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第58話
無銘仁 ◆EheIeILY
投稿日: 2004/02/09(月) 02:-9 ID:SrgIfMR2
「買い物上手」
ある日のことです。お母さんにおつかいを頼まれたニホンちゃんは、
近所のスーパーへやってきました。
「ええっと、キムチにカルビ……カンコくんが喜びそうなメニューだなぁ」
お母さんがテレビの某番組に影響されてカンコ家の食べ物に興味を
もったのを、ニホンちゃんは知りません。
「あとは、と。牛乳だけか。どれにしよっかな」
ひとくちに牛乳といっても、産地直送高級乳から激安100円乳まで色々
あるのです。お母さんは「牛乳を買ってきて」としか言いませんでしたから、
どれを買うかは自分で決めなければいけません。
「うーん、これなんかどうかなぁ。でもちょっと高いかも……やっぱり
健康にいいのが一番かなぁ。でもこっちはカルシウムが少ないし」
「やあニホンちゃん。何を迷ってんの」
そこへやってきたのはアメリーくんです。ニホンちゃんがわけを話すと、
なんだいそんな下らないことか、さっさと決めちゃえよと棚を一瞥、
5リットルの大瓶をひょいと持ち上げました。
「ねえアメリーくん、いくらなんでもそんなに大きいの飲みきれないよ」
「でもさ、大きいほうが安くていいだろ。ホームパーティーとかに使えるし。
それにこいつは味も濃くてうまいからな」
飄々とした様子でそう返すので、ニホンちゃんは目を白黒させています。
「うちは家族が飲めれば十分なんだけど……味も薄い方が好きだよ」
「だいたい牛乳くらいでいちいち悩んでたら何にもできないだろ。
ニホンちゃんは真面目で親切だけど、ちょっと陰気なのが珠に傷かな」
あんまりはっきり言われたので、さしものニホンちゃんも少し顔を
曇らせました。
「ボクはニホンちゃんのそういう控えめででしゃばらないところがいいと
思うんだけどなー」
どこから来たのか、色男のマカロニーノくんが話に割り込んできました。
ニホンちゃんがわけを話すと、なんだいそんな下らないことか、
そんなことより今から一緒に昼食でも……と口説きにかかりました。
「マカロニーノ、お前買い物に来たんじゃないのかよ」
「ボクのスケジュールに不可能の文字はないのさー」
やってらんねえよという顔でアメリーくんは立ち去りました。
邪魔者がいなくなって本格的に口説くかと思ったそのとき……
「じゃ、じゃあそろそろボクも用事があるから。またあしたねー」
いきなりそう告げると、逃げるように走っていってしまいました。
「どうしたんだろう。わたし何かへんなこと言ったのかなぁ」
ニホンちゃんは首をかしげました。
「おお、ニホンくん。これは奇遇、君もおつかいに来たのかい」
入れ替わりに、ゲルマッハくんが颯爽と現れました。ニホンちゃんは本来の
目的を思い出し、さっきまでの出来事を話しました。
「実に彼ららしい、単純な解決の仕方だな。あきれ返るよ。ここは牛乳を
よく飲む僕に任せてくれたまえ。牛乳選びで大切なのはいくつかあるが、
まずは食品成分表示を確認することだ。乳脂肪が過剰ではいけないが、
適量は含む必要がある。次に伝統的製法を守っているか。食品添加物など
論外だ。また紙パックなら再利用可能なものを使っているか」
一方的に演説口調で喋りまくるものですから、ニホンちゃんはすっかり
圧倒されています。
「あ、あの、でもそんなに色々考えると面倒だし……これなんてどう、ほら。
カルシウムも多いし、○キジルシだから安心だよね」
たどたどしい申し出をものともせず、ゲルマッハくんは叫び続けます。
「とんでもない。実物を確認するまでいかなる大企業の商品でも信用しない
ことだ。そういう点ではアジア地区は消費者意識が遅れているな。
早急な改善が必要だろう。そもそも――」
ニホンちゃんの笑顔がひきつりかかっているのに、鈍感なゲルマッハくんも
そろそろ気づきはじめました。
「いや失敬。少しばかり興奮してしまった。では僕はこの辺で失礼するよ。
続きはいずれじっくりと」
次に会うまでに忘れてくれればいいなと思った一秒後に、ゲルマッハくんに
限ってそれはありえないと気づき、暗澹とするニホンちゃんでした。
「あら、こんにちはニホンちゃん。ご機嫌いかが」
力いっぱい気品をただよわせながら、フランソワーズちゃんが
声をかけてきました。ニホンちゃんは少し迷いましたが、さっきまでの
出来事を話しました。
「そうでしたの。それにしてもゲルマッハはグルメには向きませんわねえ。
牛乳についてはあたくしも一家言ありましてよ。あたくしが選ぶならそう、
これなんてどうですかしら」
そう問いかけられて、ニホンちゃんはもじもじと言いにくそうにしています。
「あのね、フランソワーズちゃん、それ……」
「どうかなさいまして。食通のあたくしが選んで差し上げたというのに、
どこか気に入らないところでもありますの」
「ゲルマッハくんが薦めてくれたのと同じなの」
凍りつくような空気が二人をつつみました。フランソワーズちゃんはふっと
ため息を漏らすと、さっと踵を返しました。
「このあたくしが……そんなはずありませんわ……まさか……」
震える後姿に落胆の度合いが見て取れます。
「また出直して参りますわ。ごめんあそばせ」
消え入るような声でそう言い残すと、滑るように帰ってしまいました。
「アイヤー、ニホンも来てたアルか。今日はよく同級生に会う日アルよ」
いいかげんうんざりして、もう何でもいいから買っちゃえと思っていると、
今度はチューゴくんに出会いました。どうやらアメリーくんやマカロニーノくん
と出くわした後みたいですね。気は進みませんでしたが、一応さっきまでの
出来事を話してみました。
「ほほう。牛乳を飲むとは、ニホンは背を伸ばしたいアルか」
「んー、そういうわけでもないけどね」
「それに頭も良くなりたいアルか。カルシウム不足、深刻アルからね」
「カルシウムと頭の良さはさすがに関係ないんじゃ……」
かみあわない会話に、思わず苦笑してしまうニホンちゃん。
「朕もニホンのうち見習って飲もう思てるけど苦手アルよ。それでも最近
飲むようになてきたアルね」
「カルシウムはどうでもいいよ。どれを買ったらいいと思う、って聞いてるの」
答えを促すと、チューゴくんは胸を張って言いました。
「健康的の買うヨロシ。買うときは値切るの忘れちゃダメアルよ。ニホンは
お人よしだから言い値で買いそうで心配アル。とにかく値切って値切って
値切り倒してこその買い物アルからネ」
(それだけかい!)
「それじゃニホン、良い買い物楽しむといいアル。再見」
ニホンちゃんは途方に暮れてしまいました。
「アンニョーン、ニホン。こんな所で会うとは運命のトンへでつながれてるに
違いないニダ」
勝手につながれてしまったニホンちゃんには、反駁する余力もありません。
「あのねカンコくん、実はかれこれしかじか……ってわけなの」
半ば諦めつつ、それでも一応、これまでの経緯を説明してみました。
「ニホンは相変わらず下らないことで悩んでるニダね。注意することは一つ
だけしかないニダ。ただしこれを忘れるとヒジョーに大変スミダ」
「なになに、そんな簡単な方法があるなら教えてよ」
全然期待していなかったカンコくんから思わぬ情報が得られそうなので、
ニホンちゃんは身を乗り出して聞きました。
「今回は特別に教えてやるニダ。感謝するハセヨ。ウリナラ流買い物術の
極意、それは……ブランド物の朴李商品をつかまされないことニダ!」
次の日、カンコくんは学校を休みましたとさ。めでたしめでたし。
>>734
面白いネタありがd。即興で作ってみましたよ。だいぶ内容が変わってますが。
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(*^ー゜)b Good Job!!
(^_^) 並
( -_-) がんばりましょう
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