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第33話
嶋イルカ
投稿日: 2006/07/21 03:03:00
『小ネタでインターミッション 6』
ハプスブルク先生はいい匂いがする。
背中に顔を押しつけるとラベンダーだろうか? 爽やかでほんのり甘い香水の匂いが
オレを包んだ。
柔らかい身体にしがみつく。
暖かくて居心地がいい。ずっとこうしていたくなる……。
「あら、ウヨ君って甘えん坊さんですね」
自転車に跨った先生はふりかえって、くすくす笑った。
こんなことになったのは、下校中に「先生の自転車に乗せてあげる!」と宣言されたからだ。
それはまさに宣言だった。先生はなぜか胸を張って、堂々としていた。
恥ずかしがるオレはなかば強引にママチャリの後ろに乗せられた。
当然、サドルの先生に抱きつくかたちになる。しかも運転が下手でぐらぐら揺れた。
きゃーきゃー言いながら先生はジグザグ走行した。この人は何を考えてるのかわからない。 必死に先生にしがみつくうちに、ほのかな香水の匂いが鼻を打った――。
初夏のユーロ街の散歩道は運河に沿い、菩提樹が濃い影をおとしていた。
そこをよたよたとオレたちを乗せた自転車が走っていく。
「ねえ、ウヨ君。先生はね、今の季節がいちばん好きなんですよ」
唐突に先生はそんなことをいった。
「暑くも寒くもなく、自転車でどこまでも行けそうです。風も気持ちいい。ほら、――こうして目を閉じると、緑のいい匂いがします。気づきましたか?」
いわれるままに目をつむると、伸びざかりの新緑の息吹が風に乗ってオレを包むのがわかった。
視覚をさえぎると世界の在り方が一変する。オレはみずからを自然の一部だと理解した。暗闇のなかで先生の背中だけを感じる。この世界でふたりきりになったような錯覚に捉われた。
――ん? 「こうして」目を閉じる?
「だ――っ! 先生、前、前! 運転中に目を閉じたらダメだよ!」
「きゃ――!!」
焦って警告したときはすでに遅かった。
自転車は川沿いの堤防を勢いよく飛びこえ、オレたちはドナウ川に頭から突っ込んでびしょ濡れになった。
解説
嶋イルカ
投稿日: 2006/07/21 03:04:00
2006.04.05
中東欧地域で洪水
洪水被害で9人死亡 中東欧、1万人避難
【ウィーン4日共同】
チェコやスロバキアを中心に中東欧地域で、降雨や雪解け水などで先週から主要河川が増水し、4日までの各地からの報道によると計9人が死亡、計1万人以上が避難するなど洪水被害が相次いでいる。
チェコではエルベ川が北西部のドイツ国境地域で7メートル近く増水するなどし、ロイター通信によると7人が死亡。政府は、国土の半分の地域で非常事態を宣言した。スロバキアでも2人が死亡した。ドイツでもエルベ川などで増水が続き、周辺住民千数百人が避難する事態となった。
オーストリアでは3日、ドナウ川支流のダムが決壊し、周辺住民約400人が避難。ハンガリー政府も3日、北部のスロバキア国境からブダペスト南方までのドナウ川流域などに非常事態を宣言した。
(共同通信) - 4月4日11時15分更新
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