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第69話 U−33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2006/04/02(日) 00:59:43 ID:qab/uUsm
『ニホンの花見』

「さくら、あなたはどうしてママに断りもなくお友達を家に招待するの」
 ママはおかんむりです。
「だってえ、せっかくお庭の桜がきれいに咲いたから、みんなに見せてあげようと思って……」
「お花見にご招待するなら、お食事の用意をしなきゃならないでしょ。でも家のしきたりで食べてはいけない
ものがある人たちが多いから、お料理を考えるのが大変なのよ。困ったわね」
 そんなママに追い討ちをかけるようにニホンちゃんは言いました。
「そういえばイン堂君は家族で来るっていってたけど、あの家には厳格な菜食主義者がいるのよね」
「どうしましょう、何を出したらいいのかしら」
 ママは頭を抱えてしまいました。でも、ニホンちゃんは何事かひらめいたようでした。
「いいこと思いついた。ママ、私にまかせて」

「わあきれいな桜」
 数日後、日ノ本家のお庭に集まったみんなは、満開の桜の木を見上げて口々に感嘆の言葉を漏らしました。
 ニホンちゃんは、お友達の間を回って重箱に詰めたお料理を勧めています。
「紫苑ちゃん。かまぼこおいしいわよ。どうぞ召し上がれ」
「これって魚から作るんでしょ。ウロコのない魚は使ってないでしょうね」
「まあ、食べてみて」
 紫苑ちゃんがかまぼこを一口かじると、それはパリパリと音を立てました。
「あら、これ大根じゃないの」
 苦笑する紫苑ちゃんを尻目に、ニホンちゃんはイン堂君に話しかけました。
「イン堂君。玉子焼きどうぞ」
 イン堂君は勧められた玉子焼きをほおばると、やはりパリパリと音を立てるのです。
「これって日ノ本家のタクワンていう漬物だね。アハハ。これならうちの家族の誰が食べても大丈夫」
 そこへロシアノビッチ君がやって来て、ニホンちゃんに声をかけました。
「ようニホン。たしか、日ノ本家のお花見ってのは、桜の下でお酒を呑むんだよな」
「ふふふ、そう言うと思ってちゃんと用意しといたわよ」
 ニホンちゃんはそう言ってグラスを差し出しました。でも、ロシアノビッチ君は一口飲んだとたん叫びました。
「なんだこりゃ。お茶じゃないか」
 ニホンちゃんは、グラスに残った液体を見て、平然とした顔で言いました。
「あら、ロシアノビッチ君。近いうちにいいことがあるみたいよ。ほら、お酒に酒柱が立ってる」

解説 U−33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2006/04/02(日) 01:01:09 ID:qab/uUsm
ソース)
[3]ユダヤ人基礎知識(その3)
http://www.ne.jp/asahi/home/osarukun/zatuwa52-3.htm

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