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第2話 おおつやすたか 投稿日: 2006/02/26 21:03:00
『ワゴン車』

 ペットの犬を乗せることのできるワゴン車。
 地球町では、これが各家の財力を示すステイタスシンボルとなっていました。かつてはニホンちゃんのおうちにもあったのですが、今では、アメリー君、エリザベスちゃん、フランソワーズちゃんなどの家にしかありません。
「ふふふのふ。でもウリのうちでもあのワゴン車を手に入れるニダ」
「ははははは、朕のうちでも手に入れる予定アルぞ」
 と、カンコくんとチューゴくんが、他の誰も見ていない教室の隅で不敵に笑います。二人ともかなり本気のようで、スクラップになってしまったロシアノビッチくんの家のワゴン車を、わざわざ貰ってきて庭に飾っていたのです。チューゴくんはあわよくば修理して使おうと考えていたらしいのですが、手入れをしなかったために完全にさびつかせてしまいました。
 ある日、いつものようにチューゴくんとカンコくんが、自分たちの脳内だけにある理想のワゴン車についてあれこれ語り合っているそばを、イン堂くんとフランソワーズちゃんが話しながら通りかかりました。
「……解体してくれっていわれていたあのワゴン車、中にゴミが多くて分解できないよ」
「ゴミが多いのは最初からわかってたでしょ。あのゴミのせいでうちの近所では解体できないから、あんたのとこで処分してって頼んだんじゃない」
「でも、あそこまで多いとは……」
「しょうがないわねー、じゃあ、一応引き取ることにするから」
 何故かその話を聞いていたチューゴくんの目がきらりと光ります。
「チューゴニム、何考えついたニカ?」
「ふふふふふ、フランソワーズのところのワゴン車が余っているそうだ。これは朕にそれを買えという天の配剤であろうことかな!」
 チューゴ君はそう言って家に走って帰り、庭に置いてあったスクラップ同然のワゴン車をオークションで売り飛ばしたのです。
「フランソワーズ!例の余ったワゴン車を朕に売れ!金はここにある!」
 かくしてチューゴくんは念願のワゴン車を手に入れ、にこにこしながら家に帰ったのです。
「やったニダね、チューゴニム。あとはワゴン車に乗せる犬を手に入れるだけニダ」
「はっ、い、犬か……」
 そうです。単にワゴン車があるだけではダメなのです。あくまでも「犬が乗れるワゴン車」を持っていることがステイタスになるのですから。そのことを思い出したチューゴくんの顔面は、みるみる蒼白になっていきます。と、その時。
「ぴんぽーん」
 チューゴくんの家の呼び鈴が鳴り、インターフォンから女の子の声が聞こえました。
「あー、チューゴくん?わたしフランソワーズだけど、ワゴン車に似合いのワンちゃん欲しくない?今ならお安くしとくわよ」
 ……例のイン堂くんとの会話が、自分をひっかけるための芝居だとチューゴくんが気づいたのは、それからずっと後のお話でしたとさ。

解説 おおつやすたか 投稿日: 2006/02/26 21:05:00
写真はフランスの退役した正規空母クレマンソーです。

この船には大量のアスベストとPCBが使われていたので、ヨーロッパで解体することができず、インドまで回航されたのですが、インドでも解体を拒否され、先日フランスに戻されることが決定しました。

http://cnn.co.jp/business/CNN200602160028.html

まあ、そういう空母がインド洋あたりをうろうろしていると、例の二国が「買うぞ」と言い出しかねないだろうなあ、と思って書いてみました。クレマンソーの場合、クルセイダーとシュペル・エタンダールという旧式機か、ラファールしか搭載することができないので、中国がもしクレマンソーを買ったとすると、フランス政府は喜んでラファールを売りつけるだろう、との予測もちょっと混じってます。

ちなみに、ロシアノビッチ家のワゴン車というのは、空母ミンスク(韓国が購入した後中国に転売)とノヴォロシスク(韓国が購入)のことです。ミンスクは中国でテーマパーク化されたのですが、維持できなくなり先日オークションに出されることになりました。

http://www.excite.co.jp/News/odd/00081140315976.html

売り出し価格は約18億4600円から、となってますが、これはおおむね日本の90式戦車二両分に相当します。偉く安いですね。

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