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第5話 あさぎり ◆aKOSQONw 投稿日: 2004/07/31(土) 18:54
『天空の守護者』

 息子へ−−−

 親の得手勝手に自分の子供を巻き込んだのは慙愧の念に耐えない。
 今も昔もその思いは変わらない。
 その事で近所の子供に除け者にされ、下げる必要のない頭を下げる事
になり、悪意に恭順を誓う事に甘んじさせてしまっている…

 人の道理を通せば無理が折れ、無理を通せば道理を曲げる。
 父親は不器用だった。そして無力なものだ。

 そんな馬鹿な父親が飽きもせず毎日山に登り続ける。
 ますます子供に馬鹿にされるかもしれない。道楽と思われるだろう。
 だがその日の我が家をしかと眺め、天気を眺めて人に伝える。
 今の私にはそれ位しか、人の役に立つ轢蹄を刻む事は叶わない−−−

「おはよーおとうさん」
 あくび混じりにニホンちゃんはジミンパパに朝の挨拶です。
「おはようさくら。ちゃんと朝のラジオ体操は行ってるかい?」
「いってるよう…ふわぁぁ…」
 ジミンパパは少し困った顔で笑いかけると、ニホンちゃんの頭を軽く
撫でます。
「パパは朝早いなぁ…どうして毎朝山に登るの?」
「パパのお仕事はお天気が大事だからね、毎朝あそこで風船上げて、
お天気がどうなるか調べてるんだよ。」
「ふぅん、大変だねえ。私もお手伝いしよっか?」
「あはは、大丈夫だよ。そんなに大変じゃないし。調べるのはママが作って
くれた機械が勝手にやってくれるしね。けれども昔は風船なんてなかったから、
おじいちゃんが苦労して自分で計りながら同じことをしてたんだよ。」
「ふうん…おじいちゃんやっぱり凄いんだねえ…」
「はは、そうだなあ。パパは逆立ちしたって敵いっこないよ。」
 ジミンパパは優しく笑って答えます。
「さ、朝ごはんにしよう。」
「はぁい。」

 ああ、そういえばあのとき母親から手渡された遺書には何が書いていたのだ
ろうか?
 封も切らずに棺に押し込んだ時、後悔がなかった訳ではない。
 子供っぽい強がりが、真正面から親の気持ちを受ける事への後ろめたさが、
封を開けさせなかった気がする。
 読まずに置いて良かった気もすれば、今なら相応に受け止められる気もした。
 そしてふと考えた。子供たちは、自分の思いを受け継いでくれるのだろうかと?
『全く、今になって親父の気持ちがわかるなんてな…』

 子供に見つからないように苦笑いを一瞬浮かべてすぐに消し、ジミンパパは
ニホンちゃんを連れ立って食堂に向かいました。

おしまい

解説 あさぎり ◆aKOSQONw 投稿日: 2004/07/31(土) 18:57
解説・予報・天上大風
※ どうも、有閑工房改めあさぎりでつ。タダイマ台風直撃中!というのでネット
をうろうろしてたら、ふと富士山レーダーの記事に行き当たりまして…もう一線
退いていたんですねえ、富士山レーダー…シラナカッタヨ
 それにひまわりをかけて仕立て上げてみました。そしたらまあ、見事なまでの
崖っぷち…どうなっちゃうんでしょうねえ、気象衛星(ニガワラ

※ 気象観測の主役が地上から宇宙に移り、おそらくはあったであろう世代交代。
それに親子の相克と理解を掛けたりしてみたりみなかったりw

ソースというかなんというか…
↓大成建設HP内 社内報「たいせい」 2001年6月号「社史探訪」より
標高世界一の気象レーダー 富士山レーダー
ttp://www.taisei.co.jp/special/000/html/taisei.html
↓富士吉田市HP内 富士山レーダードーム館4月24日オープン!
ttp://www.city.fujiyoshida.yamanashi.jp/forms/info/info1.aspx?info_id=795

↓まあ、お話よりも現実はうすら寒くなるような状況な訳で…
漂流する日本の宇宙政策、責任を巡って打ち上げ再開にゴーサインが出ず
2004年06月08日 15時54分
ttp://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/biz/312344

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