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第4話
どぜう
投稿日: 2004/04/16(金) 04:09 ID:LPazYLxw
ある日の夜、父さんが物置からブリキのロボットを出していた。
お世辞にも出来がいいとは云えない、そのブリキのロボットを手に、
父さんはなんだか考えているようだった。
僕が見ていることに気がついて、父さんは僕を呼んだ。
「武士、いい物を見せてやろう」
そう云いながら父さんは背中のゼンマイをきりきりと巻いた。
ブリキのロボットは両手を上げ、床の上を滑り出しながら
「ガオー!」と勇ましい声を出した。
「これは父さんが初めて買ってもらった贈り物だ」
優しい目をしながら、父さんがロボットが歩くのを僕は見ていた。
「…白黒の真空管の中に夜の街が映って、
そこにこいつが、『鉄人』が現れる。
僕ら子供は手をたたいて喜んだ。テレビの前に釘付けだったなあ」
「…」
「…いつか、こういうロボットを作ってみたい。
『鉄人』に直に触れてみたい。ずっと思ってたんだ」
ゼンマイが切れてきたのか、『鉄人』の動きが鈍っていた。
「…もう、僕には小さいな。この『鉄人』は」
そう云って、父さんは寂しそうに笑った。
だんだんと動きが遅くなって、ゆっくりと『鉄人』は動きをやめた。
「武士、これはお前にやろう」唐突に父さんがそう云った。
「え?」
「別に捨てちゃっても構わないぞ」勝手にそう云うと、
父さんは物置から出て行ってしまった。
物置の床に小さな『鉄人』が両手を上げて、ぽつんと立っていた。
捨てるのも可哀想だったから、僕は『鉄人』を手に取った。
「ガオー」
小さく『鉄人』が鳴いた。
解説
どぜう
投稿日: 2004/04/16(金) 04:18 ID:LPazYLxw
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