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第1353話 名無し君@お腹いっぱい 投稿日: 02/12/27 00:00 ID:IdbJpK2Q
ヤカン(1/6)

 既に暦は冬を過ぎ、厳しい冷え込みを予感させる朝。
 しかし、いまだ本格的な寒気は姿を見せず、太陽の上昇と共に春めいた陽気が空気を騒がせます。
 そんな季節でした。
「おはよう」
 二ホンちゃんはにこやかに朝の挨拶をします。
「おはよっ」
 元気よく返礼するのはタイワンちゃんでした。
 朝の登校時、よくある風景です。家を出たときは肌寒く感じた空気も歩いているうちに溶け去り、かえって厚着がうっとおしく感じるくらいでした。
 昨日みたテレビのこと、最近のアメリー君の様子、今日提出する宿題の話、交わす話題に不足はありません。
 その時です。不審な音を二ホンちゃんの耳は捉えました。

 …がらん

「ねえ、今変な音しなかった?」
「別にしなかったけど…」
ヤカン(2/6)

 …がらん、ごろん

「わ、本当に聞こえる」
「でしょう。なんの音かしら?」
 二ホンちゃんは秀麗な眉を顰め考え込みます。

 …がらん、ごろん、がらんがらん、ごろん?

「ゲゲゲの下駄の音よ!」
「う〜ん、もう少し金属質な感じだけど」

 徐々にその音は近付いてきます。朝とは思えないおどろしい雰囲気の中姿を現せたのは。
ヤカン(3/6)

「おはようニダ」
 それはカンコ君でした。しかし、下半身がヤカンになっています。金属質な音はこれが原因なんでしょう。
「一体どうしたのよ。そんなヤカンなんか」
「なんか気がついたら、すっぽりはまりこんでいたニダ」
 見ると、ヤカンの中に正座するような感じで足がすっぽりと入っています。
 それで二ホンちゃんは何を連想したのか思わず呟きました。
「足なんて物は飾りですよ、お偉いさんにはそれがわからんのです」
「この場合は『バルバス・バウ』の方がフォルム的に近いんじゃ…」
「でも、私は『ダブルカーブド・バウ』のが好きだけど」
 二人で微妙にマニアックでずれた会話を交わします。
 とんでもない異常事態なのに平然としているのは、生きてる異常が目の前に生活しているからでしょうか。彼ならば仕方がない。そう思わせる何かがあるのです。
「おっと、こんな所にいては遅刻してしまうニダ。急ぐニダ」
 三人はとりあえず学校に急ぐことにしました。
ヤカン(4/6)

 学校でも『まぁカンコのことだから』と、みんな平気な顔です。
 取り囲んで、わいわい言っています。
「どうやったらこんな事が出来るんだ?」
「さすがはカンコだな」
「そんなに褒められると照れるニダ」
 蔑んだような視線には気がつきません。
「でも、クラスメートにヤカンを履いた人物がいては教室の美観を損ねますわ」
 優雅に顎に手をおいてフランソワーズちゃんが言いました。
「脱げるようなら最初から脱いでるニダ」
「あら、そうですか。それならば私達が手伝って差し上げましょうか」
 気がつくとフランソワーズちゃんの右手にはドリルが装備されてみました。それも、円錐形のコミカルな物ではなく円筒形のマジホンドリルです。
ttp://www.jsce.or.jp/what/hakase/tunnel/10/images/img01_l.gif
「不本意ながら、協力しますわ」
 同じようにドリルを装備したエリザベスちゃんが、すごみのある笑みを浮かべていました。愛と友情のツープラトン攻撃です。因みにそれは二ホンちゃんがコーディネートした、ユーロトンネル掘削用のドリルでした。
「そ、それは…さすがに不味いのでは」
 一同の顔から血の気が引きます。
ヤカン(5/6)

「それなら、ボクにまかせなよ」
 奇妙なポーズを決めながら登場したのはマカロニーノ君でした。
「こんなこともあろうかと、用意してあったラヴ・オイルで滑りを良くすれば」
「何で小学生がそんなの持ってるのよ」
「フフ、子猫ちゃん。それは野暮な質問だよ」
 とりあえず疑問は横においておくのが賢明なやり方です。
 ヤカンとカンコ君の間に潤滑油をたらし、引っ張ってみました。
「うんとこしょ。どっこいしょ」
 ところがカンコ君はなかなか抜けません。
「みんなで力をあわせようよ」
 クラスのみんなで繋がって引っ張ってみました。
「「うんとこしょ。どっこいしょ」」
 カンコ君はじりじりと動き始めます。
「よし、もう少しだ」
「「うんとこしょ。どっこいしょ」」
「なんかこんなシチュエーション、どこかで読んだような」
「「うんとこしょ。どっこいしょ」」
 ようやくカンコ君は抜けました。
ヤカン(6/6)

「カサハムニダ。助かったニダ」
 さすがのカンコ君も今回はちょっと殊勝な態度を見せています。
「もう二度とこんなことは犯さないニダ。反省しないイルボンと違ってウリはきちんと反省するニダよ」
「ふ〜ん、それで具体的にどうするの?」
「今後ヤカンにはちゃんと蓋をするニダ」
 やっぱりカンコはずれているよなぁ、と脱力する一同でした。

    とっぴんぱらりんのぷう。



ソースはしばらく前に放映していた「まるみえ」の韓国珍ニュースから。
子供がヤカンにはまって抜けなくなったのをレスキュー隊員が潤滑油を使って抜くという事件です。

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