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第1話 名無し君@501話作者 投稿日: 2003/09/06(土) 00:29 ID:8sSvfAUU
「オモニ羅鬼の瑕」

「日ノ本家に謝罪と賠償を請求するニダ」
 またそれだ。
 この人は何度同じことを云うのだろう。
 娯しい時も、哀しい時も。
 憤った時も醒めた時も。
 この人は同じことを私に云う。
 嬉しいような哀しいような、そして困ったような、どこか縋るような悩ましげで淋しげな貌で。その顔はまた、私を蔑むようでもあり、嘲笑うようでもあり、憎むようでもあったのだけれども。

 ―――そもそもこの変な建物を訪問する契機になったのは、アサヒちゃんの付き添いとして、だけのはずだった。執拗とも言えるサヨックおじさんの説得に屈したのもある。
 訪れたのは軍服を着た男たちがひたすら残虐行為を行う人形でいっぱいの通称「拷問屋敷」。そこにはオモニと呼ばれる老婆が一人で住んでおり延々と彼女の話を聞かされる破目となったのだ。
 呼ばれた当人であるアサヒちゃんは昼寝を決め込み、仕方なくニホンちゃんが聞き役を勤めることになったのである。
「ニッテイに騙されて女子挺身隊にいれられ過酷な労働を強いられたニダ」 解らない。
 そんなことは解らない。
 同じようなことは何度か前にも聞かされた。その時は理解したような気分にもなった。
 しかし今の私には解らない。言葉が逃げていく―――
 元来自分は口下手なのだ。理路整然と説明しようとしてかえって意味が伝わらなくなってしまう。だから説明することを放棄して謝ってしまったほうが楽だ。
―――それが安易な選択であることを理解している。
「挺身隊にはニッテイの性奴隷という意味がカンコ家にはあって、そんな事実は無いのに蔑まれ多大な苦痛をこうむったニダ。だから日ノ本家に謝罪と賠償を請求するニダ」
 いや。
 違う。
 彼女は。
 間違っている。
 なぜかそう思った。
 
 こ の 人 の 論 旨 に は 瑕 が あ る 。

 そして、その瞬間、私は凡ての真相に到った。

解説 名無し君@501話作者 投稿日: 2003/09/06(土) 00:32 ID:8sSvfAUU
一応念のために書いておきますが。

この話にソースは存在しません。

そして、実在する小説はニホンちゃんおよび韓国関連とは一切関係ありません。
ただあのシーンを読んでふと思いついただけなのです。

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