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第29話
青風 ◆BlueWmNwYU
投稿日: 2006/02/07(火) 01:07:13 ID:SBk8Xmue
「通るよ?」
「どうしてよ? 番犬が怪しい人に吼えなかったら意味無いようッ」
「だからぁ、さっきから、隣近所の人に吼えかけちゃ迷惑だって
って云ってるじゃない。それとも、そんなに近所の子が信用できない?」
「できないわ。ちっとも、まったく、全然ッできない」
今日も飽きることなく繰り返される、アサヒちゃんとニホンちゃんの
口喧嘩。周りの子も、既に風景の一部として気にも留めない遣り取りを、
ぼんやりと眺めているのが、ユーロ班のベルギー君です。
「俺も、番犬さえ居れば安全だ、そう信じてたんだよなぁ」
記憶の中に雄雄しい老犬、パトラッシュ。
玄関の前にどっしりと、守護神のように威厳を持ってたたずむその姿は、
ベルギー君のご自慢だったのです。彼らが来るまでは。
「おいベルギー。お前の庭、我ら兄妹が通路とするぞ」
完璧なる双璧。その片割れ、ゲルマッハ君は突然、宣言しました。
「ちょっと待てよ。突然やってきて、何を云ってんだ?」
ベルギー君が言うのも当然です。だって、彼はお家が引っ越してきて以来、
誰とも波風立たないよう上手にやってきたのですから。
「問答無用。我らが仇敵、フランソワの後背を扼すためだ」
もう一人の片割れ、呼吸する機能美、アーリアちゃんの背後には、
牙をむく猟犬の群れが控えていました。
立ちふさがるパトラッシュに猛然と襲い掛かる猟犬達。
パトラッシュも頑張りましたが、勝負はあっけなく付き、
鋼鉄の嵐が通り過ぎた後には、泣き崩れるベルギー君が残されました。
「今度こそ、今度こそ大丈夫だ」
あれから暫く経って、ようやくベルギー君は泣くことを止めました。
パトラッシュの怪我も癒えたし、丈夫な柵も出来ました。
それに、お友達、お隣のフランソワーズちゃんとも、いざとなったら
番犬を貸してくれるよう、お話をして有ります。
「来るなら来い! あの、忌々しい双子め!」
そんなことを思った矢先、
悪夢の騎士達は、本当にやってきてしまいました。
「ふん、性懲りも無く、またこんな老犬で刃向かう積りか」
無表情に鼻で笑うアーリアちゃん。
引き連れた番犬の数も増え、その自信には一分の隙も有りません。
「ちっくしょう、俺だって、この前の俺じゃねぇぞ!」
猛然と行進する鋼鉄の使者の群れに敢然と立ち向かうベルギー君。
しかし、終わってみると、頼みのフランソワーズちゃんの番犬共々、
老犬パトラッシュはまたもボロボロになっていました。
「あらァ、アメリーの奴と仲良いんでしょ? 怖いものなんて無いじゃん」
「なによぉ、いやらしい笑い。そんなんじゃないんだからぁ」
「イヤらしいのはアンタでしょ? なーにィ、目的抱えて男選んでさぁ」
ベルギー君が思い出に浸っている間にも、二人はまだ口喧嘩を続けて
居たようです。
「そうそう、友達って案外頼りにならないものだったっけ」
ベルギー君は、目じりに涙をにじませながら、現実に戻りました。
「ああん、面倒くさいご近所ばっかり。もう、引っ越したいよぉ」
粘るアサヒちゃんに、ついにニホンちゃんが音を上げたようです。
「ああ、それは良い手だなぁ」
ベルギー君は心の底から賛成しました。
解説
青風 ◆BlueWmNwYU
投稿日: 2006/02/07(火) 01:10:07 ID:SBk8Xmue
解説、かも?
ベルギー。1839年にオランダから独立したこの国は、
ドイツとフランスの間にあるという不幸な位置関係から、
2度、ドイツの一方的なフランス侵攻のための通路にされています。
1回目は第一次大戦時。1914年、永世中立国(非武装じゃ有りません)
で有ったにもかかわらず、フランスを叩く通り道にされました。
2回目は1939年、ドイツ軍はフランスの対仏防衛線マジノ線を迂回する
ため、やっぱり中立政策をとっていたベルギーをまたも縦断、
控えていたフランス軍を蹂躙しています。
まぁ、中立政策とか、善隣友好ってこういうモノだったりします、はい。
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