている家々は、確実に太平洋池の湖水にのみこまれよ
うとしています。
                           解説に続く

解説 ab-pro 投稿日: 05/03/04 00:47:31 ID:nBZJbKwr
 制作時間、三時間!
 ソースは三日の新聞の特集記事。
 ネット上では、
 ツバルの人々、海面上昇で国外避難
http://xmas.site.ne.jp/topics/20011025/top.html
 パラ雄君がニホンちゃんの家から買う秘密兵器・・・・・
http://www.asahi-net.or.jp/~xa8m-adc/sinpou2002.10.13.1sjis.html
 
 「海洋温度差発電(OTEC)」はクリーンで燃料コストのかからな
い発電ですから、使用するエネルギーを石油の輸入に頼るパラオには福
音でありますし、地球規模で見れば温暖化防止に役立ちますが・・・
 去年の段階で用地は確保できたようですが、建造費用がパラオの一年
のGDPに匹敵します。
 独立後も続いていたアメリカからの援助金は2009年に打ち切りにな
ります。今後の資金調達が重大な課題のようです。

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