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第2297話 黄 色 い リ ボ ン  ◆JBaU1YC3sE 投稿日: 2005/07/10(日) 13:46:11 ID:nq2iGi2+
 「 アーリアちゃんを救え 」
 むか〜しむかし、まだニホンちゃん達が小さかった頃のことです。
 ユーロ町の人たちが、アジア町に大勢くるようになりました。
 その中でもアーリアちゃんはやや出遅れていたのですが、
 他所に負けじと、オージー君の家までイン堂池や太平池の畔の道を、
 自転車で行ってみることにしました。
 初めて見る風景に見とれながら走っていたら、
 予定より時間がかかってしまいました。辺りはもう真っ暗です。
 自転車のライトを頼りに走っていたのですが…
「この辺て、本当に貧乏なんだなー。道は舗装してないし街灯も無いし・・・あれ?!」
 何と、自転車のライトが消えてしまいました。電球が切れたようです。
「本当に真っ暗のなっちゃったよ〜」
 この池の畔の道には手摺がありません。そして、アーリアちゃんは知らないうちに
 カーブに差し掛かっていたのですが、それに気づくはずもなく・・・
 ガタガタッガタッ
「あれ?道がなくなってる〜!」
 急に下り坂になったかと思うと、
 バッシャーン!!
 池に突っ込んでしまいました。しかし、幸いそこは浅くて足の立つところだったので
 アーリアちゃんはパニックを起こしながらも、もと来た岸に這い上がりました。
 自分に何が起こったのか、頭の中はまだパニックから覚めませんでしたが、
 全身ずぶ濡れになり、自転車は水の中、知っている人がいないところで
 夜一人ぼっちになったという不安が、急にアーリアちゃんを襲いました。
「だ、誰か助けてー!お母さ―ん!」
 しかしいくら叫んでも誰も答えてくれません。それにこの頃のユーロ町では、
 アジア町には野蛮な人たちが住んでいるといわれていたので、
 アーリアちゃんは助けを呼ぶのも止めて、泣き出してしまいました。
「ぐすん、お母さん、助けて、うえ〜ん」
 その時です。遠くの方からこちらに近づいてくる一つの灯りが。
( 助かった!いや、ひょっとして、ひょっとして・・・)
「おおい、大丈夫か」
 見知らぬ大人の声に、アーリアちゃんはビクッと震えました。
「もう大丈夫、怖くないよ。おじさんの家に連れて行ってあげる」
 そういうと、見知らぬその人はアーリアちゃんを優しく抱き上げました。
 アーリアちゃんはほっとして、全身の力が抜けていくのを感じました。
 前の方を見ると、誰かが懐中電灯を振り回しています。
 そして女の子の声が聞こえてきました。
「頑張れ!頑張れ!頑張れ!・・・」―――――
 
 ―――――アーリアちゃんは暗闇の中をさまよっていました。
(どこ?ここはどこ?こ、怖い・・・お母さん!)
 その時です。アーリアちゃんを呼ぶ声がするではありませんか。
「アーリアちゃん・・・アーリアちゃん・・・」
(お母さん!来てくれたの?)
 声のするほうに駆け寄りました。
 すると温かい頬がアーリアちゃんの頬に重なりました。
「あたし怖かったよ〜!!」

 アーリアちゃんは自分の声で目が覚めました。
「はっ・・・夢?」
 気がつくと、アーリアちゃんはお布団の中で横になっていました。
 あれ?自分が誰かに抱きついていることに気づきました。
「お母さん?」
 体を離してみると、その人はお母さんではありません。
 自分と同じ年くらいの、黒髪の女の子でした。その子はまだ眠っています。
「おや、やっと目が覚めたんだね」
 声のするほうを振り向くと、そこには知らないおばあさんがいました。
「びっくりしたでしょう。でももう大丈夫、ここは日之本家という家の宮古の間よ。
 私は撫子。あなたを抱っこして来たニッテイの妻よ。
 あなたの名札で住所と名前がわかったわ。
 お家の人にも連絡したから、ここでしばらく休んでらっしゃい」
「助けてくださったんですね、あ、ありがとうございます」
 その時、後ろから声がしました。
「アーリアちゃん・・・」
 振り向いてみると、さっきの女の子が、寝言でアーリアちゃんを呼んでいます。
「おやおやサクラったら。この子はウチの子のサクラ。ニホンと呼んでちょうだい。
 あなたが元気になるようにって必死に体をあっためていたのよ。
 ほら起きなさい、アーリアちゃんの目が覚めたわよ」
「ん、んー・・・あ!アーリアちゃん!」
 ニホンちゃんはアーリアちゃんを見ると大喜びで抱きつきました。
 初対面なのに何の遠慮もない振る舞いにアーリアちゃんは少し戸惑いました。
 それに、さっきこの子をお母さんと思って抱きついていたことが、
 少し恥ずかしくなってきました。でもニホンちゃんはそんなことお構い無しです。
「よかったあ!本当によかったあ」
「あ、ありがとう、ニ,ニホン」
「さあ二人とも、ご飯の支度が出来ましたよ。いらっしゃい」
「はーい!行こう、アーリアちゃん」
 それからニホンちゃんは看護婦さんごっこのように、いや本気でお母さんの代わりを
 務めるかのようにアーリアちゃんの面倒を見ました。ご飯を食べさせたり、
 湯船に入る習慣のないアーリアちゃんとお風呂に入ったり。
 やがてアーリアちゃんも打ち解け、ニホンちゃんとお互いの家の歌を歌いあったり
 まるで双子のように過ごしました。そしてすっかり元気になった頃、
「おお、ゲルマッハ君からワシにお礼の手紙が来ておる。感心な子だなあ」
「兄上から?私も聞きたいなあ」
 すっかり甘えるようになっていたアーリアちゃん、
 手紙をニッテイさんに読んでもらいました。
『アーリアの事故を聞いて、とてもびっくりして、とってもとっても心配したけど、
 助けてもらったと聞いてほっとしました。アーリアは僕のもう半分です。
 日之本家の皆さんありがとう。本当にありがとう。
  ゲルマッハ・カイザーより』―――――

―――――そして時は流れ―――――
 今日、アーリアちゃんとゲルマッハ君は日之本家の宮古の間に来ています。
 そこにはあの時の、ゲルマッハ君の書いたお礼の手紙が額に入れて飾ってありました。
「カイザーか。あの頃はそう名乗っていたっけ」
 ゲルマッハ君は恥ずかしそうに言いました。
「兄上、あれからいろんなことがあったな、私達」
「ああ」
 2人の胸に、汲みつくせぬ思いが湧き起こって来ました。
 そして、どちらからともなく手を握り合いました。
「アーリア、この手紙を書いた頃と、私の気持ちは変わらない。
 お前がいないと、私は生きていけないのだ」
「私もだ。兄上」
 熱い視線で見つめあう2人を見守って、ニホンちゃんももらい泣きしそうです。
「ニホンちゃん、日之本家への感謝も、手紙を書いた時と同じだ。本当にありがとう」
「ううん、あたしこそ、あれから色んな事二人に教えてもらったでしょう」
「二、ニホン、ひ、一つ頼んでも、い、いいかな?」
 アーリアちゃんが少し顔を赤くしています。
「なあに?」
「あ、あの時のように、ほ、頬を合わせてくれないかな」
「うん、いいよ!ゲルマッハ君もやろうよ!」
「ようし!」
 アーリアちゃんの両頬はニホンちゃんとゲルマッハ君に挟まれました。
 そっと目を閉じると、2人の熱い気持ちがアーリアちゃんに流れ込んでくるようでした。
「・・・あ り が と う・・・」
 
 おしまい

解説 解説と舞台挨拶 投稿日: 2005/07/10(日) 14:26:07 ID:nq2iGi2+
 ここは日之本家の宮古の間の、太平池に面したお庭です。ニホンちゃんとゲルマッハ君、
 アーリアちゃんが、水着になって日光浴しながら話しています。
「兄上、この話は日之本家では全然知られてないようだな」
「宮古の間のサイトにあるだけのようだ。南の島で中世の城も
 再現されているとは、非常に貴重な組み合わせだ。夏の思い出には最高なのだが」
【宮古島 上野村 ドイツ文化村  明治6年7月12日 ロベルトソン号救難】
http://www.vill.ueno.okinawa.jp/page/bunnkamap.html
「トル子やポーラの話はあちこちのサイトにある上に、フラッシュも作られているのに!」
「落ち着くんだアーリア。アメリー家に負けるまでは教科書に載っていたそうだ」
「それじゃ何故?」
「わかるだろう、ニッテイさんの功績が何故忘れさられるか・・・」
「またマル教の一味か!」
 アーリアちゃんの瞳に怒りの炎が宿りました。
「ごめんね、アーリアちゃん、ゲルマッハ君」
 ニホンちゃんはうつむいて謝りました。
「ニホンちゃん、最近サヨックの発言力が落ちたからといって、安心してはいけない。
 失われた記憶は、失われたという自覚がないのが怖いところだ。
 我がユーロ町では、何度も家が滅びかかったために、修復にも大変な労力をかける。
 失われたものが何かないかと必死で探すんだ」
「この話も広めてもらって、是非フラッシュ化して欲しいものだな。それから・・・」
 急に、二人は照れ笑いを浮かべながら、ニホンちゃんの前に並びました。そして
「「 お誕生日おめでとう! 」」
 そう言って、ニホンちゃんの両頬にキスをしました。
「うれしい!ありがとう!じゃあ一緒に読者の皆さんにみんなで挨拶してくれる?」
「「もちろん」」
 おや、3人が並んで画面の前の あ な た を見ていますよ。
「「「 皆さん、いつも本当にありがとうございます!
    そして今年は日之本家におけるドイッチェラント家の年です!
    これからも私達を、そして地球町のみんなをよろしくお願いします!! 」」」

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