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第25話
熱血君 ◆x3A1GrPw
投稿日: 2004/06/14(月) 07:37 ID:97.BA19o
「金婚式」
今日は日之本家ではちょっとした記念日です。といってもそれを覚えている
人は限られていますが。
「さくら、そっちの用意はいい」
「うん、いいよお母さん」
ニホンちゃんがママさんのお手伝いをしています。パパさんやウヨ君も
一緒です。
見ればテーブルが用意されています。そしてその上にはちょっとした御馳走が。
テーブルの上座には二つの席が置かれています。ですがそこにはまだ誰も
いません。
「姉さん、これは何処?」
「武士、それはあっち」
何かのお祝いでしょうか。部屋中が飾られていきます。まるで結婚式のように。
「これでよし、あとは皆さんに来てもらうだけだな」
パパさんが笑顔で言いました。そして皆服を綺麗なものに着替えて
席に着きました。
やがて日之本家の人達が入って来ました。朝比奈家の人達以外は皆
来ています。
「皆揃ったようだね」
シシローおじさんがにこりと微笑んだ席を見渡しました。
「はい」
皆それに頷きました。そして大人はビール、子供達はジュースを
コップに入れました。
「それではニッテイさんとナデシコさんの結婚五十周年を祝って」
音頭はやっぱりシシローおじさんがとります。
「乾杯っ!」
皆コップを打ち合います。そしてまずは喉を潤しました。
「それにしてもニッテイさんとナデシコさんって早いうちに結婚
していたんだな」
「そうですね、そしてそこから私達が生まれて」
中にはニッテイさんとは直接血の?がりのない人達も大勢います。
けれど皆ニッテイさんを慕っています。
「フフフ」
それを見てウヨ君何だか嬉しそうです。
「武士、どうしたの?」
ニホンちゃんがそれを見て尋ねます。
「いや、お祖父さんとお祖母さんって皆に慕われていたんだなって。
今ここにいてそれがよくわかったよ」
「そうね。色々言われているけれどこれだけ多くの人達に今でも
慕われているのよね」
「そうだね。それは忘れちゃいけないね」
二人はそう言って微笑み合いました。皆二人の思い出話で花を
咲かせます。
「あの時のナデシコお祖母ちゃんの着物姿がねえ」
「地震の後のニッテイさんの頼もしかったこと」
かっての強くてそれでいて心優しかったニッテイさんとおしとやか
でそれでいて芯の強かったナデシコさんのことが皆の心に
甦ります。二人は既にこの世にはありませんが皆の心の中には
生きているようです。
やがて誰かが一枚の古いレコードを持って来ました。
「それは・・・・・・?」
もう聞けるのかどうかさえわからない程古いレコードです。
そもそもまだレコードが残っているなんて。皆驚いています。
「これはニッテイお祖父さんが結婚した時に記念に買った
レコードだよ。末永く幸せになるようにって」
そのレコードを持って来た人が答えました。
「そう、ニッテイさんらしいね」
「ええ、本当に」
皆何処となくニッテイさんらしいと思いました。意外と
繊細な人でありましたから。
「聴いてみる?何の曲かわからないけれど」
「けれど針のステレオも」
「あ、あったよ」
誰かが言いました。見ればニッテイさんの頃にあったような
古いラッパみたいなのが着いたプレーヤーです。所々錆びてます。
「動くかな」
皆恐る恐るレコードを置いて機械を動かしました。
「あ」
プレーヤーは意外にもすぐに動きました。レコードの音もよく
聞こえます。そこから流れてくる曲は。
「・・・・・・落ち着くね」
ゆったりとした旋律の中に優雅さを併せ持った曲でした。
何処となく年老いた夫婦を思わせるような、そうした演奏する
人の数も少なめな小さくまとまった曲でした。
「姉さん」
ウヨ君がそれを聴きながらニホンちゃんに声をかけました。
「何?」
「うん、この曲ってお祖父さんがお祖母さんに今日聴く為に
贈った曲なんじゃないかな」
ふと尋ねました。
「・・・・・・・・・」
ニホンちゃんは曲を聴きながら考えました。
「そうかもね。そうした風に聴こえるわ」
その曲は部屋中に響き渡っています。そしてそこにいる皆の
心にニッテイさん達のことを甦らせていました。
解説
熱血君 ◆x3A1GrPw
投稿日: 2004/06/14(月) 07:40 ID:97.BA19o
今回はソースなしです。ヒントはマリーの金婚式という曲から
です。最後の曲もそれです。
これはマリーがとある老貴族の夫婦の金婚式を祝福して贈った曲だそうです。
こんな曲。
ttp://www.mfukuda.com/media/media.htm
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