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第57話 ナナッシィ 投稿日: 2003/05/20(火) 00:08 ID:9F5LW7dQ
まな板を叩く小気味のよい音色が響き、空腹を促すような香りが周囲に漂います。
包丁を振るうのはニホンママ。そう、ここは日ノ本家の台所。
ニホンママはちょうど、晩御飯の準備をしているようです。
そして鼻歌混じりに玉葱を刻むその背中を、戸口からコソーリと見つめるのはニホンちゃん。
暫し、考え込む仕草を見せた後、意を決したようにママに声をかけました。

「ね、ねえ、お母さ・・・・」
「ダメ」
「・・・・まだ何も言ってないよぅ・・・・」
「お小遣いの値上げはできません。家にはそんな余裕はありません」

何でもお見通しママに、ニホンちゃんはぶう〜!とばかりに唇を尖がらせました。
しかし、ニホンちゃんもそう簡単には引き下がれません。
振り返りもせずに包丁を動かし続けるママにすがり付きます。

「で、でもね、このデフレ不況を乗り切るにはGDPの大半を占める個人消費の回復が必要なわけで、
 そのためには、お小遣いの値上げにより冷え込んだ消費マインドに対するサプライズを・・・」
「さくら、意味分かって言ってる? 微妙に使いまわされたセリフの気がするけど?」

やっぱりお見通しママに、ニホンちゃん今度はちょっぴり頬を染めてしまいました。
さて、理屈で説得できなければ、ニホンちゃんも力技で押すしかありません。
ママの背中にしがみ付いて、クイクイと服を引っ張ります。

「もー、とにかくお小遣い値上げしてよ〜してよ〜してよ〜し〜て〜よ〜」

    『ガツン!』

まな板と包丁がたてた重く響く音に、ニホンちゃんはビクリとして手を離しそのまま硬直します。
にんじんの頭が弧を描いてゆっくりと床に落ち、音もなく小さく跳ね、転がり、
テーブルの足にぶつかって止まりました。
その間に、コップ一杯分の冷や汗かいたニホンちゃんに、ママは笑みを浮かべながら言いました。

「・・・じゃあ学年が上がるごとに値上げをしましょ、それでいいわね?
 それでも、どうしてもすぐにお金がほしいのなら、ママのお手伝いしてくれるかしら?」
「・・・はい」
頼まれたお使いを済まし、買い物かごを前後に揺らしながらニホンちゃんは家路につきました。
(働かざる者食うべからずって事かな・・・あ〜あ進級するまで地道にお手伝いするしかないのかな〜
 それにしても・・・・なぜかその日が永遠に来ないような気がするのは一体なんでだろう・・・・・・・?)
ぼんやり考え事をしながら玄関の前に着くと、お隣からの聞きなれた怒声が耳に入ってきます。
毎度の事ですが、何かと思ってひょいとお隣の玄関先を覗き込むと、

「ニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダァァァァァァァ!!!!!
 お小遣い上げてくれなきゃニダニダニダニダニダニダニダニダァァァァァァァ!!!!!」
「カンコ! こんな事いい加減止めるニダ! ダメなものはダメニダ!」
「ニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダ
 ニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダ
 ニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダ
 ニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダニダ!!!!!!!!!!」
「・・・・・・・・・」

カンコ君は駄々っ子の様に両手両足をじたばたさせながら、躍動的にグルグル高速回転していました。
時折癇癪球のようにバチバチ弾けるわ、壁にぶつかってそこら中に跳ね回るわで手におえません。
一方、ニホンママと同じく毅然とカンコ君の要求を突っぱねていたカンコオモニは、
その様子を唖然としながら見ているニホンちゃんに気がつきました。

「(ゲゲッ、日ノ本の娘ニダ・・・まずい、これではウリナラの恥丸々晒しageニダ!)
 カ、カンコ、わかったニダ! お小遣いの値上げするからもう止めるハセヨ!」
「本当ニカ!? マンセー! これはウリの粘り勝ちニダネ! ウリマンセー!!」

ガックリと肩を落とすカンコオモニと、嬉々とした表情を浮かべ小躍りするカンコ君。
そして、家に入っていく二人の姿を呆然としながら眺めるニホンちゃん。

(・・・・さすがに私には、あそこまではできないなぁ・・・・)
その晩、カンコ家の食卓では・・・

アボジ「オモニ、なじぇ今日のおかずはキムチだけニダ?」
オモニ「・・・・カンコが玄関で転がりまわっていたから、買い物に行けなかったニダ。
    ついでに言えば、カンコの小遣いを上げるから、これからは食卓も淋しくなるハセヨ」
アボジ「・・・・カンコ・・・どういうことニカ?・・・・」
カンコ「ア、アボジ・・・は、話せばわかるニダ・・・」
アボジ「問答無用ニダ! こっち来るスミダ!」
カンコ「アイゴ〜!! これは全部ニホンの陰謀ニダ〜〜〜!!」

一方、日ノ本家の食卓では・・・

ジミン「な、なぁ、母さん・・・発泡酒は・・・・」
    『ガツン!』
ジミン「ごめんなさい」
ニホン(・・・・・頑張れ、ニホンのお父さん!)

おしまい

(解説)

今回のお話は日本の春闘とデモ大好き・集団行動大好きかの国の貨物ストライキです。

春闘一斉回答、定昇維持が大勢
 ttp://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2003031202763
韓国の貨物スト、政府妥協で終息へ
 ttp://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2003051503130
(韓国マスコミの社説)
 ttp://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/05/15/20030515000098.html
 ttp://japanese.joins.com/html/2003/0515/20030515204302100.html

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