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第1508話 更科うどん ◆bc/WMtRnlQ 投稿日: 03/05/06 11:57 ID:vypELgxS
『親父の背中』

ペルシャパパはアラブ町名物のカミナリ親父である。
アラブ町の子供達は、みんな一度はペルシャパパのジャイアントスイングの餌食になっている。
本人は悪戯ざかりの近所の悪ガキ共を懲らしめているだけなのだが、子供達にはこれが何故か
大ウケで、ペルシャパパはアラブ町の人気者である。
だが至極当然のことながら、親御さん達にはすこぶる評判が悪い。とりわけ、ともにアラブ町の
名家と呼ばれている関係で何かとライバル視してくるサウジ家・イラク家、それにエジプト家などは、
かえって教育に悪いとひつこくペルシャパパを目の敵にするのであった。

前に一度イラクの坊主が愛娘に悪戯をした事があった。悪戯といってもきまりの厳しいアラブ町の
こと、他の町と違っておパンツを盗むような不届き者はいない(もしそんな事をすれば、町の
ど真ん中で晒しageの上、石打ちの刑に処せられる)。ほんの少しちょっかいを出してからかった
だけである。
それでもジャイアントスイングの餌食になるには充分な、罪深い行為であった。
あの後、フセインの馬鹿が怒鳴りこんできたり、PTA会長のアメリーママがイジメを助長するざます
低俗で野蛮ざます何ざます何ざますとねじ込んできて面倒な事になったが。
思えばあの頃からイラクの坊主はグレはじめた。自分のちょっとした悪戯が大事になり、
大人が出しゃばって家同士の喧嘩にまでなってしまった事に、子供心に傷ついたのかもしれない。

ニホンちゃんも一度ジャイアントスイングの餌食になっている。
アクマがお歌を歌ってどうのこうのという童話を読んでいて、ペルシャパパに見つかった。
イラン家家訓は家訓なのに他所の子にも容赦ないのである。親父はすぐさま「逝っちまいな」
と叫びかけたが、おびえるニホンちゃんを見て急遽ジャイアントスイングでお仕置きに
変更したのであった。彼は分かりやすい男なのである。
今度はスカートをおさえながら涙目になるニホンちゃんを見て、頑固親父もさすがに
心が痛んだが、これ以上の譲歩はかえってニホンちゃんのためにならないのである。
誠心誠意11回転させて頂いた。
仲の良かったニホンパパが、しばらく口をきいてくれなくなったが。

年のせいだろうか、最近ジャイアントスイングをやると目が回って息が切れるようになった。
おまけに腰にくる。技を繰り出した後でだらしなくしゃがみ込み、ヘンな汗をかいて
肩で息をする姿は、親父の威厳を保つためには見せたくない姿である。
悪ガキどもの相手をする事も滅多になくなってしまった。
子供達は不満顔だが、当然親御さん達の評判は良くなった。アラブ町はともかくとして、何故か
他所の町でも最近受けがいい(アメリー家の連中は相変わらず嫌な目で見るが)。ペルシャは
大喜びで、最近学校が楽しくてしょうがないらしい。学校の友達も沢山家に来るようになったし、
厳しい自分に振り回されておろおろするばかりの大人しい子だったペルシャが、見違えるほど
はきはきした明るい子になった。そんな愛娘の姿を見ていると、ペルシャパパは我が子の成長が
大変眩しく誇らしい気分になり、これはこれで良かったかもしれないと思えるのである。
しかし、子供というものは本当にあっという間に大きくなって、そしていつかは親の手を離れていく
ものなのである。そんな事がちらりと頭をよぎるたび(最近多くなってきた)、ペルシャパパはいつも、
まるで足元の地面が崩れ落ちていくような絶望と不安に襲われる。

アッラーの神は彼に、一体いくつの試練をお与えになれば気がすむのだろう?
とりあえず体調に気をつけて、必殺技が使えなくなる事態だけは避けねばならない。
随分と気の早い話であるが、将来この家の娘に近づく者には、頑固親父一世一代の
ジャイアントスイングに耐えきる根性が求められるだろう。

この世で娘の父親ほどつまらんものはない、と最近しみじみ思うペルシャパパであった。

解説 更科うどん ◆bc/WMtRnlQ 投稿日: 03/05/06 12:00 ID:vypELgxS
ペルシャパパに萌えてみるテスト(なんだそりゃ)。いや、可愛くないですかこの親父。
イラン革命、イラン・イラク戦争、『悪魔の詩』騒動、ホメイニ師の死と民主化への試行錯誤
といった大まかな最近の流れを下敷きにしておりまつ。
イランについては、このスレが面白かったです。
http://society.2ch.net/test/read.cgi/kokusai/1011073725/l50


さだまさしかなんかBGMにすると似合いそうだ(w

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