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第2101話 シュタイナー 投稿日: 05/01/06 01:32:46 ID:7k/lHkDn

「私の征く途、星の途」

 私には双子の弟がいました。大和という名前です。
 でも大和は、第二次町内大喧嘩の時、私と喧嘩別れしてしまいました。
ちょうど、ゲルマッハ君とアーリアちゃんのようにです。
 それから私たちはずっと喧嘩をしていました。ホッカイドウの間で、ベトナ
ちゃんの家で、イラ君の家で(最もこの時は、被害を被ったのはアメリー君
だけでしたが)。
 そして遂に私たちは、再びホッカイドウの間で、決着をつけることになりま
した。本来ならアメリー君が助太刀してくれてもよさそうなものですが、彼は
大和に花火を打ち込まれ、大怪我を負ってしまいました。武士は、サヨック
おじさんと戦っています。
 ちなみに、大和を手助けするはずのロシアノビッチ君も動けません。彼は
家が破産してそれどころではないのです。
 私たちの勝負はあっさりと付きました。アメリー君の下で犬を訓練し、船を
作っていた私は、いつの間にか大和より随分強くなっていたのです。これ
は、ゲルマッハ君とアーリアちゃんも同じでしたね。
 そして、大和は今、私の家にいます。ゲルマン家と同じように、兄弟仲良く
暮らしています。

「と、いう夢を見たんだけど」
 公園でニホンちゃんは、親友のアーリアちゃんとタイワンちゃんに、今朝見た夢のことを話していました。
「へぇ。それで、その夢はそこで終わり?」
「いや、もう少し続きがあるの?」
「どんなのだ? 聞かせてくれ」
 アーリアちゃんが、面白そうに催促した。ニホンちゃんはうんと頷く。
「その後ね、私が作ったペットボトルロケットを星空の下で発射して、そこで夢が覚めたの」
「夜空の下でペットボトルロケットかぁ。なんだかロマンチックね」
「ああ。ニホンらしい」
 アーリアちゃんとタイワンちゃんはしきりに頷く。ニホンちゃんはそれを見てニ
コニコした後、不思議そうな顔をして何気なしに言った。
「でも、何であんな夢を見たんだろう?」
 その言葉に、アーリアちゃんはピクリと耳を動かした。
「なに、簡単だ。私には理由が解るぞ」
「え! そうなの? どんな理由?」
 ニホンちゃんが訊くと、アーリアちゃんはコホンと咳払いをして、自信たっぷり
に言った。
「つまり、ニホンが見た夢の自分の位置関係は、現実にいるニホンの憧れる……いた、むしろ
同化を望んでいる、つまり一緒になりたいと思っている者に酷似した位置関係になっているは
ずだ。夢とはそういうものだからな。そしてその酷似している者だが……当然私だ。家が二つ
に分かれて、最後に一つになったんだからな。結論だ。つまりニホンは私と……っ!!」
 アーリアちゃんは途中で言葉に詰まった。
「ど、どうしたの、アーリアちゃん!」
 ニホンちゃんが慌てて訊く。
「いや、問題は無い」
 アーリアちゃんはそうクールに答えた後、隣のタイワンちゃんを睨みつける。タイワンちゃんは
知らん顔をした。が、その足は確りとアーリアちゃんの足を踏みつけていた。

「夢って言うのはね、現実逃避の意味もあるのよ」
 突然、タイワンちゃんが言った。アーリアちゃんとニホンちゃんは驚いてそっち
を見た。
「ど、どういうこと?」
「だから、ニホンちゃんが見た夢は、今の現実から逃避する目的もあるんじゃな
いかと思ってね」
「面白そうな話だな」
 タイワンちゃんの話に、アーリアちゃんも興味を持ったようだ。ニホンちゃんが
そうであることは言うまでも無い。
「つまり、今の現実の辛さを、ニホンは無意識のうちに感じ、それの回避を夢の中
で行ったということだな」
「そういうこと」
 タイワンちゃんはアーリアちゃんに頷いた。
「え? それってつまり、私は辛い思いをしてるから、体の方が勝手に夢の中で拒
否反応をしたってこと?」
 聞く人が聞けば首をかしげるような難しい言葉でニホンちゃんは言った。しかし、
成績の良いアーリアちゃんとタイワンちゃんには言葉のニュアンスが適切に伝わ
ったようだった。二人はにこりとして首肯したからだ。
「ふぅん。なるほど。あれ?」
 ニホンちゃんは納得した表情をした後、誰ともなく言った。
「じゃあ、私の感じてる現実の辛さってなんだろう?」
 ニホンちゃんがいうと、アーリアちゃんとタイワンちゃんは驚いたような呆れたよう
な、それでいてどこか温かみのある表情をする。
「それは、なぁ」
「それは、ねぇ」
 二人は目配せをした。ニホンちゃんはますます不思議そうな顔をする。
 彼の声が聞こえてきたのは、ちょうどその時だった。
「ニホン〜、ウリは謝罪と賠償を……」

 ごめんなさい。世界情勢とは全く関係ないです。
 某有名遅筆作家の作品を元に、ちょっとした小話を書いてみました。

 あと、一応主張しておきますが、私は熱血君という人とは別人なのであしからず。

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