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第1934話
無銘仁 ◆uXEheIeILY
投稿日: 04/07/18 02:13 ID:RgY1JPlG
「果てしなき闘争 第七章」
アメリーの野郎にいきなり呼びつけられた俺様は、
地球町のド真ん中で巨大な岩の柱を見せられた。
あの野郎、その頂上から花火で俺様たちを攻撃しようとしているらしい。
平和利用などときれいごとほざいてるが、なに本心は自分が番長になりたい
だけに決まってらあ。俺様がこれから華麗にその野望を阻止するってわけよ。
へへ、そうすりゃヤツの子分どもも俺様になびくだろうぜ。
俺様をただでかいガキだと思ってるのもいるだろうが、とんでもねえ。
親父ゆずりの器用さでアメリーより先にロケットをつくりあげたんだぜ。
そいつを持って、まだ誰も登っていない岩山の下へ行ったわけだ。
コースをそれたりして何基か失っちまったけど、とにかく最後の一基がうまいこと
頂上にとどいた。よく見ると頂上には大木がそびえてんだ。
どうもそこにひっかかったらしく、ロープから確かな手ごたえを感じた。
俺様はロープをつかみ、ハーケンを打ち込んで崖をよじ登り始めた。
手がかりがあるのだから登るのはたやすい。学校のろくぼく並に簡単だぜ。
ただちょいと頭がふらつく。おやつがわりのウォッカが回ったんかもな。
スイスイと調子よくいってたんだが、頂上まであと数メートルに迫ったとき、
はるか下界から立ちのぼる殺気が俺様の頬をかすめたような気がした。
そっと下をのぞくと、アメリーが間抜け面して見上げてやがった。
いまさら来たって遅いだろうによ。俺様はアメリーを無視し、
堂々と地球町の最高点を踏みしめてやった。
けど、よく考えるとまだまだだ。この木のてっぺんが本当の頂点ってことになる。
喧嘩に使うならここでも十分だが、アメリーの野郎もいずれ来ることだ。
そうなったらもう、役に立つ立たないの問題じゃねえ。番長としてのメンツだ。
俺様は意地でもてっぺんのそのまたてっぺんを目指さ……おっと危ねえや。
足が思うように動かねえな。疲れたからか、さっき突っかけたからか?
それに耳鳴りもしてやがる。まずいな、少し休もう。
アメリーの尻が見える。大木が一本、天に向かって伸びている。
ここは、どこだ。
あっ。ここは岩山の頂上だ。しまった、俺様は寝ちまったのか。
跳ね起きたがときすでに遅し。アメリーは木のてっぺんにいた。
「よお、お目覚めかい
」
「くそっ、貴様いつの間に……」
「言ったろ。最後に勝つのはいつも俺だってな。
基礎体力の向上を怠ったお前の負けさ」
しょうがねえや。今からでもやつを引きずり下ろして半殺しに……。
俺様はあわてて木を登りだした。
「おい、お前が登ってくると俺が下りられないだろ」
「うるせえや、これはお前と俺様の、番長の座を賭けた男の決戦だ」
「お前なんか初めから相手にしてないっての」
なおも挑発を続けるアメリーに、温和な俺様も目を血走らせていたに違いない。
もう数十センチというところで、手を滑らせてバランスを崩してしまった。
「お、おい。危ないぞ」
アメリーが俺様の方へ手を出した。だがアメリーに助けてもらったりすると
立場がなくなる。とっさに反対の手で枝をつかみ、すんでのところでこらえた。
すると今度はアメリーが今の動きでバランスを崩し、こちらへ落ちてきた。
「うわっ待ておいこらちょっと」
「オーマイガーッ」
二人はもんどりうって墜落した。アメリーの実になんともこう間の抜けた
悲鳴が聞こえたとたん、俺様は意識を失った。
かすかな物音に目を覚ますと、真っ白な寝台に横たわっていた。
隣にはアメリーの姿がある。二人とも運び込まれたらしい。
あんなところから落ちて生きているとは……。
自分に足がついているかどうか、恐る恐る確認していると、
コクレン先生が病室に入ってきた。
「セキジュージ先生から連絡をいただいて様子を見に来ました。
四、五日入院すれば治るということで、まずはほっとしましたが。
いけませんよ、ご両親や先生方に心配をおかけしては。
君たちが無理をすると、たくさんの人を悲しませるんだからね」
アメリーはそうかもしれねえ。けど、俺様の親父はそんな柄じゃねえよ。
たとえ俺様が一万メートルの崖の上から落ちたって、
仕事を休んで見舞いになんか来る男じゃねえからな。
「先生。僕の父は地球町で一番広い土地を開拓した男です。僕も父のように、
未開の地を、誰も足を踏み入れたことのない場所を、開拓したいんです。
父は何者をも恐れない勇気をもっていました。だから僕も……」
アメリー、お前、たまにはいいこと言うじゃんか。少し感動しちまったよ。
「いいですかアメリー君。君のお父さんは立派な人でしたが、開拓の犠牲となって
クーロイ君のお父さんたち、その他多くの人が苦しみました。
私はそれを責めるつもりはありません。君のお父さんは有能だったからです。
しかし、有能な者が無能な者を押しのける時代はもう終わりました。
君が今回発揮したのは本当の勇気ではなく、蛮勇というものです。
これからはみんなが協力してうんぬんかんぬん……」
「ちぇっ。つまらん話」
おいアメリー。少しは真面目に聞けよ。俺様でさえ聞いてるのに。
俺様はひとりで感動したり怒ったりしていた。(つづく)
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