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第1081話
プルコギル−焼肉の道−
投稿日: 02/06/30 23:16 ID:1z9FijvM
「あんたは日本人がカンコ家にした仕打ちについてどう思うのかね…?」
「た……大変申し訳ないと」
ニホンちゃんが焼き肉屋で酔っぱらいの老人に絡まれています。
偶然視線が合っただけなのに因縁をつけられ、無理矢理謝罪させられているのです。
ニホンちゃんは事を大きくして周りに迷惑を掛けたりしまいと、理不尽な要求を我慢して受け入れます。
「どうしてキミ達ニホン家はそんなにいい加減に謝罪できるのだね?」
「そ、そう言われても……いつまで謝れば許してもらえるんですか…?」
「ずっとだ! ずっと覚えていてもらおうか!」
要するに「許すつもりは最初から無い。永遠に謝罪し続けろ」ということです。
この不条理で一方的な要求には、控えめで相手を立てることを美徳とするニホンちゃんもさすがに顔を曇らせます。
でも相手は老人です。
逆らって喧嘩するのは良いことではありません。
老人はニホンちゃんが黙っているのをこれ幸いと、有ること無いこと無茶苦茶に言ってきます。
ニホンちゃんはそれに対し、手をぎゅっと握って堪え忍んでいます。
『待ちなさいニダ』
「何!」
「カ、カンコ君?」
ニホンちゃんは目を見張りました。
そこには格闘技の天才でめちゃめちゃ強くてかっこいい正義の韓国人エリート警官になったカンコ君が立っていたのです。
それだけでも驚嘆すべきなのに、次に彼から出された言葉は正に驚天動地でした。
『ご老人、あなたの言っていることは間違っているニダ』
なななななんと! カンコ君がニホンちゃんを擁護しているのです!!!!!!!!!!!
驚かずにいられましょうか!
「な、なんだと若造! ニホン家がヒデヨシ時代から現在に至るまでずっとカンコ家に酷いことをしたのは常識だ!」
『そのほとんどが、ニホン家を騙ったカンコ家の人間だったって事は知っているニダか?』
「う、嘘を付くな! 本当の歴史を歪める捏造だ!」
『これはチューゴ家の日記にも書いてあることニダ。カンコ家当主の横暴に我慢できなくなった子供が、親に反抗したというのが真実ニダ。
例えばヒデヨシがカンコ家の冷蔵庫からパンの耳を大量に取っていったって伝承も、本当はどさくさ紛れに子供がつまみ食いをしたのを
誤魔化してヒデヨシの仕業にしたニダよ』
「ヒデヨシだけではない! とにかくニホン家は悪いことをしても謝らない、最低の一族なんだ!」
『ではあなたは、ヒデヨシ以前にウリナラがニホン家のツシマ別荘に無断侵入して、ヒデヨシ以上に乱暴な強盗まがいを働いた
ことを謝罪したニダか? モンゴル家の走狗となってニホン家に押し入ったことは補償したニダか?』
「ぐっ……そ、そんな昔のこと関係ない!」
『あなたは先程「ずっと覚えていてもらおうか!」と言ったニダが?』
「ぬ……だがニッテイがワシたちを騙してカンコ家を親戚の一つにしようとしたのはつい最近で……」
『カンコ家併合はあの時代、合法的ニダ。しかも町内中に承認されていたニダ』
「無理矢理されたんだ!」
『ニホン総本家のご息女がカンコ家に嫁入りしているニダよ。反対ならまだしも、どうしてそれが無理矢理になるニダか?
属家から宗主家に嫁ぐのが普通ニダ。勿論人質としてニダけどね』
「ぬぬぅ……だがカンコ家は最後まで抵抗して……」
『それも間違った知識ニダ。優柔不断で事大主義のカンコ家は、ニホン家がロシアノビッチ家との喧嘩に勝ったのを見て
「是非親戚にしてください」と頼んだのが本当ニダ』
「どちらにしろ、ニッテイはカンコ家に酷い虐待や強制連行を……」
『虐待された家族の人数がどうして前より増えたりしたニダか? 町内の別の家には「ニホン家は、悪い慣習がはびこっていたカンコ家を近代化し、
大掃除し、整理整頓した。少し前とは見違えるように綺麗になっている」と伝えられているニダ。それにカンコ家の人を無理矢理ニホン家で
働かせていたなんてのも間違いニダ。カンコ家で働くよりニホン家で働いた方が環境が良かったので、自分からニホン家に行ったというのが真実ニダ』
「嘘を付くな! お前は売家奴だ! カンコ一族の恥さらしだ!」
『ウリは真実を語っているだけニダ。捏造した歴史を本当だと思いこんでいる事こそ、家の恥ニダ』
「ぬぬぅ……。そんなことはどうでもいい! ワシは、ニッテイがワシたちにした非道な行いに対して謝罪も補償もしていないことを反省させたいだけで……」
『それも間違いニダ。ニホン家はもう謝罪も補償も完了し、両家で「もうこれ以上過去のことは持ち出さない」と約束し合っているニダ』
「う、嘘だ! ワシはそんな金はもらっていないぞ!」
『カンコ家は、ニホン家から貰った金を家族に分けたりせず、家屋や庭の修繕費・建築費に充てたニダ。だから一人一人に渡されていないのは当然ニダ』
「そんなことワシは聞いていない!」
『知らなかったらニホン家を悪し様に貶していいニダか? 家族に知らせないカンコ家が間違っているに決まっているニダ』
「か、金を払ったって言っても、どうせちょびっとだけだろう!? 誠意が足りないからワシたちは未だ貧乏なんだ!」
『ニホン家が払った金額ニダか? 当時カンコ家敷地内にあったニッテイの財産もウリ達が没収したから、全部合わせると今のウリナラの
2倍の年間予算になるニダよ。つまり2年間も遊んで暮らせる金を貰っていたニダ。それを有効に使えず散財してしまったのは、ウリナラ自身の失策ニダ」』
「きいぃぃーー!! そのくらいの金は当然だろう! ニッテイはカンコ家から莫大な利益を搾取したんだからな! それを返して貰っただけだ!」
『それが基本的な誤解ニダ。ニッテイはカンコ家やマンシュー庭には膨大な金を投資し、回収できたのはほんのちょっとだったニダ。
つまりカンコ家を併合しようとして損したのはニホン家の方で、カンコ家は得したニダ』
「そ、それにしても近年はカンコ家はニホン家に対して一切の悪事はしていない! カンコ家は正義の一族なんだ!」
『カンコ家は、ニホン家がアメリー・エリザベス家との喧嘩に負けたとき、火事場泥棒を沢山したニダ。それまで「ウリはニッテイの一員ニダ」
と威張っていたのに、ニホン家が負けたら「ウリは勝ち組ニダ! 第三国ニダ! だからニホンはウリの言うことを聞くニダ!」と掌を返し、
ニホン家の土地の良い箇所を不法占拠したり女の子のスカートめくりを無理矢理したりと恥ずかしいことをいっぱいしたニダ。あなたが知らないのは、
ニホン家が親切心で黙っているだけニダ』
「ぐぅぅぅぅ……とにかく、ニホン家が町内中から嫌われて非難されているのは常識なんだ!」
『世界中ってどの家ニダか?』
「どのって……その……とにかく町内中だ! 改めて調べる必要など無い!」
『やれやれ。では逆にカンコ家と仲良くしてくれる家はどこニダか?』
「……」
お爺さんは色々と考えましたが、一向に言葉が出てきません。
ずっと黙りこくったままです。
いつまで待っても埒があきそうにないので、カンコ君の方から話し合いを再開します。
『ニホン家しかないニダな。助けてくれる恩人に仇で返すのがカンコ家の流儀だと言うつもりニダか?』
「こ、この若造がぁっ!」
歴然とした証拠や理論では太刀打ちできないと悟った老人は、ついに暴力に訴えることにしたようです。
赤い顔をして立ち上がり、脚をブンブン振り回し始めます。
「カンコ家伝統のテコンドーだ! カラテの源流だぞ! どうだ参ったか! さっさと降参しる!」
あまりに意外な展開に現実認識が付いていかずにいたニホンちゃんは、この時初めて意識が戻りました。
「あ……か、カンコ君、危ない! 逃げて!」
心配するニホンちゃんに、カンコ君はいつもとかけ離れたクールな笑みを浮かべます。
『ふっ……』
クネクネ。
クネクネ。
カンコ君の体が妖しく蠢き始めました。
それを見た老人が驚きます。
「そ、それはカンコ家伝説の最強暗殺術・テッキョン!?」
『そうニダ。テコンドーなんていう最近出来たばかりのカラテもどきなんて問題にならないニダ』
「ま、参りましたーっ!」
『ふっ』
またカコイイ顔をしてカンコ君はポーズを決めます。
『判ればいいニダ。これからはニホンちゃんを苛めるのは止め、アメリー家の言いなりになってベトナちゃんを苛めたことを謝罪し、
ウリナラの捏造を止めるニダ。それが先進国への第一歩になるニダ』
「へへぇ〜」
土下座して頭を垂れる老人に、優しく手を差し伸べてやるカンコ君。
あまりのかっこよさに、ニホンちゃんは“ぽ〜っ”となっています。
「か、カンコ君……あの……」
「ん? ニホンちゃんニダか。今まで散々意地悪して済まなかったニダ」
「ううん。もういいの。そんなことより私……」
ニホンちゃんはキラキラお目々をして頬を赤らめています。
これは完全に恋する乙女の様相です。
互いに見つめ合う二人はそのまま接近し、そして近付く唇が……
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「起きなさーーーーーーーーーーいっ!」
スパーン!
「ニダーーーーーーーーッ!?」
カンコ君の頭から景気の良い音が鳴り響き、続いて驚きの声が上がりました。
何事か把握できずに辺りを見回すカンコ君に、丸めた教科書を握りしめたフラメンコ先生が説教を開始します。
「私の授業で居眠りとはいい度胸ね」
「ち、違うニダ。ちょっと目を閉じて意識を休ませていただけニダ!」
「それを居眠りと言うのよっ!」
スパーン!
またカンコ君の頭から音が発生します。
とりあえず2回叩いて気が済んだフラメンコ先生は元通り授業の続きに戻りました。
でも釈然としていないのが一人だけ居ます。
「く、悔しいニダ! これというのも……」
カンコ君の脳裏に一人の女の子が浮かびました。
小遣いが足りなくなったり石に躓いて転んで機嫌が悪くなったときなどに、いつも憂さ晴らしのため苛めていた金持ちの隣家の少女です。
「次の休み時間に謝罪と補償を要求してすっきりするニダ!」
またもや勝手な思い込みで行動を決定しています。
さて授業終了のチャイムが鳴りました。
先生が教室を出ると同時にカンコ君は席から立ち上がって猛然とその女の子の所までウリナラダッシュをしていきます。
「ニホン! お前に対し謝罪と……」
「え? 何?」
ニホンちゃんが無垢な笑みを向けてきました。
人の善意を信じて疑わない澄んだ瞳です。
それを見たカンコ君の脚がぴたっと止まりました。
「う……」
「どうしたの、カンコ君?」
カンコ君の顔が何故だか火照っていきます。
授業中に見た夢のせいでしょうか?
でもその夢は起きた途端に忘れてしまい、どんな内容だったのかはどうしても思い出せません。
ある有名な深層心理学者によると、夢は押し込められた欲望の発露なのだそうです。
デーハンミングッのマンセー伝統で形成されたウリナラ自我が、ニホン家への憧れを抑圧していたのでしょうか?
一人で停滞しているカンコ君を、ニホンちゃんは心配そうに覗き込みました。
「ねぇ大丈夫?」
ニホンちゃんの顔が近付いてきます。
その情景には何故だかデジャブーを感じてしまいます。
「あ……あ……」
「顔が赤いよ? 具合が悪いんだったら保健室に……」
いつも意地悪されていることを水に流してニホンちゃんは親切にしてくれています。
普段なら「当然ニダ!」と感謝の一つもしないカンコ君でしたが、今日に限ってはいたたまれません。
「アーーーーーーーーーーイーーーーーーーーーーーグォーーーーーーーー!!」
大音響を発してカンコ君は逃げ出しました。
いつもは顔をキムチ色に発光させるのですが、今日に限って頬を桜色に染めています。
「え? え? ええっ?」
残されたニホンちゃんは状況が掴めずただきょとんとしているしかありませんでした。
おわり
解説
プルコギル あとがき
投稿日: 02/06/30 23:56 ID:1z9FijvM
あとがき
なんだか今夜は十数行書き込んだだけで「長すぎます」って撥ねられるんですけど……。
「カンコ君がかっこわるい役ばかりで気分が悪い」という人がいらっしゃいましたので、カコイイ正義で聡明な彼を書いてみました(ニヤソ)。
もちろん『あの』国では捏造・歪曲とされて認められていない史実ではありますが。
あと元ネタは週刊コミックバンチで連載されている韓国人の漫画『プルンギル−青の道−』から。
↓参照スレ
http://academy.2ch.net/test/read.cgi/korea/1022231311/l50
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