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第89話  投稿日: 2003/07/17(木) 23:47 ID:bZRIt2Os
>>795
>t.A.T.u.≠ロシア

 最近、ロシアノビッチ君の売る少女漫画が大人気です。
 家族が多いので誰が書いているのかは不明だそうですが
その不思議さの相まって少女向けなのに地球町の子供達の間でも
男女の区別を問わず評判の的でした。
 最初はもちろんロシアノビッチ家の内輪で流行していたのですが
徐々にユーロ班に広まっていきいつしか大ブレイク。
 その波がついにニホン家にも到達したのでした。
 縁側でウヨ君が正座をして一冊の漫画を読んでいます。
「いいなぁ刺青少女帯。カッコいいなぁ」
もちろんソレは巷で噂のロシアノビッチ家発行の少女漫画。
ニホンちゃんの描く美少女画風にも似た二人のアイドル歌手が主人公の、
ちょっと危ないストーリーです。
「武士、何読んでるの?」
 何処からともなく現われたニホンちゃんがウヨ君に声を掛けます。
「Σね、姉さん!」
 慌てて隠そうとしますが遅いです。彼の手から手品のように本を取るニホンちゃん。
「あ〜〜〜〜こんなの読んでたんだぁ」
 彼女とて流行に敏感なお年頃。どんな内容かも既にリサーチ済みです。
 顔を真っ赤にして本を取り戻すウヨ君。
「学校でみんな読んでいるじゃないか!」
「ふ〜〜ん」
 悪戯っぽく笑うニホンちゃん、何かを言おうとしたその時です。
「そんなアナタ方に吉報です!」
 庭の茂みに隠れていたアサヒちゃんがおもむろにそこから出てきました。
「お、お前いつから居たんだよ」
「武士が袋綴じを開けるとこから」
「うぐぐぐぐ」
 あっさり答えるアサヒちゃんに悶絶するウヨ君。代わってニホンちゃんが聞きます。
「それで何が吉報なの?」
「それはね」
 と言葉を切ってアサヒちゃん、目一杯嬉しそうに言います。
「刺青少女帯の作家さんが日ノ本家に来てくれる事になりました!」
「「ええ〜〜〜!?」」
 驚く二人。
「壁新聞企画特約としてロシアノビッチさんに仲介してもらいました」
 と、アサヒちゃんは何処からともなく一枚の書類を取り出します。
『 刺青少女帯の作者サイン会に関わる契約書 』
 そう書いてあるそれは紛れもなく日ノ本家でサイン会を行うというものです。
二人の女の子のラフ画が添えられており、信憑性に箔をつけてます。
「あの覆面作家が秘密のベールを破ってついに?」
「さすがに覆面のまま、っていう約束だけど」
 一寸残念そうに言うアサヒちゃん。
「でも間違いなく逢えるのね。本いっぱい用意してサインしてもらわなくっちゃ」
「姉さん、いいチャンスだからスケブもお願いしてみようよ」
「うん。楽しみだね〜」
 嬉しそうに話す二人にアサヒちゃんも思わずにっこり。
何だかんだあっても、こういうイベントは大好きなのです。しかし。

 そのサイン会当日の会場です。
「ねぇ、アサヒちゃん。いつになったら作家さん来るの?」
「そうだそうだ」
  刺青命と書かれた鉢巻を締めて襷にメガホン、謎の半被まで装備した
ニホンちゃんやウヨ君を先頭に日ノ本家の面々がロシアノビッチ君だけが
席についた折り畳み机があります。
「どういう事よ、マネジャー!」
 ロシアノビッチ君にアサヒちゃんが詰め寄ります。
「えれぇ気分屋なんだ。仕方無いだろ」
「じゃあサイン会はどうなるのよ」
「無期延期だろうな」
「「「ええ〜〜〜〜〜」」」
「というワケでオレ様は帰る。邪魔したな」
 現金なものでお土産だけ持っていそいそと退席するロシアノビッチ君。
 二度と来るな! と叫びたかったアサヒちゃんですがそこは業界(?)人。
吹っ切れたようにサイン会場の後片付けを始めます。
「武士、邪魔よ。さっさとどいて頂戴」
「何だよ〜せっかく楽しみにしてたっていうのに」
 他の日ノ本家の面々もやる気も失せたとばかり三々五々。

 その頃、家に辿り着いたロシアノビッチ君は呟いたのでした。
「まさかオレ様がその作者なんて夢にも思ってないだろうな」
覆面作家として、今後の売上のためにもまだ顔を曝すワケには
いかないのです。
 特にゲルマッハ君やアーリアちゃん兄妹、それにエリザベスちゃんにバレた日には
しばらく陽の目も見れないでしょう。
「さて、次回作に取り掛かるとするか」

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