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第2472話 北極星 投稿日: 2006/01/01(日) 01:11:45 ID:blgnRNzg
『ヘボナイス大晦日2005』

ごい〜〜ん。
地球町に大晦日の除夜の鐘が響きました。108個の煩悩を祓うといわれる鐘の音は重低音となって
町民全員の身体の芯に沁みました。

ごい〜〜ん。
「えいっ」
炬燵のニホンちゃんは金鎚で豚の貯金箱を割りました。
1円玉、10円玉、100円玉……。貯金箱いっぱいの無数の硬貨が下敷きにした新聞紙に山とあふれ
ました。硬貨の山にところどころ1,000円札やもっと高額の紙幣が混じっていて、思ったより多い
と嬉しい誤算になりました。
2005年のニホンちゃんはお小遣いが絶好調でした。年の前半はこれまで通りだったのに、夏頃から
急にベースアップしてほくほくの年末を迎えたのです。
「ああどうしよう。こんなに遣いきれないわ。こんなにお金持ちになっちゃってどうしよう?」
浮かれながら硬貨を数えている姉を、ウヨ君は炬燵の向かい側から心配そうな表情でたしなめま
した。
「姉さん、浮かれるのもいいけど、オレから借金してることを忘れないでくれよ?」
「あらこんなところに10,000円札が♪ いつの間にまぎれていたのかしら〜♪」
弟の忠告がいまいち聞こえないニホンちゃんでした。
ごい〜〜ん。
「ふうっ……」
暖炉の前でアメリー君は溜め息をつきました。
安楽椅子に長い脚を伸ばし、クリスタルのグラスにオン・ザ・ロックを鳴らせるのはいいのです
が、グラスの中身がコークなのが珠に瑕でした。
「イラクとの喧嘩は片がついたけど、まだペルシャがいるしキッチョムも一度シメなきゃいけ
ないし、来年も忙しそうだなァ」
金髪の少年はふたたび深い溜め息をつきました。2005年はハリケーンのせいで邸が浸水したり、
強引な言動がクラスで不評を買ったり、多事多端な年でした。
来年こそ事情が好転するといいなあ……。
あいまいな期待にぼんやりと思いを馳せ、コークを口に運ぶアメリー君でした。
ごい〜〜ん。
「アイゴーーッ!!」
カンコ君は絶叫しました。
理科の宿題を捏造した罰として、全教科の教科書を100回づつ書き取ることを冬休みの宿題として
厳命されてしまった彼に年末の安らぎなどありません。
終業式以来、勉強机にかじりついてひたすら鉛筆を走らせる毎日が続いていました。
だいたい2005年はまったくついていなかったのです。
バランサー宣言をブチあげたらアメリー君に軽くシメられるわ、チューゴ君にこれまで以上にパシ
らされるわ、ニホンちゃんは謝罪と賠償をしてくれないわ……。
挙句に年の瀬になって捏造騒動でした。
こうなったのもなにもかも、全部ニホンちゃんが悪いのです。
「アイゴーーッ! 来年こそニホンに謝罪と賠償をさせてやるニダッ」
無駄な決意を披露しながら、キムチパワーで教科書を書き取りしまくるカンコ君でした。

ごい〜〜ん。
2006年がニホンちゃんにとってよりよき年でありますように。



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