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第2349話 処女作? 投稿日: 2005/09/28(水) 10:41:45 ID:XcMg9olp
〜神の御名の元に〜


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 今は昔。それは『今』にまで続く長いお話……。

 当時、クローイ君の家は貧乏でした。
 それはヨーロッパ通りの人々から見れば、というだけであり。クローイ君のお祖父さん達は別になんら不満を感じていませんでした。
 しかし、裸同然で暮らす彼らを見て『可哀相』と、大きなお世話精神を発揮した人がいました。
 博愛をモットーとするヨハネ君のお祖父さんである、センキョーシさんです。
 十字架が大好きな彼は、クローイ君達に救いの手を差し伸べました。
 教会を作り、そこで子供達に字や算数を教え始めました。
 クローイ君のお祖父さんはとても喜び、そして感謝しました。
 新たな知識を教えてくれるセンキョーシさんに、小さいクローイ君も「もっともっと」と勉強に励みました。
 しかし、彼らの蜜月は続きませんでした。
 センキョーシさんが信じる神と、クローイ君のお祖父さん達が信じる神は違うのです。
「センキョーシさん。センキョーシさんの話では、キリストさまを信じないと天国に行けないという。なら、私の父や、父の父はどうなるのだ? 父や、父の父はキリストさまを知らないのだが」
 センキョーシさんは少し考えましたが「残念ですが、その人たちは天国にいけないでしょう」とはっきりと言いました。
 偽る事など出来ません。それは彼自身と彼の神が、彼に課した戒律なのですから。
「ならば、私はキリストさまを信じない」
 お祖父さんは、キリストを蔑ろにしようとしたわけではありません。ただ、地獄であろうと、祖先と同じところに行くべきだと考えただけなのです。
 しかし、センキョーシさんはとても怒ってしまいました。
 彼の中では、救いの手を撥ね付けられるほど、悲しく悔しく、そして侮辱的なことはないのです。
 センキョーシさんは、彼らが知らなかった鉄の器具で彼らの小さな祠を壊して回りました。
(2/3)

 何かに取り付かれたようなセンキョーシさんでしたが、クローイ君の泣き声で我に返りました。
 我に返っても、それはもう遅いのです。
 クローイ君の涙や、お祖父さんの悲しそうな表情を見て、彼は愕然としてしまいました。
 決して、彼らを悲しませるつもりなど無かったのに……。
「あらあら、楽しそうな事をしてますわね」
 そこへ、エリザベスのお婆様、ビクトリアさんが現れました。
 いいえ、ビクトリアさんだけではありません。いつの間にか、ヨーロッパ通りの面々が集まっていました。
「センキョーシ、あなたの出番はここで終わり。あとはわたくし達の時間ですわ」
 ビクトリアさんの発言と同時に、クローイ君たちがヨーロッパ通りの人々に連れて行かれてしまいました。
 後に残るのは、労働力にならないと判断された赤子と年寄り。そして、うな垂れているセンキョーシさんだけでした。
 老人達の視線と赤子の泣き声。それらに耐え切れなくなったのか、センキョーシさんはその場を後にしました。
 センキョーシさんは自分の部屋に篭り懺悔し続けましたが、彼の神は何も答えてくれません。
 彼はもう一度、アフリカ町に向かいました。
 クローイ君たちはセンキョーシさんを追い出しこそしませんでしたが、迎え入れることもしませんでした。
 彼らの親族兄弟を連れて行った人々と同じ、白い肌をセンキョーシさんが持っていたからです。
 センキョーシさんは謝りませんし許しを請うこともしませんでしたが、働きました。
 連れて行かれた彼らの代わりにはなれないけれど、荒れた土地を耕し、汗と泥で汚れても働き続けました。
 朝から晩まで働いた所為で、彼の白い肌は真っ黒になってしまいました。
(3/3)

 書物を読むことが多かったセンキョーシさんは、厳しい環境化での肉体労働で身体を壊してしまいました。
 しかし、彼はそれこそ自分に相応しい罰だと思っていました。
 許しを得れないのであれば、罰を受けるのが当然だと考えていたし、教えられたからです。
「先生ー。はいっていい〜?」
 そんな彼の元に、一人の少年が入ってきました。
 その少年はかつて彼の教え子であり、そして、少し成長したクローイ君でした。
「無茶したら駄目だよ、先生。みんな心配してるよー」
 そう言いながらクローイ君は、彼が捕ってきたという肉や、町のみんなから持たされた品々を広げ始めます。
「お婆ちゃんの薬湯も持ってきたよ、これですぐに元気になるね」
「何故です…?」
「んー、何が?」
 許されざる事をした私に、何故にこう優しいのか。センキョーシさんは困惑しましたが、それ以上にクローイ君はそんなセンキョーシさんがわかりませんでした。
 わからなかったので、とりあえず、自分の考えを伝える事にしました。
「『困っている人がいたら、助けなさい』って、先生が教えてくれたんじゃないか」
「しかし、私は、君のご家族を……」
「うん……あの時は悲しかったし、恨みもしたけど。先生の所為じゃないって、わかってるよ」
 クローイ君は、悲しみを引きずりながらも、笑顔で答えました。
「先生。元気になったら、また勉強教えてね。弟達はまだ字がかけないし、僕もまだ割り算できないし」
 それをきっかけに「となりのお婆ちゃんの腰が悪くなった」とか「そこの子は、もう字が読めるになった」など、笑顔で町の皆の話をし始めました。
「っと、あまり長居しちゃいけないよね。早く元気になってねー」
 一通りの話をし終わったのか、クローイ君は自分の家に帰っていきました。
 そして、センキョーシさんはその背中に涙しました。
「神よ、私はどうなってもかまいません。彼らに、祝福を。あの子等の明日を、どうか、どうかお守りください」
 お見舞いの品に囲まれ、彼は泣きながら祈りを捧げました。
(蛇足)

 センキョーシさんのお祈りは、神に聞き入れられたどうかはわかりません。
 その後も、クローイ君やクローイ君の親族は大変な目に会いますし……。
 それでも彼は、祈り、働きました。
 学校を建て、病院を建て、皆の為に働き続けました。

 それは、今に続く昔のお話……。


以下解説?

オチ? ありません(きっぱり
まだ終わっていない物語ですから、そして今回は(も?)ソースも無いです
というか、ありすぎw
一言でキリスト教といっても、宗派や派閥によって宣教方法が大きく違いますしね
上記のセンキョーシさんの行動は、有名だったり、わかりやすいものをごちゃ混ぜにしたものです
黒人宣教師により改宗した人が多いという、宣教マニュアル『現地人を使えの章』は「日焼け」で表現してみました

興味がある方は、お調べになる事をお勧めします
いい話から笑える話から、むかつくお話まで多数存在しています

個人に対する忌避はいいけど、人種差別はちっとなぁ と考える処女作?でした

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