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第18話
オシシ仮面 ◆gUNjnLD0UI
投稿日: 2007/06/22(金) 18:24:15
『強かな糸』
1.
それは週末のお昼時の事でした。
「あ。来た来た」
「お待たせしました、ユーロ班のみなさん」
ベルギ−君ちのブリュッセルの間に、
トレイを持ったエプロンドレス姿のEUが現れました。
「本日はホウレンソウとベーコンのキッシュです」
焼き立てのキッシュのふんわりとした香りが、
ブリュッセルの間に広がります。
す、と滑らかな動きでトレイをテーブルに置きながら、EUが
「ベルギー様はショコラケーキを望まれていたようですが、
ランチにショコラケーキは合わないと判断し、キッシュにいたしました」
EUの背後に隠れたベルギ−君が、少し拗ねたような顔をしています。
「いや、EUの判断で間違いないよ」とデンマー君が笑います。
「だいぶまともな判断が出来るようになってきた証拠ですわね」
好物が出てきたせいか、フランソラーズちゃんが満足そうに微笑みました
「恐縮です」表情だけは相変わらず無表情なのが気になりますが、
そう言いながら、EUは取り出したナイフでキッシュを切り分けていきます。
さく…さく…と香ばしそうなパイ生地の音を立てながら、
キッシュを切り分けていたその時でした。
2.
「ちょっと待って、EU」
「はい、ポーラ様」声のした先を一瞥したEUは、
切り分けている途中で動きを停止しました。
「これじゃ足りないわ、
アーリアちゃんとゲルマッハ君と同じように二切れちょうだい」
ポーラちゃんは自分のお皿に切り分けられたキッシュを、
ずい、とEUの手元に押し返します。
「しかし、先日の調整で、お食事の割り当ては、
より人数に正確になるように私は設定変更されております。
確かに以前はポーラ様もお二方と同量のお食事量ではありましたが――」
「我が儘を言うんじゃない、ポーラ」デンマー君がそうたしなめますが、
食欲の誘惑には勝てないのか、ポーラちゃんはまだ反論します。
「ナッチ小父さんが家に押しかけてこなかったら、
きっと私にも兄さんがいたに決まってるわ。
ナッチ小父さんに迷惑をかけられた分、私は多めにもらってもいいはずよ。
デンマー君、きっとあなたの家だって――」
「馬鹿なことを言うな、そんなことを持ち出すんじゃない!」
普段らしからぬ口調でデンマー君に窘められたポーラちゃんは、
顔を赤くしてぷいと部屋から飛び出してしまいました。
3.
「なにか私の行動に間違いがあったのでしょうか?」
「ん、いや。君は間違ってはいないよ、EU」
EUに残りのキッシュを切り分けてもらいながら、
デンマー君はEUをそう慰めます。
「ではポーラ様が間違っていたのでしょうか?」
「――そうだね、とても難しい問題だ」切り分けられたキッシュを前にして、
デンマー君がそう唸るように呟きました。
「食事が足りないのならば、何故足りないのか、
足りない理由を告げればいいのです。
別の理由を持ち出すのは感心できません」
フランソワーズちゃんもデンマー君に同意します。
「……アーリア様? ゲルマッハ様?」
「…あ?」びっくりしたような顔で、ア−リアちゃんがEUを見上げます。
「お二人の分のキッシュです」
「あ、ああ、ありがとう」アーリアちゃんはそうお礼を言って、
EUからキッシュの乗せられたお皿を手にとりました。
一方でゲルマッハ君は青白い顔をしたまま、ただ俯いていました。
「ありがとう、呼び鈴が鳴るまで少し休んでいていいよ」
ベルギ−君にそう言われ、
EUは皆が食事をしているブリュッセルの間から退出しました。
4.
専用クレイドルに腰掛けて、充電を受けながらEUはもう一度、
お昼時の出来事を思い出してみます。
似合わない刺をむき出しにしたポーラちゃんや、
癇癪を起こしたように怒ったデンマー君。
哀れみの眼差しをア−リアちゃんや、
ゲルマッハ君に向けるフランソワーズちゃん。
そして黙ったままの二人。
『――ポーラ様の言動はやはり理論的に間違っています。
デンマー様やフランソワーズ様も、
わたくしの問いかけに見合う答えはして下さりませんでした。
ア−リア様、ゲルマッハ様のお二人には何も仰っていただけませんでした。
いつか、わたくしも理解出来る日が来るのでしょうが、
その時には、わたくしもポーラ様のように、
破綻した理論を持ち出すのでしょうか。判りません。判りませんが――』
胸の奥に格納されたリアクターが、少し熱を持つのを感じ、
EUは右手を胸元に添えました。
『出来得ることならばわたくしは、あの方々を繋ぎ留める糸でありたい。
緩やかで細やかな――そして強かな、糸で――』
【了】
解説
オシシ仮面 ◆gUNjnLD0UI
投稿日: 2007/06/22(金) 18:29:58
解説
<ポーランド首相>ナチス侵略なければ人口2倍…発言が波紋
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070622-00000020-mai-int
第二次世界大戦でナチスの侵略がなければ、ポーランドの人口は約2倍だった――。ポーランドのカチンスキ首相が地元ラジオで行った発言が、欧州憲法の再生を目指す新条約を検討するため、ブリュッセルで開催中の欧州連合(EU・27カ国)の首脳会議で波紋を呼んでいる。
WWUがなければ欧州の人口自体が2倍になってることになりますね。
タラレバを持ち出すのもどうかと思いますが、
特亜並に斜め上なポーラちゃんの理論にちょっと引いてしまったり;
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