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第95話 青風 ◆BlueWmNwYU 投稿日: 2006/05/17(水) 20:04:50 ID:HJyclFI/
『大当たり!』

「お兄さまなんか大ッキライ!」
 叫び声と共に、大きなオレンジがストライク!
 ロシアノビッチ君の顔のど真ん中に命中です。
「おい、ウクライナ! 良くも俺の顔にこんなモンぶつけたな。
 お前のおやつは当分抜きだから、憶えてろよ!」
「良いですよ! 私だって、いつまでもお兄さまの思い通りには
 なりませんからね!」
 売り言葉に買い言葉。
 兄妹の間のありふれた些細な口論から、ウクライナちゃんが部屋から
 飛び出すのに要した時間は5分少々。
 あとに残るのは、オレンジを握りしめるお兄ちゃん一人。

「ちっくしょう、面白くないぜ。ウクライナもウクライナだってえの。
 少しくらい背丈が延びたって、俺の妹には違いねぇだろうがよぉ」
 まだまだ小さい、そう思いこんでいた妹の思わぬ反撃に面くらい、
 頭に血が上ったあげくのこのありさま。
 考えてみれば、妹だっていつかは大きくなるのです。
 判っては居ても、意地になるのが彼、ロシアノビッチ君ではありますが。
「面白くねぇ、散歩にでも行くか」
 ロシアノビッチ君は外套を来て外に出ました。

 表に出たところで、特に行く当てはありません。
 いつものようにウオトカを飲む気にもならず、気分の向くまま歩いていた
 ら、いつの間にかどこかで見たような一角にたどり着きました。
「こりゃ、アメリーの家じゃねーか」
 そう、泣く泣く養女に出してしまったもう一人の妹、ラスカちゃんの住む
 アメリー家にいつの間にかたどり着いていたのです。
 今の自分の姿を見せたくないのか、ロシアノビッチ君が物陰に身を隠している
 と、元気で甘えん坊の女の子の声が聞こえてきました。
「ほらほら、お兄ちゃん。ネクタイ曲がってるよ。ああん、もうシャツだっ
 てそれ、一度着た奴じゃないの。ほら着替えて着替えて」
「良いじゃないか、ラスカ。そんなに汚れちゃ居ないぜ、これ」
「あーん駄目駄目。そう言う手抜き、女の子にはまる分りなんだぞ」
 お兄ちゃん、という言葉にどきりと反応し、つい飛び出してアメリー家の
 居間のガラスに映る自分の姿を見てしまうロシアノビッチ君。
 着古しの外套。
 ウオトカの臭いが染みついた身体。
 どう見ても、年頃の妹から見てかっこいいお兄ちゃんではありません。
 何かが判ったような気がして、アメリー家を後にしました。

「なぁ、どうだぁお前ら見ろよ!お兄ちゃんかっこいいだろ?」
 いかにも、ちょっと無理してますって感じのファッションに身を包み、
 妹たちの前で見せびらかすロシアノビッチ君。
 今日だけはお酒も我慢して、一生懸命にかっこよくしているつもりでも、
 妹たちにしてみれば、「またお兄ちゃんが馬鹿やってる」くらいにしか
 思えません。
「クックックックツ」
 押し殺したような笑い声が妹たちの間から漏れてきました。
 もちろんこれは、ウクライナちゃんです。
 笑いのツボに当たったらしく、いつまでも笑い止みそうにありません。
「ちっ、何だよ人が折角無理したのによぉ。ウクライナ、笑った罰だ。
 お前もうしばらくおやつ抜きな」
 ちょっと怒ったようにして食堂を出てゆくロシアノビッチ君。
「ああ、もうちょっと本気で格好良くなってくれれば許せるんだけどなぁ」
 そう思いながらも、おやつ抜きはやっぱりお腹が空いてしまう、
 育ち盛りのウクライナちゃんでした。

解説 青風 ◆BlueWmNwYU 投稿日: 2006/05/17(水) 20:07:40 ID:HJyclFI/
解説とか
 その一 ウクライナ、独立国家共同体からの脱退検討
http://nna.asia.ne.jp.edgesuite.net/free/cee/cee_today/801_900/0857.html

 その2 ロシア、イメージ戦略 米国広告代理店に依頼するかも?
http://www.janjan.jp/world/0605/0605040868/1.php

 その3 ウクライナ、ロシアによる天然ガス値上げに親ロシア派躍進?
http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh060418.htm

まぁ、ロシアノビッチ君ももう少し考えないと、妹たちに見捨てられますよ。

では、また。

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