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第2273話 黄 色 い リ ボ ン  ◆JBaU1YC3sE 投稿日: 2005/06/16(木) 11:18:07 ID:3lRLXJPR
 「 クールなバランサー 」
 地球町にも夏がやってきました。
「ふう、暑いなあ」
 ニホンちゃんが汗を拭いていると、
 一人の女の子がジュースを2本持って近寄ってきました。
 これはお久しぶり、アイスランドちゃん、通称まふゆちゃんです。
「ニホンちゃん、良かったら飲む?」
「ありがとうまふゆちゃん、今丁度飲みたかったんだ〜。わっ冷たーい!」
「ねえ、ニホンちゃんもお隣さんのことで大変だね」
「え、何が?」
 ニホンちゃん、どの問題を言われたのかわかりませんでした。
「ほら勝手にお庭に入ってきておいて、謝らない人たちのことよ。
 でも大丈夫、こういうことは人に貸しを作っている家の勝ちよ」
 そう言うとまふゆちゃんは、まだロシアノビッチ君が元気で、
 マル教のボスだったころのことを話し始めました。
 
 その頃、まふゆちゃんの家とエリザベスちゃんの家の間にあるリンゴの木の事で、
 両家はケンカしそうな雰囲気になってしまいました。
「ここのりんごの木を見つけたのはまふゆのご先祖様だもん!
 もう他所の人は採りにこないで!りんごの木はうちのだもん!」
「わたくしに向かって縄張り争いとはいい度胸ですわね」
 冷ややかに言うエリザベスちゃん、何故か今日は番犬を連れてきています。
 一方まふゆちゃんは、ケンカは全く出来ないのです。番犬も飼っていません。
 まふゆちゃんのうちにアメリー家の駐車場と防犯カメラがあるくらいです。
「強いからって横暴はやめてよ!じゃあ私があなた達と組んでいる意味って何なの?」
「強い家に守られているって事ですわ。そこをよく弁えていただかないと」
「弱いからって泣き寝入りさせられる位なら、無理にあなた達と組まなくても・・・」
( まずいわ!・・・でも弱気は禁物・・・ )エリザベスちゃんは沈黙しました。
 するとゲルマッハ君がエリザベスちゃんに近寄りました。
「な、なあエリザベス、まふゆちゃんの家はうちも昔狙っていた一等地なんだ。
 あそこが味方じゃなくなるとアメリーが僕達を助けに来られなくなるかも・・・」
(この堅物、何故それを口に出すのよ!)
 思わずゲルマッハくんを睨み付けるエリザベスちゃん。
 一方まふゆちゃんはアメリー君の手を取って目を潤ませました。
「ねえアメリー君、私はみんなと仲間だと思っているから駐車場も貸しているのよ。
 私って仲間じゃなくて付録なの?」
(アメリーに言うなんて!昔の我が家なら人の言うことなんか・・・)
 唇を噛むエリザベスちゃんの耳に、アメリー君の陽気な声が。
「そんなことはないさ。まふゆちゃんは大切な仲間だよ、な!ベス」
「まふゆ嬉しい!アメリー君ありがとう」
「くっ・・・」エリザベスちゃんはうつむきました。
 そこへアメリー君が近寄り、彼女の髪をなでながら優しく諭します。
「なあベス、わかっているだろう、俺がお前をどんなに大事に思っているか。
 ただ、俺がリーダーとしてマル教からみんなを守るためには・・、な、
 鋭いお前ならわかってくれるよな、ベス」
「こ、この私が、戦わずしてこんな屈辱・・・」
「一番助けたいお前のためにも言うんだよ。
 ここで我慢しても俺との付き合いで後悔はさせないぜ」
 そういうと、エリザベスちゃんのあごに手をやって顔を上げさせました。
 だけどエリザベスちゃんは眼をそむけ、ぎゅっと結んだ唇を震わせています。
「わ、わたくし今日はもう帰るわ」エリザベスちゃんは体を離しました。
「じゃあ送るよ」
「一人にして!」そう言って、靴音も高く立ち去りました。
 かける言葉もなく見送るアメリー君とゲルマッハ君。2人の後ろでまふゆちゃんが
 可愛い舌を出していたことに気付いた人はいませんでした―――。

「―――――あの時のベスの顔ったら、忘れられないわ!
 あんな顔させたのニッテイさんと私だけかも。すごいでしょ!」
「ダメだよまふゆちゃん、そんなこと大声で言っちゃあ」
 大笑いしかねないまふゆちゃんの口に、そっと人差し指を当てるニホンちゃん。
「わかってるわよ。あの時だって私、侮辱は一切しなかったわ。
 自分の貢献を主張して、私の存在価値を相手が自分から気づくようにしたのよ。
 ただ反発するだけじゃ、捨てられるか、差し押さえられるかで終わるわ。
 その辺は相手よりお行儀良くしていないとね。信用が揉め事の武器にもなるのよ」
「やっぱり親しき仲にも礼儀あり、だね」
「ニホンちゃん、ちょっと違うわ。親しき仲にも揉め事はあるわ。
 そんな相手に動いてもらうために、礼儀を守ったという実績を作るのよ」
 その時、2人の少し後ろで動く人影が。またカンコ君?
 いや、チョゴリちゃんじゃありませんか。足音を立てず、静かに離れていきます。
( オッパー、いい話聞いたニダ!待ってるニダ! )
 そんなチョゴリちゃんに気付かずに、2人は話を続けました。
「それにね、ニホンちゃん、私にこんなことが出来たのは、家の立地がいいからよ。
 これがカンコみたいに、小道沿いにあって壁一つでお隣りが入ってこられる家なら
 人を天秤にかけるなんて自殺行為だけどね。
 ニホンちゃんの家は、カンコ君とチュウゴ君の家を通行止めにできる位置にあるもの。
 何かあった時には有利よ」
「ふーん・・・」ニホンちゃんは驚きました。
 番犬がいなくても成り立っている家、という夢のような状態のまふゆちゃんが、
 その裏でこんな冷め切った計算をしていたなんて・・・
「武士にも話してみようっと」
 その日の夕方、
 夕焼け空の下で、仲のよさそうな兄妹が、買い物袋を持って歩いています。
 カンコ君とチョゴリちゃんがお買い物から帰ってきたようです。
「いやあ、チョゴリ、今日はいい話を聞かせてもらったニダ。いい子ニダね〜」
「明日からアメリーさん達としっかりお願いニダ」
「ニホンとはもう話したニダよ。お前に聞いてからすぐに」
「ええ!言った通りに話してくれたニカ?
 相手よりも礼儀正しく、貢献をやんわり気付かせるニダよ?」
「わかっているニダ。ウリナラのお蔭でニホンがチュウゴ家から守られて初めて
 今の財産があること、家族全員の命の恩人も同然であることを説いて聞かせたニダ」
「いつもみたいに、じゃないニカ?嫌な顔されなかったニカ?」
「心配性ニダね〜。ちゃんと頷いていたニダよ」
「それ本心からニカ?」
「疑り深いニダね、そこにウヨもいたけど何も言わなかったニダ。
 初めてニダよ、こんなこと。まふゆの知恵はパクリ甲斐があるニダ」
「信じていいニカ?」
 カンコ君はチョゴリちゃんの頭を撫でながらやさしく言いました。
「お前のオッパーを信じるニダよ。このことをオモニに話したら
 奮発して高い肉を買って来いって言われたニダ。
 オモニもウリも、お前を誇りに思っているニダよ」
「オッパー、ありがとうニダ」
 チョゴリちゃん、はにかんで顔を赤らめます。話しているうちに2人は家に着きました。
「オモニー、ただいまー!肉買って来たニダよー!」

   おしまい

解説 解説 投稿日: 2005/06/16(木) 11:45:19 ID:3lRLXJPR
時期を逸した漁業ネタです。実在のバランサー・アイスランドのタラ戦争を掛けました。
NATOの中のアイスランド
http://tosei.hp.infoseek.co.jp/toseig3-20040719-001.html
EU非加盟国 ここのページ1番下にアイスランド略史があります。
http://plaza.rakuten.co.jp/artaxerxes/5010
地図で見るアイスランド
http://www.watanabegumi.co.jp/authorspage/dnames/arcticmap.html
九鬼唯さんお世話になりました。まふゆちゃん、可愛い名前ですね。
北欧外交は示唆に富みますが、あんまり出てないですね。
私が書くとみんな小悪魔になりそう。盗み聞きも私は使いすぎ…新境地を開拓します。

以前読者が「ニホンちゃんを読んでいると韓国にもバイキンマン的な愛情を感じる、
憎めなくなる」と書いていましたが、捏造家としても同感です。
ただ今回は書いているうちにこの二人が心配で悲しくなりました。

Karekiさんに褒められてこのオチにしたのではないのですが、(ホントニダ)
他国の類例を日韓に置き換えて、と言う手は長くなりますねw
しかし青風さんやab−proさんより先に考え始めたのに・・・orz

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