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第31話
machina@敗北主義者
投稿日: 02/06/28 20:36 ID:hWSxFpjp
【舟遊び1/2】
水上歓待。
水のうえにボートを浮かべて、月を観ながら一杯、一杯、また一杯。
まさに酔狂な舟遊び。しかし水上歓待には途方もない出費が待ち構えているという罠。
水上歓待ができるのはごく少ない家だけ。
アメリー家やエリザベス家、ゲルマン家。
そして日乃本家も・・・。
「なあ、ゴエイ。たった4000円でいい。4000円あれば酒もツマミも充分だ。アメリー家の人間に目にもの見せられる」
「ダメだったら駄目!」
カイグンの無心にカイジは辟易していた。
「テイコクカイグンはこの歓待に命をかけている。水上歓待の伝統を発揚するとともに、その栄光を子供達に伝えなければならん」
4000円あればニホンやアサヒに両手一杯のお菓子を買ってやれるのに、叔父貴に渡したらそれこそ飲み代に消える。
それを考えるとカイジはむかっ腹を立てた。
「一族あげて貧乏と戦ってるのに、水上歓待の伝統がなんだ。水上歓待の栄光がなんだ。バカヤロー!」
【舟遊び2/2】
・・・結局、カイジはなけなしの小遣いをカイグンに渡してしまった。
そしてカイグンはボートに乗って、ついに還らなかった。
日乃本家は破産し、カイジは九条家に養子に出された。
「なあ、カイグンさんドコに行ったん?」
「リューんところじゃないかな・・・たぶん」
小学校にあがったばかりのアサヒが上目遣いに尋ねてくるが、カイジは主人を失ったボートに視線を逸らした。
一緒に舟遊びをしていたアメリー家の人の話では、ボートが引っくり返って、いい加減酔っ払っていたカイグンはそのまま浮かんでこなかったそうだ。
でも本当は借金を踏み倒して逃げたに違いないとカイジは踏んでいる。
外堀が冷めるまで、どこか遠くで魚釣りでもしているのだろう。そうだ、そうに違いない。
「水上歓待の栄光がなんだ・・・バカヤロウ」
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