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第2345話
青風 ◆BlueWmNwYU
投稿日: 2005/09/23(金) 04:37:23 ID:BP0OlyAD
「空想特撮シリーズ ウルトラニホン 第6話 あの雲を撃て!」
最初に街の空にそれが現れた時、誰も気に留める者は無かった。
しかし、2日経ち、3日過ぎるうちにだんだんと肉感的な色彩を強めて
いったその雲は、上空の一点から動かずに僅かずつ成長を続けた。
そしてついに人々は防衛組織に調査を依頼するに至った。
だが、その時には全てが遅かったのだ。
「畜生!」
呪詛の呻きと共に隊長、アメリーが横転した特殊装甲車レオパルド3から
這い出した時には、”雲”はその暴虐の限りを尽くし遠く海上に去った後
だった。眼前に広がるその惨禍。街の外れとは云え目立った建築物の多く
が雲の吐き出した衝撃波に半壊し、暴力的とも云える程の豪雨
に半場水没している。恐らく被害者も皆無ではないだろう。自分の出身地区
を呆然と眺める彼の表情は苦い。文字通りに完敗であった。
「組成や密度が余りにも普通の雨雲と似ていたんだ」
作戦室で他の隊員達を前に怪獣の分析結果を説明するカナディアン。
「で、各種センサーには異常が判らなかった。で、その構造だが」
此処で正面大型ディスプレイにその構造が映し出される。
「御覧の通り、ジェットエンジンを縦にしたような構造でね。
これを通じて上昇気流を取り込み、逆に暴風を生み出しもする。
この大きな気泡に電荷された気体を溜込む事で蓄電してるようだな。
エネルギー源はどうやらふたつ。ひとつは太陽熱。もう一つが地上からの
上昇気流。どうもあの地区から立ち上る上昇気流がお好みだったようだぞ」
「で、この生きた気象兵器を始末する手段はあるのか?」
睨むような目つきのまま質問をぶつけるアメリー。
「そう焦らないでくれよ。多少の仕掛けくらい用意してあるさ」
溜息と共に応えるカナディアンであった。
今や”ウラヌス”と名付けられたその”雲”は、海上にあって更にその
大きさを増し、既に直径数百メートル程度に成長していた。
まるでウルトライーグルが象にまとわりつくハエにしか見えない。
「まるででかいクラゲだな」
上空を旋回するウルトライーグルから怪物の姿を見下ろし
ながらアメリーは呟いた。今回の作戦は洋上でけりをつけるつもりで居る。
そう、2度と街に被害を出す訳には行かないのだ。
「作戦第一段階、開始!」
怪物の上空を旋回していた4機のウルトライーグルが4つの気泡目掛けて
特殊溶剤入り弾頭付きのロケット弾をありったけ撃ち込んだ。
後は溶剤が中の気体と反応して水になり、揚力を失った怪物が海上に
落下するのを待つだけだ。
そう、作戦はまったくうまくいって居るように見えた。
もだえ苦しむ怪物は、徐々にその高度を下げ海面に触れるまで降下した。
そして海面に触れたその瞬間、海からの豊富な上昇気流に触れて怪物は
一瞬で息を吹き返した。辺りの風景を歪ませる衝撃波の雄叫びをあげなが
ら、周囲を飛び交うウルトライーグルに超高圧空気を打ち出す怪物。それ
を寸前でかわされ、その盲目の怒りを最も近い街へ向ける。そして思いも
かけない高速で海上を滑りはじめたのだった。
「くっ、別働隊、砲撃開始!」
アメリーの指示と同時に始まるレールキャノンの砲撃。
甲高い雄叫びと共に何発もの砲弾が命中するが、元々水に近い組成の怪物に
は一向にダメージを与えない。見る間に街の港湾部に近づく怪物。
衝撃波を街に叩き付けようと、その口吻を街に向けた。
また、負けるのか!
唇を強く噛むアメリー。惨劇は繰り返されようとしていた。
その瞬間、閃光が全てを支配した。
閃光の消えた後に、港を背にして立つ身長40メートルの巨人。それでも
怪物の巨大さの前では子供のようにすら見える。
巨人に叩付けられる衝撃波。両掌を前に付きだし、光の盾を繰り出し防ぐ。
びりびりとその腕が震えるのが見える。それでも防ぎきれずに巻き起こる
大波。木の葉のように翻弄される船舶。街を洗う津波。
海上を滑るように走り、怪物に両手の”光の剣”で斬りつける巨人。
しかし、やはり怪物の巨体はびくともしない。
「くそ、彼女でも駄目か! いや、まてよ。奴の組成はほとんどが水だ」
有る事を思いつき、彼はネーデルとの通信回線を開いた。
「おい、俺の合図で怪物の座標に全発電衛星からの高周波を叩付けろ!」
「待ってくれよ!街の近くだぞ。そりゃ重大な規約違反だ。第一・・」
言い募るネーデルをよそに機体を旋回させ、戦い続ける巨人と怪物の間を
くぐり抜ける。彼の必死の目と巨人の金色の目が一瞬合う。
「頼む、少しだけ引いてくれ」
軽く頷くと、後ろへ飛びすさる巨人。
「今だァ!」
数秒後、身体の中央部からぶくぶくと沸き立ち、そして身体全体が
白く濁り、歪み、縮みはじめる怪物。
時を逃がさず、巨人は左掌から引き抜いた光の槍を叩付ける。
怪物は、一瞬で光に浸食され、そして光の粒子となり飛び散った。
*************************************************************
「『な、衛星に嘘座標を短時間で信じさせるのがどんなに大変か判るか?』
作戦室でもネーデルのアメリーへの不満は止まない。
『済まなかったな』
『おいおい、謝ったよ。あの隊長さんが』
アメリーの素直な言葉を聞いて心底驚くネーデル。
『ま、色々あったからな。奴にも』
苦笑しながら、歩み去るアメリーを見送るカナディアン。
『これでとっても素直ないい子の隊長さんになったりしてね』
ニホンの一言で、ようやくいつもの明るさを取り戻す隊員達であった。
・・っと。やれやれ、ようやく今回の分が終わったぞ」
サヨックさんがノートパソコンから目を上げました。
ここは地球町の一角にある喫茶店「Peaces」です。
昼間、ほとんどお客さんの入らない時間帯を利用して
いつもの通り副業の(ほとんど本業になりつつありますが)
子供向け番組のシナリオ書きに精を出していたのです。
しばらく達成感に浸るサヨックさんです。
が、ふと傍らの青い指輪に語りかけます。
「オマエも持ち主が居なくなって長いなぁ」
サヨックさんは知りません。
そっくりな指輪を自分の姪、ニホンちゃんが持っている事を。
そして、その指輪はまるで生きているかの様に輝きを放っている事を。
解説
青風 ◆BlueWmNwYU
投稿日: 2005/09/23(金) 04:51:33 ID:BP0OlyAD
解説であったりこじつけであったり
さて、今回のオハナシの元ネタでありますが、
最近のアメリカのハリケーンと日本の台風です。
カトリーヌの被害はご存じの通り悲惨を極めるわけですが、
日本に関しては通常の台風被害(それでも大きかったのですが)
で住んだ訳です。
今回は日本の徹底したインフラ整備が功を奏した格好になりました。
それが、ウルトラニホンの活躍、っと云う訳です。
で、もう一つ元ネタがありまして。
大分前にアメリカで人工降雨剤を撒いてハリケーンを
消滅させようとした事があったそうです。
で、結果。
タイフーンが進路を曲げて近くの都市を直撃。
それ以来、この種の実験がある種タブーになったそうです。
そして再度近づくタイフーン。
大したことにならない事を祈ります。
何しろ、現実には巨大ヒーローは現れないのですから。
では、出来る限り近いうちに、また。
ノシ
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