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第2546話 U-33 ◆JOCEixq6zU 投稿日: 2006/07/08(土) 08:29:03 ID:VRp0bOBw
『年年歳歳花相似たり』

「ちょっと、カンコ君、ひとの鉛筆とらないでよ」
「ふーんだ。これはもともとウリのものだーい」
「じゃあカンコ君の鉛筆に、なんで三菱鉛筆って書いてあるのよ」
「えーっと、これは三星の誤植」
「ええい、またへらず口をっ……て、ちょっとちょっとチューゴ君、ひとがカンコ君ともめてるどさくさまぎれ
に何してるの」
「はぁ、何のことかなー」
 チューゴ君は、とぼけた顔でニホンちゃんの下敷きに伸ばしていた手を引っ込めました。

「まったくどいつもこいつも、油断も隙もあったもんじゃないわ」
 夜中のロケット花火騒動のおかげで寝不足のニホンちゃん。学校に行けば行ったで、この騒ぎです。

 疲れ果てたニホンちゃんが家に帰ると、塾から封筒が届いていました。
 開けてみると、夏期講習の案内といっしょに「本塾創立者のことば」と書かれた小冊子が出てきました。
「どんなことが書かれてるんだろう。『がんばって勉強すればいいことがある』なんて書いてあるのかな」
 そう思って読み始めたニホンちゃんの目が、あるページで釘付けになりました。

 そこには、こう書かれていたのです。
『ただお隣だからという理由だけで特別な感情を持って接してはならないのだ。
悪友の悪事を見逃す者は、共に悪名を逃れ得ない。私は気持ちにおいてはチューゴ家やカンコ家の
悪友と絶交するものである』

 ニホンちゃんは、思いました。
「これ、今日私が日記に書こうと思ってたこととまるで同じじゃない。120年以上前にこのユキチ先生
っていう人が書いてたことと」

(元ネタ)
isa訳『福澤諭吉の「脱亜論」』
http://plaza.rakuten.co.jp/sasoriza/21017

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