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第2182話 ab-pro 投稿日: 05/03/08 00:28:00 ID:RCYT1gC6
 それは、まだアメリー君が小学校低学年の頃のお話です。
 「わぁー、アタリだ!
 ダディー、ありがとう!!」
 パパから貰ったバースデイ・プレゼントの包装紙を元気よく破り捨てた
アメリー君は、中から出てきた今流行の最先端家庭用TVゲーム機を目の
当たりにして、嬉しさいっぱいに父親に抱きつきました。
 「どうだ、いいだろう!
 こんな凄い遊びを家で出来るのは、地球町の中でも我が家だけだぞ!」
 息子に喜ばれて大いに胸を張るアメリーパパ。アタリと名付けたTVゲ
ーム機はパパの自信作でした。地球町でも最先端のTVゲーム機の制作に
成功し、ライバルなどどこにもいない独占市場。
 それに、驚異的な早さで次々と発表されるゲームソフトは、お客を飽き
させる事なく、更にアタリの発売数を伸ばす原動力となっていました。
 「ダディー。どうやってあんなに一杯ゲームソフト作っているの?」
 「簡単なことだ。みんなにゲームの作り方を公開しているからさ。
 作りたいと思う人がいたら誰でも、面白いゲームを作る事が出来る。そ
うすればソフトを作った人も儲かるし、アタリも更に売れて儲かる。ゲー
ムをプレイする人たちも飽きることがない。
 みんな万々歳だ!」
 そう言って豪快に笑うアメリーパパとアメリー君。
 まさに我が世の春でした。
 それから暫くたったある日。
 「ダディー、外に遊びに行ってくるね!」
 「・・・アメリー、アタリでもう遊ばないのかい?」
 「飽きた。行ってくるね!」
 それだけ言うと、凍り付いたアメリーパパを残して、元気よく外へ飛び出
した幼き日のアメリー君。
 ようやく気を取り直したアメリーパパは、慌ててアメリー君の子供部屋に
駆け込むと、猛然とアタリを探し始めました。この間まではテレビのすぐそ
ばを定位置にしていたアタリは、いつの間にか山と積まれたソフトと一緒に
押し入れの中に放り込まれていました。
 「・・なぜだ!」
 沢山あるソフト。これだけあれば絶対飽きることがないはずなのに。
 アメリーパパは、とりあえずアタリをテレビに繋いで電源を入れてみまし
た。そして再び唖然とすることになったのです。
 「・・・なんなんだ、この点と線は?」
 パパの見つめる先には、いかにも安っぽい点と線で描かれたキャラクター
と思われるものが、ピコピコと味気なく動いているだけでした。次のソフトを
入れてみても同じような画面です。
 その時です。どたどたとパパの部下の男が転がり込んできました!
 「社長! アタリ本体やソフトが大量に売れ残って返品の山です!このま
までは大変です!」
 「どういう事だ?!」
 「それが、どうも粗悪なソフトが大量に出回ったおかげで、ソフトだけでな
くアタリ本体までお客様に愛想を尽かされたみたいです。
 と、とにかく、すぐにオフィスへ!」
 
 こうして、一時の栄華を誇ったアタリは、あっさりと朽ち果ててしまいました。
 ですが、こうした状況を注意深く見守っていた人がいました。ニホンちゃんのママです。
 「・・なるほどね。大変勉強になったは^^」
 そして時は過ぎて・・・

 「アメリー。またニホンちゃんの家のゲームか?」 
 「うん。やっぱりニホンちゃんの家のゲームは一番だよ!」
 「・・そうか。でもな、今度パパもまた新しいゲームを作るんだ。期待してくれ」
 「・・うん」
 気のない返事しか帰ってこないアメリー君。でも、パパはどこか自信があるよ
うです。携帯電話を取り出すと部下となにやら密談のようです。
 「・・そうか。ニホンちゃんの家からうまくゲームデザイナーを引き抜けたか。
 ・・・今度はウチの番だ。抜かるなよ!」
 一度、その手から滑り落ちていった栄光。アメリーパパは再びその栄光を取り戻
すために、再度、立ち上がろうとしていました。        END

 ソースは、アタリショックと、Xboxの新型の開発に伴う、MSによる日本のソ
フトメーカー囲い込みの動きから。

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