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第1562話 名無しさん ◆XPt9wFJMeA 投稿日: 03/06/16 02:48 ID:ljsA1XOn
      目次お疲れ様です
             「主」
 日之本家シガの間の庭には大きな池があります。太平池程ではありませんが大きな池です。
ウヨ君達のお気に入りの釣り場でもあります。
 ウヨ君は今日もこの池で釣りに興じていました。
 「よし、また釣れたぞ」
 鮒を釣り上げました。
 「これを鮒寿司にするか」
 見れば鯉だの鰻だのいっぱい釣ってます。大漁ですね。
 「今日はこれ位にするか」
 立ち去ろうとしたその時です。不意に水鳥達がザワザワと騒ぎ始めました。
 「?」
 鳥達が一斉に飛び立ちます。今まで鳥達がいた水面に何かが躍り出てきました。
 「な、何だあれは!?」
 巨大な黒いものが水面で跳ねました。そして水の中に消えました。
 「・・・ハマの龍神、じゃあないよな」
 ゴクリ、と息を飲みました。

 
「で、わたしに手伝って欲しい、と」
 次の日そのお池にニホンちゃんと一緒に来ました。
 「御免、俺だけじゃ釣れそうになくて」
 珍しく弱気な発言です。そんな弟を見て姉はくすり、と微笑みました。
 「いいわ、わたしも暇だし」
 かくして二人は釣り糸とお池へ垂らしました。
 「けれど何が出たの?貴方でも釣れないなんて」
 「うん、なんか得体の知れない巨大な生物なんだ」
 ウヨ君が首をかしげて言いました。
 「得体が知れないって・・・鯉?それとも鰻?」
 「よくわからない。けど捕まえたら皆に見せたいな。食べるのもいいし」
 「ふうん」
 ニホンちゃん何か言いたげです。
 そうこう言っているうちにニホンちゃんの釣竿になにか引っかかりました。
 「きゃあ!!
 もの凄い力です。鯉や鮒のものとは思えません。
「姉さん!!」
 ウヨ君が自分の釣竿を離しニホンちゃんの腰にしがみつきました。しかし手の位置が少し
高かったようです。二つの柔らかいふくらみを掴んでしまいました。
 「あ」
 「ど、何処掴んでるのよ!!」
 「ご、御免!!」
 慌てて手を腰の位置に戻します。そしてタイミングを合わせ竿を思いっきり引きました。
 バッシシシシヤヤヤッヤヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
 何かが地面にあげられました。土の上でびちびちと跳ねています。
 「これは・・・・・・!?」
 それは巨大ななまずでした。黒い巨体で思いっきり跳ね回っています。
 「ビワコオオナマズね」
 「ビワコオオナマズ?」
 「ええ。昔からこのお池にいるお魚なの。このお池の主みたいなものだわ。けれど最近
数が少なくなってるの」
 「そうだったんだ」
 「武士、どうするの?」
 弟に真摯な顔で尋ねました。
 「え・・・?」
 「お家に持って帰って自慢するのも食べるのもいいわ。けれどそれにより一つの生物が
うちにいなくなるかもしれないのよ」
 「そうなんだ・・・」
 「そうなったら寂しいと思わない?」
 「・・・・・・・・・」
 ウヨ君は決心しました。なまずを元いたお池に返しました。お池の奥深くに潜っていく
なまずとそれを見送るウヨ君を見てニホンちゃんは優しく微笑みました。

解説 名無しさn ◆XPt9wFJMeA 投稿日: 03/06/16 02:54 ID:ljsA1XOn
日之本家地域モノです。ソースというか資料は
http://www.lbm.go.jp/emuseum/tour/aquarium/aq0103.html
http://www2.odn.ne.jp/~cad65120/FRESH/NAMAZU.htm
ビワコオオナマズを扱ってみました。作品のヒントになったのは
『釣りキチ三平』のこのナマズを釣るお話です。ちなみに鮒寿司とかハマの龍神
とかの元ネタはマニアックでしょうか?

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