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第2152話
青風: ◆BlueWmNwYU
投稿日: 05/02/11 17:22:36 ID:jBi4HAgj
「空想特撮シリーズ ウルトラニホン 第3話 虚空の眼」
それは怒りに歪んだ目の様に見えた。
衛星軌道に浮かんだそれは、突然その虹彩を鈍く光らせると、まるで憎悪を
叩付けるかの様に白い光を見下ろす大地に注いだ。途上に浮かんでいた雲に
丸い穴を開け地表に到達した光は、その熱で地表に十数メートルの穴を穿っ
た。突然出現した噴火口の様な穴と一瞬にしてガラス質に変化した周囲の地
形。一瞬で周囲はまさに”地獄の様な”光景となった。
此処はコアリッション作戦室。
突然衛星軌道上に確認された未知の”怪獣”によるオージー地区への衛星軌
道からの攻撃。今はその”怪獣”に対して対策会議中である。
「人への被害は無かったダスが、放牧中の羊達が偉い事になったダスよ」
オージー隊員が顔をしかめて云います。
「ああ、お前さんの出身地だったな。で、その無慈悲な羊殺しの犯人だが」
カナディアン隊員が大型スクリーンを示し、説明を続ける。
「この目玉、”イビルアイ”がどうやら犯人らしい」
画面に映る直径約百メートルに広がったアメーバ。そして中央の”目”。
「こいつが衛星軌道から地表を大口径レーザーで狙い撃ちした訳だ。
この周囲に広がる部分で太陽光線を集め、この目で其れを蓄積し、レーザー
へ変換し、撃つ。究極の生体兵器だな」
「つまり、片づけるならその”目”が、太陽光線を吸収できない夜の部分に
いる時と言う訳だな。現在位置は?」
アメリー隊長がラスカ隊員に確認する。
「えっと、”イビルアイ”は約12時間の周回軌道に乗っています。
今は夜の部分を周回中で、昼の部分へ出るのにあと約5時間、かな」
「判った。カナディアンはニホン、ウヨを連れて衛星軌道上の目を昼の部分
へ出る前に殲滅。一片たりとも地表へ落とすな。ラスカは本部で連絡及びサ
ポート。他の者は俺と一緒に地上からの攻撃準備。もし直接攻撃による殲滅
が失敗した時に備え、地上からの殲滅準備を行う。以上!」
「何で羊を撃ったのかなぁ?他に撃つものは幾らもあったのに」
ニホン隊員が誰とは無しに呟いた。此処は既に成層圏。ウルトライーグルに
大気圏外航行用ブースターを付けて飛行中である。敵怪獣との邂逅まであと
10数分程度。
「さぁね。多分メタンガス排出量でも観測して、其処を目掛けて撃ったんだ
ろう。地表の生物群を関知する目安にしてたとか」
カナディアンが応える。
何故、地表の生物を攻撃するんだろう。
そうニホンが問い直す前にイビルアイが見えてきた。
「成長している!ラスカの報告より何倍も大きいぞ!」
ウヨの驚愕の声が伝わる。円盤状に広がった巨大なアメーバは、
今や直径数百メートルほど有りそうだ。
「成長する程奴のレーザーの威力は増す。昼の側に出る前に叩くぞ。
上に出て3方向から攻撃。決して止まるな、きっと何か仕掛けてくる」
カナディアンの指示で3方向から旋回しながら”目”を攻撃する各機。
レーザー砲が鈍い振動を上げ、その光輝を”目”に叩込む。
3本の光輝が命中すると一瞬だけその大きさを変える真っ赤な虹彩。
「駄目だ、光学系の攻撃にはびくともしない。危険だが停止姿勢から
のレールガンでの物理的攻撃に切り替えるぞ!距離を取れよ。」
カナディアンの指示の下、各機レールキャノンのエネルギー充填に入る。
充填を示すゲージが徐々にリミッター限度まで上がっていく。
「充填限界まであと5秒、4,3,2,1,充填完了、発射!」
派手な反動と共に荷電された砲弾が機首から虹彩へ直進し、着弾する。
同時に巨大な円盤状の表面全体が一斉に沸騰した様に沸き立ち、
数百本の巨大な触手が一斉にニホン機に向けて殺到した。
「姉さん!」ウヨの叫びが狭いコクピットに響く。
触手がニホン機を捕らえようとしたその瞬間、閃光が周囲を支配した。
光が凝縮すると、青と銀の巨人となった。
一瞬で出現した両手の剣で触手を切り払う巨人。
少女の姿をした其れは次々と襲い来る触手を全てその半ばから切断した。
真空を通じて伝わる”目”の原始的な怒り。
虹彩全体が拡大したかと思うとそこからレーザーの光を”巨人”に向けて
叩付ける。と、同時に両手の平をを前に突きだした”彼女”。
眼前に広がる半透明の丸い”盾”がレーザー光を遮蔽する。
そのまま”目”へ接近すると、その虹彩の真ん中に降り立つ”彼女”。
両手の平の間から光の槍を出現させ、そのまま垂直に虹彩へ突き立てる。
一瞬で同心円状に怪物を浸食する光。光と共に消滅する怪物。
左手を高く掲げる彼女。
再び閃光が周囲を支配し、其れが消えた時には彼女の姿も無かった。
ニホンが愛機の中で目を覚ますと、センサーが奇妙な物体の存在を彼女に
告げた。丁度怪獣が存在していた辺りだ。モニター上で拡大するとどうやら
内部から破裂した円筒形の物体の様である。その表面に有る識別記号は--
「アメリー地区の実験衛星!」
ニホンが驚愕したその次の瞬間、衛星はいきなり蒸発してしまった。
事態が飲み込めないままの彼女の耳に対話モードでの通信が入る。
「・・驚かせて済まないね、ニホンさん。」
壮年の男の声だ。
「衛星は地上から君たちの隊長に指示を出して始末させて貰ったよ。
貴女の活躍にはいつも本当に感謝している。
だからお礼の意味でも真実をお教えしようと思う。
あの怪獣は衛星の中で条件付けをしていた実験生物だったのだ。
多少の条件付けは出来たのだが、そのうち手に余る様になった。
それで廃棄したつもりだった。
が、あれは生き残り、成長してこの騒ぎだ。申し訳ない・・」
通信は切れた。
「あれは暴走した兵器だったんだ。だから地表の生物を攻撃したんだ。
羊を撃ったんじゃない、生きてるモノなら何でも撃ったんだ・・」
そう独り語るニホンだった。
「もし、死んだのが羊じゃなかったらどうなったんだろう。
今の声はそれでも真実を語っただろうか?」
語られる事実と語られない真実。
語られない真実というモノに自分も決して無関係ではないらしい。
ニホンは軽く頭を振って取り留めのない事柄を頭から追い出すと、
此処から見ると宝石の様に美しい自分の故郷を眺めた。
「おーい、元気かい?」
両手を振って大きな声で叫ぶと地表へ帰投する彼女だった。
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久しぶりにニホンちゃんは屋根の上に上ってみました。
梯子を持ち出した事はもちろんアサヒちゃんには内緒です。
うーん、いい天気だなぁ。
ごろん、と寝転がる彼女の傍に、後から上ってきたウヨ君が話しかけます。
「姉さん、またスカート穿いて此処ですかぁ?」
煙となんとかは、と言いかけるウヨ君の頭を軽く小突くと立ち上がり、
空に向けて両手を振るニホンちゃんです。
「おーい、私は元気だよ!」
「一体誰に手を振ってるの?」
「あそこよ、あそこ。見えないの?」
ニホンちゃんは空の一点を指さします。
もちろん、其処には青空が広がっているだけでした。
解説
青風: ◆BlueWmNwYU
投稿日: 05/02/11 17:35:52 ID:jBi4HAgj
後書き、云い訳、その他諸々
どうもお久しぶりです。
約一週間開けてしまいました清風でございます。
さて、今回の元ネタらしきモノは
1.米国初の宇宙ステーション「スカイラブ」
が地表落下の際に大西洋に落とすつもりが
オージー君の処へ落としてしまいますた。
2.オージー君のうちの羊のゲップから出る
メタンガスは地球温暖化の原因にカウントされる程
洒落になりません。
の2点です。
本当に其れがネタか、と言われると苦しいです。
どちらかというと、プラネテスの最終回見て
宇宙モノを書きたいと思っただけでもあります。
ちなみに、1週間空いたのはアク禁騒ぎに巻き込まれた
せいです。
作品を読んだ方、
石を投げないでください。
いや、投げる代りに感想を下さい。
第一宇宙速度で首を長くしてお待ちしております。
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(*^ー゜)b Good Job!!
(^_^) 並
( -_-) がんばりましょう
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