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第2162話 無銘仁 ◆uXEheIeILY 投稿日: 05/02/18 08:36:08 ID:rOUZz3mM
 「はだかの王さま」

 むかしむかしある国に、ごはんをすこししか食べないのに、
たるのように太っている王さまがいました。
王さまはたいへんよくのふかい人で、
わがままを言っては大臣や人々をこまらせておりました。
でも、王さまをすきな人もたくさんいました。
この国はとなりの国とせんそうをしていましたが、
王さまがかつやくしたおかげでせんそうはおわりました。
だから、みんな王さまをそんけいしていたのです。
それに王さまにさからうとしけいにされてしまうので、
みんなこわがって王さまの言うとおりにしていました。
 あるとき、となりの国からペ天使がやってきました。
ペ天使とは、ペンをもつ天使のことです。
王さまはとなりの国がきらいだったのですが、
ペ天使はめがねのにあう、天使のようにかわいい女の子
だったので、あまりいじわるなことはしませんでした。
ある日、王さまがいつものようにわがままを言っていると、
ペ天使が王さまのおしろをたずねてきました。
「わたしの国は王さまの国とせんそうをしたこともあるのに、
こんなにやさしくしてもらえてかんげきしました。
お礼にわたしのしたてたようふくをさしあげましょう」
ペ天使はりょう手をさし出しました。
ところが、ようふくなんてどこにもありません。
「おい、ようふくなどどこにもないではないか」
王さまはじぶんがばかにされたとおもっておこりました。
「とんでもない。ここにきちんとございます。
じつは、このようふくはとくべつな布をつかっているので、
りこうな人には見えますが、ばかには見えないのです」
ペ天使は王さまのふくをぬがせると、じぶんの手に
もっているようふくをきせるようなかっこうをしました。
王さまは目をこらしましたが、どうしてもようふくは見えません。
でも、ばかだと言われるのがいやで、うそをつきました。
「おお、そうであったか。もちろん、わしには見えているぞ。
おい大臣、このふくはにあっておるかな」
王さまはようふくをきるふりをしながらたずねました。
大臣もほんとうは見えていませんでしたが、
ばかだと言われるのがいやだったのでうそをつきました。
「もちろんですとも王さま。たいへんよくおにあいですぞ」
 王さまのよろこぶようすを見て、ペ天使は
「人々にあたらしいようふくを見せてあげたらいかがでしょう」
と、町へ出ていくことをすすめました。
王さまもほんとうはようふくが見えていなかったので、
だれかに「王さまは、はだかだ」と言われたらどうしようと
こわくなりました。
でもすぐに、そんなことを言うやつはくびをきってしまおうと
かんがえなおして、ようふくを見せに町へいくことにしました。
 町に出ると、王さまの国の人たちは口をそろえて
「すばらしいようふくですね、王さま」
「いだいな王さまに、よくおにあいですよ」
と、王さまのきているはずのようふくをほめちぎりました。
となりの国からきていた王さまをそんけいする学者も、
「この世の物とはおもえないようなうつくしさです。
わたしはこのようすを本にしてわたしの国につたえます」
と、王さまのすがたにかんどうしたようでした。
ところがそのとき、二人についてきた小さな男の子が、
「王さまは、はだかだ」
と、大ごえでさけんだのです。王さまはかおをまっ赤にして
おこりましたが、となりの国の人をしけいにすることは
できないので、男の子をにらみつけました。
「こら、きみはなにを言うんだね。あのみごとなようふくが
見えないとは、さてはきみはばかだな」
学者はおおあわてで男の子をしかりつけましたが、
男の子のおねえさんもおなじことを言いました。
「わたしも王さまははだかだとおもうな」
さあ、今までがまんしていた王さまの国の人々が、
口々に王さまのわる口を言いだしました。
「やっぱり王さまは、はだかだったのね」
「ほら見てみろ、あのでべそを」
「王さまはぶたのように大きなおなかをしているけれど、
まい日なにを食べているのかな」
王さまとペ天使と学者ははずかしくなって、
いちもくさんににげだしましたとさ。
 こんなにひどい目にあったのに、それからも王さまの
わがままはちっともなおりませんでした。
ペ天使と学者は、今でもうそを言いつづけているそうです。
めでたしめでたし。

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