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第1622話 無銘仁 ◆uXEheIeILY 投稿日: 03/08/17 01:32 ID:UX/fWtC9
 「明日へ駆けるチューゴ君」

「おいアサヒ、もう朕とタイワンの仲を裂く記事はやめてほしいアル」
「あら、あたしを差し置いてあんな野蛮な女と付き合おうなんて、
どういうことかしら?あたしは非武装中立で安全よ」
「タイワンが野蛮なら花火を持ってるうちはどうなるアルか。ともかく
もうやめるのコトヨ。ニホンもタイワンも朕の友達アル」
「だめよ、あんたの親父さんに頼まれてるもの。タイワンをあんたや
日ノ本家の者と仲良くさせるなってね」
放課後の五年地球組で、チューゴ君とアサヒちゃんが口論を始めました。
実はこの二人は、親同士が勝手に決めた許婚なのです。
ところがチューゴ君はいつもタイワンちゃんにちょっかい出しています。
一方アサヒちゃんはカンコ君に秋波を送るという始末です。

「ちょっとアサヒ、あんた何のつもり?あたしに喧嘩売ってるわけ?」
二人が口論を続けていると、タイワンちゃんが怒鳴り込んで来ました。
「ほら、うわさをすれば野蛮人のお出ましよ」
「何が野蛮よ。あんた、『アメリー君とニホンちゃんはタイワンに
対する邪念を捨てるべき』って書いたでしょ!友情を邪念だなんて、
あんただけは許せない!」
「あんたはチューゴ家の下働きで十分よ。町内会にも入れないくせに」
「そ、それにあんたはチューゴ家が花火を増やしてうちを威嚇してる
ことを書かないじゃない!うちはむしろ減らしてるのよ」
「それが嫌ならいつまでも米帝の犬をやってなさい。あの浮気男のね」
抗議をまるで無視して、アサヒちゃんは冷徹に吐き捨てます。
さすがのタイワンちゃんも言葉が継げなくなってしまいました。
「あら、どうしたの?まあ無理もないわねえ。アメリーと来たら、
ベトナにもペルシャにも次々手を出してんだから。アハハハハハ!」
「タイワン、まだ帰らないアルか。アサヒの暴言はいつものことアル。
気にするだけ損ヨ。それより早く帰らないと、両親も心配するネ」
「……」
時計は5時を指しています。教室に残っているのはもう二人だけです。
机に突っ伏して身動き一つしなかったタイワンちゃんが、すっくと
立ち上がりました。虚ろで、しかし光が宿った目をしています。
「か、帰るなら送るアルヨ(ついでにそのままうちに来ればいいアル)」
「な、何よ気持ち悪いわねー。……中華アパートには行かないからね」
タイワンちゃんは振り向きざまそう言うと、早足で歩き出しました。
夕陽に照らされて、二人の長い影が後ろにすうっと伸びていきました。
「タイワン、ひとつ聞きたいことがあるネ」
「なに、そんな柄にもなく深刻な顔しちゃって」
「なぜ同族の朕ではなく、アメリーなんぞが好みアルか?」
「な、なに言ってんの。あたしがアメリー君をぞっこん愛してるでも片思い
辛いわどうしよう、なんてそんな……」
「……誰もそこまで言ってないアル。ベタなボケしてないで答えるヨロシ」
「簡単じゃない。あんたと違ってアメリー君はニホンちゃんに優しいのよ。
ニホンちゃんは大事な友達だもの。バカンコと一緒になっていじめる
あんたとは一生同居しないからね!」
二人の間を沈黙が貫きました。静かな夕暮れ時です。道行く人の姿もなく、
ただ二人の足音ばかりが響きました。
「……朕はニッテイは嫌いアルけど、ニホンが嫌いなわけではないアル。
ニホンもカンコもお前も、みな同じアジア地区の仲間アルヨ」
「なら、何でニホンちゃんをいじめたり、あたしを脅したりすんのよ」
「朕は……世界一歴史のあるチューゴ家の嫡男アル」
それだけ言うとチューゴ君は顔をそらしてしまいました。
「そう、あんたは一人っ子だから親戚の期待を一身に負ってるって言いたい
んでしょ。理不尽に思えても親の言うことを聞かなきゃいけないってね。
あたしはチューゴ家のそういうところが大っ嫌いなのよ!」
再び沈黙が二人の間に影を落としました。もうタイワン家はすぐそこです。
チューゴ君が立ち止まりました。顔はそらしたままです。
「……最後にこれだけは言っておきたいアル。アメリーはいいやつアル。
でもやつはどこか東洋人を見下してる節があるネ。お前もそこを忘れない
ように気をつけるコトヨ。……じゃあ朕は帰るアル」
「アメリー君はそんな人じゃないよ!あたしは……あ、チューゴ!」
チューゴ君は突然全力疾走で逆方向へ駆け出しました。
(朕は……朕は誇り高き中華一族の血統を受け継ぐ嫡男アル。格下の家と
仲良くするのは家全体の屈辱アル!朕には家を守る責任があるノヨ!)

「……ナちゃん、シナちゃん。ちょっと来てちょうだい」
チベットさんが呼んでいます。チューゴ君は渋々台所へ向かいました。
「母さん、朕は考えごとしてたアル。少し静かにしてくれないアルか」
「ごめんなさい。タイワンちゃんがあなたに渡してって言って、私に
手紙をくれたのよ」
「ふうん、あのタイワンから手紙なら罵倒に決まってるアル」
「シナちゃん。あの子はきついようで優しい子よ。町内会から孤立しても、
日ノ本家に文句の一つも言わないでしょう。父さんみたいにあの子を無理に
うちに連れて来ようなんて考えないで、お願い」
「う、うるさいアル。後妻に指図されるいわれはないアルヨ。父さんが
決めた方針に逆らうわけには行かないアル!」
いつもの冷静さはどこへやら、そうがなり立てると手紙を握り締めたまま
自室へ駆け込みました。後にはチベットさんが立ちつくすばかりでした。
チューゴ君は自室に戻ると、椅子にへたり込みました。
「父さんの決めたことは中華一族にとって絶対アル。絶対アル!」
自分に言い聞かせるように繰り返します。以前、タクミンパパに折檻を
受けた記憶がよみがえります。あの時チューゴ君は、親戚のおじさんが
教えてくれた「ホウリンコウ」という体操をしていました。すると何故か
怒り出したパパに教本を取り上げられました。
そしてその後「ホウリンコウ」のおじさんは姿を見せていないのです。
そこまで考えたところで手紙のことを思い出し、開いてみました。
読み終えると、少しの間なにやら考え込み、家を飛び出して行きました。
「ダライ翁は確かイン堂の家に住んでたアルな……」
手紙には書きなぐったような字で、こう書いてありました。
『今日は、気をつかってくれてありがとう。あんたの立場も分かるけど、
おじさんの強引さは好きになれない。でも、あんたが本当に自分の考えで
行動できるようになったら、中華アパートに住んでやっても、いいよ』

ttp://www1.u-netsurf.ne.jp/~TIBET/cnd02.htm
ttp://tanakanews.com/990809taiwan.htm
ttp://www.sanin-chuo.co.jp/ronsetu/2001/04/21.html
ttp://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/china/file63.htm
ttp://www2.big.or.jp/~yabuki/doc/mri9205.htm
ttp://kazankai.searchina.ne.jp/publishing/toa/2001_09/taidoko/07.html
ttp://www.interq.or.jp/red/rodo/bulletin/bn/0011/china.html
ttp://www.officerei.com/echie_magazine/article/world/world1_horinko_020809.htm
アサヒマンセー派及び嫌チューゴ派及びアメリー×タイワン派の諸兄、スマソ。
ではご意見ご批判お待ちしております。

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