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第2630話 黄 色 い リ ボ ン  ◆JBaU1YC3sE 投稿日: 2006/11/18(土) 15:55:02 ID:ZnCKo1V3
   「 最期の瞬間まで 」

強風が顔を打ち、荒波が逆巻く。
海に敵味方の船が互いに接近し、多年に亘る戦いに決着をつけようとしている。
我が家を荒らした敵を追い散らす日が来たのだ。
この賊徒共が我が家を荒らしてどれくらいになるか、
我が家はこいつ等の好き放題に荒らされて来た。
だが幸いなことに、それを見かねた強い隣人が援軍に来てくれた。
日頃から町の秩序を自分が作るといっているだけあって有言実行してくれたのだ。
それなのに!
援軍には来たものの、敵が頑強だと見るや犠牲を恐れ、
敵が自ら逃げ去って事が終わるのを待っているかのようだ。
その隣人は近所で最強の力を持っているにも拘らずだ。
もし私にその半分の力でもあれば、敵を残らず葬ってやるものを!
親しい隣人だの最強の支配者だのといっても、所詮は他人だったと言う事か。

それでも隣人が助けに来ないよりは遥かにマシなのだから情けない。
我が家を隣人の飼い犬と評する者までいる。
しかし私にとっては世界に一つだけの我が家。
だからこそ以前から私は強い家作りを主張していたのだ。
なのに家中の身勝手な者達は、聞く耳を持たぬばかりか私の追い落としを図る始末。
何故だ!私は地位も援軍も欲しくない。
ただ、ただ我が家が、自分の力だけで悪を叩きのめす強さを持ってさえいれば!
そして今までの戦いで、数多くの味方が無念の涙を呑んで散っていった。
声の出なくなった口を動かし、誰かにすがろうと手を震わせながら、
やがて蜉蝣のように力尽きていった。

その時、いきなり何かに突き飛ばされ、胸に激痛が走る。
敵弾か、おのれ、やりおったな!
部下でもある甥が私を抱き起こしてくれた。
こいつ、逞しい腕をしている。
血を吐きながらも甥の体に目がいった。いつの間にか大きくなったな。
視界が暗くなる中で、急に甥への愛おしさが沸き起こる。
昔小さかったお前を初めて馬に乗せてやった日のこと、今も良く覚えているぞ。
船に乗せてやったときのことも。
私も初めて父に馬に乗せてもらったときは緊張したものだ。
父が仕事で数日家を空ける時は、出かける父の後ろ姿が見えなくなるまで見送っていた。
そして母に手を引かれて、とぼとぼ家に帰ったな。
感謝している。言い尽くせぬほど。

「叔父上、しっかりなさって下さい!」
私は我に帰った。銃声や戦場の雄たけびが耳に甦る。
気を失っていたのか、どうやら私も蜉蝣のような有様らしい。
ついに最期の時が来たのだ。
以前から覚悟してきた。しかしまだ戦いは終わってはいない。
後を頼まなければ、声が出るうちに!
甥の肩を精一杯掴んだ。甥の私を見る目が驚く。
戦場で驚くなと教えたではないか!私の言うことをよく聞くのだ!
「私がやられたのは皆には隠し、お前が代わって指揮を執れ。
決着がつくまで、最後まで全力を挙げて戦い続けろ」


 時は流れ、ここはカンコ家の祭壇です。
 チョゴリちゃんがお花を持ってやってきました。
「ご先祖ニム、今年もご命日になりましたニダね。いつも心から感謝しているニダ。
 報われなくても最後まで戦い抜いたご先祖ニム、とっても尊敬しているニダ。
 あたしはまだちっちゃいけど、ご先祖ニムが守ってくれたウリナラの役に立つような、
 立派な人間にきっとなるニダ。ずっと見守っていて欲しいニダ。
 どうか天国でお幸せに。ご先祖ニム」

   おしまい

解説 解 説 投稿日: 2006/11/18(土) 15:59:29 ID:ZnCKo1V3
旧暦11月18日は李氏朝鮮の名将、忠武公 李舜臣提督の命日です。
李舜臣提督 wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E8%88%9C%E8%87%A3
戦死する露梁の戦いの経過
http://blog.livedoor.jp/mansaku21/archives/50312271.html

悪戦苦闘の中で武勲を挙げたにも拘らず、時に不当な扱いを受け、
それでもなお最後の瞬間まで祖国のために戦い、散華されました。
国こそ違え、祖国を愛するものとして深く尊敬しています。
どうか安らかに、偉大な忠武公。
一日本人より

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