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第1111話
professer(←誤り)
投稿日: 02/07/15 01:20 ID:PGCERoex
「ウヨくんの長く暑い一日」
その事件が起こったのは、必然だったと言えましょう。もちろんいくつもの
偶然が重なった末の出来事ではありましたが、その日起こらなくても別の日
にいずれ起こる事件だったのです。今日の台風で土砂崩れが起きなくても、
地盤が緩ければいつか別の雨の日に土砂崩れが起こるのです。
一つ目の偶然は、彼……ウヨくんが下校途中、ニホンちゃんとアメリーくんが
話しているところに出くわしたことでした。
夏休みも近い夏の午後。日差しを避けて木陰で向かいあい、二人きりで話す
ニホンちゃんとアメリーくん。それははたから見れば恋人同士のようで、自然とウ
ヨくんの顔は険しくなるのでした。
(なんで姉さんはあんなやつと……)
それはあるいは幼い嫉妬だったのかもしれませんが、最愛の姉と
嫌いな男とが話していれば、その内容が気になるというもの。幸い、
二人の角度からはウヨくんが見えません。彼はあくまで自然な態度を
装いながら、なるべく気づかれないよう近づいていきました。
「正直、俺もちょっと焦っててさ。実験もうまく行ったり行かなかったり
でね。こんなこと頼めるのはニホンちゃんだけなんだよ。頼まれてくれ
るだろう?」
とうとうウヨくんは、二人の会話が聞こえるところまで近付いてしまいま
した。盗み聞きは悪いことだと思いつつも、二人から目が離せません。
「でも、お金いっぱいかかるでしょ? それに私が手伝ったからって実験
が成功するとも限らないし」
ニホンちゃんは、曖昧な微笑みを浮かべながら言いました。ウヨくんは、
(はっきり断ればいいのに)と内心じれったく思います。
「大丈夫、絶対成功するって。君んとこだって、キッチョムとか
チューゴとか気になるだろ。一緒にやろうぜ、な」
アメリーくんはばしっとニホンちゃんの肩を叩きました。ウヨくんは
思わず歯を噛み鳴らします。両腕がぶるぶると震え、カンコくんが
見たら思わず逃げ出すほど鋭く激しい眼光でアメリーくんを睨みつ
けました。
(姉さんになんて乱暴なことをするんだ! だいたいあれが頼み事
をする態度か? なにが絶対大丈夫だ。スターウォーズ計画とかいう
馬鹿みたいなことやろうとして大失敗したのはどこのどいつだ。姉さ
ん断れ! そんな奴の言うことなんてきくな!)
しかしウヨくんの胸中とは裏腹に、ニホンちゃんはやはり曖昧な笑
顔のまま少し首をかしげ、やがてコクンとうなずきました。
「そうだね。じゃあ一緒にやろうか。で、わたしは何を……」
ウヨくんはとても最後まできいていられずに、その場から去りました。
しばらく歩いて、ウヨくんは校門の前までやってきました。大股で
歩調は速く、頬に赤みが刺し、歯を食いしばっています。未だ冷めな
いその怒りは、強引なアメリーくんに対するものなのか、軟弱なニホ
ンちゃんに対するものなのか、あるいは姉のためになにもできなかった
自分に対してのものなのか、ウヨくんにもわかりません。
と、門柱の陰から小さな女の子がひょっこり顔を出しました。夏の
陽光を受けて息を呑む金髪と、温かさを持つ雪色の肌。同級生であ
りアメリーくんの妹である、ラスカちゃんです。
彼女はウヨくんの前にとてとてと駆け寄ると、手をぱたぱたさせて
言いました。
「ねーねーウヨくんウヨくん!」
「なに?」
ラスカちゃんとは対象的に、ウヨくんは冷めた声色で答えます。普
段あまり意識していませんでしたが、彼女はアメリーくんの妹なので
す。
しかしラスカちゃんはそんなウヨくんに気づいた様子もなく、明るい
声で尋ねました。
「夏休みの自由けんきゅー、なにやるかもうかんがえた?」
「いや、まだだけど」
「あのねーあのねー、ラスカすごいのかんがえたんだよ!
すっごくたのしくてね、すっごくいいけんきゅーなんだよ! で
もね、ラスカ一人でやるにはちょっとたいへんなけんきゅーなの
ね。でも二人でやればなんとかなると思うの。だからウヨくん、
いっしょに自由けんきゅー」
「やらない」
まるでよく斬れる刀で一刀両断するようなウヨくんの言葉に、
ラスカちゃんの花のような笑顔が凍りつきました。
もう一度、ウヨくんはゆっくりと言いました。
「やらない。僕は一人でやる。他の人に頼んでくれ」
そしてウヨくんは、表情の消えたラスカちゃんの横をすっと通
り過ぎると、振りかえることすらせず、自分の家へと進みました。
二つ目の偶然は、ウヨくんが帰ってきたときにニホンパパが
電話をしていたことです。
ウヨくんが自分の部屋に向かうため廊下を歩いていると、ニ
ホンパパの部屋から声が漏れ聞こえてきたのです。
「いやあタクミンさん、いくらなんでも五十万円はないでしょう五
十万円は」
タクミンという言葉が、ウヨくんの耳にひっかかりました。彼が
アメリーくんと同じくらい嫌っている、チューゴくんのお父さんの
名前なのです。
いつもならさして気にもとめずにさっさと自分の部屋へと戻って
いったことでしょう。しかし今日ウヨくんはUターンをすると、ニホン
パパの部屋の前まで足音を忍ばせて歩み寄りました。
少しだけふすまを開けてニホンパパの様子をうかがいます。
彼はニホンちゃんとアメリーくんのことでひどく神経質になって
いましたし、毒食わらば皿までとでもいいましょうか、盗み聞きに
あまり罪悪感を感じなくなっていたのです。
ニホンパパは、電話なのになぜか身振り手振りを交えて
話しています。
「そりゃあボートの引き上げですから、多少おたくの漁場は
掻かきまわされるでしょうが、ほんの一時の話じゃあないですか」
ボートの引き上げと聞いて、ウヨくんはピンときました。少し
前に、キッチョムくんのものと思われるラジコンボートが日本
池の日ノ本家の敷地内にまで入ってきたことがあったのです。
エアガンを積んでいて近付くとBB弾を撃って応戦してくるという
とんでもないボートで、なんとか沈めましたが追っている最中に
チューゴ家の漁場内にまで入ってしまったのでした。
日ノ本家はこのボートを引き上げて調べる予定なのですが
、チューゴ家が(あとサヨックおじさんたちも)なんのかんのと
言いがかりをつけてきているのです。
(あつかましい奴らだ。そしていかにもチューゴ家らしい。何か
につけて金をせびってくるんだ……)
ウヨくんは顔をしかめながら、なおも覗き見を続けます。
「この件についてはですね、アメリー家からもはやく解決する
べきだという支持を得ておりまして……」
ウヨくんは思わず床を踏み鳴らしそうになりました。
(アメリー家は関係ないだろう!? どうしてそこでアメリー
家を持ち出すんだ、そういう風に他人に頼るからチューゴ家に
舐められるんだ!)
「え? 三十万? ふーむ、いやいやまだ高いですなあ。こちら
としてはですな、十万円くらいを考えているんですが」
(十万円もくれてやることない! なんでそうやって人の顔色ば
かりうかがって……)
と、何かウヨくんが物音でも立てたのか、ニホンパパが不意に
ウヨくんの方を向きました。ウヨくんは思わず後ろへさがり、静か
に、しかし早足で自分の部屋へと逃げ出しました。
自分の部屋へ入ってから、ウヨくんは何も逃げ出すことはなか
ったと思いました。むしろニホンパパに向かって弱腰な姿勢を非
難するべきだったと、彼は考えました。そしてそれができなかった
不甲斐ない自分と、難癖をつけて金を要求してくるチューゴ家と、
ほいほいその要求に答えるニホンパパとに、怒りを覚えるのでした。
三つ目の偶然は、ニホンちゃんが帰ってきてすぐにシャワー
を浴びようとしたことです。
ニホンちゃんの「ただいまー」という声を聞きつけ、ウヨくんは
自分の部屋を出て玄関に向かいました。今日こそはさっきのア
メリーくんとの件を小一時間ほど問い詰めようと待ち構えてい
たのです。
「姉さん!」
と彼が呼びかけると、その声は玄関ではなく意外な方向から
帰ってきました。
「どうしたの〜」
という声を追ってウヨくんが走ると、そこはお風呂の脱衣所で
した。きれい好きで有名なニホンちゃんです、汗を流そうと、シャ
ワーを浴びるつもりだったのでしょう。ちょうど上半身の衣類を脱
ぎかけているところでした。
ま、小学三年生とはいえ、ウヨくんも男ですから焦ります。
「わ、ね、姉さん扉くらい閉めて服脱ぎなよ!」
思わず顔を赤らめるウヨくんですが、ニホンちゃんは首をかしげ、
「呼んだのは武士のほうじゃないの……」と不満げな声。しかも性
に鈍感なのかそれとも弟を男だと思ってないのか、そのまま服を
脱ぎ続けます。ウヨくんは慌てて目をそらしました。
しかし。
その直前、彼の目にニホンちゃんのお腹にある二つのあざが焼き付
きました。きめの細かい、やわらかな肌にくっきりと刻印された醜い火
傷の跡。
それはまだニホンちゃんが赤ん坊の頃、アメリー家の攻撃によって日
ノ本家が大火事になったときについたものだと、ウヨくんは知っています。
そのことを思い出したとたん、もうウヨくんには姉を責める気持ちはな
くなってしまいました。
(そうだ、悪いのは姉さんじゃない。そりゃ姉さんにも改善してもらいた
いことはあるけど、諸悪の根源はアメリーの奴なんだ)
ウヨくんは部屋へ戻り、机の奥からニッテイさんの写真の入った写真
立てを取り出しました。ウヨくんは、ニッテイさんの勇ましくも頼もしい軍
服姿を見ながら、思います。
(おじいさん、僕に姉さんと日ノ本家を守る力を下さい……)
最後の偶然は、ウヨくんが夕方、日課の素振りをしてい
る時にアメリーくんがニホンちゃんの家へやってきたこと
です。しかもよりによって、ウヨくんのいる裏庭へやってき
たのでした。
「で、ニホンちゃん、えふつーの調子はどうだい? もう目の
病気は治った?」
「うん、もう大丈夫よ」
並んで歩いてきた二人は、裏庭にある犬小屋の前にいくと、
つないである犬の相手をしながら会話を交わします。
ウヨくんはもちろん不愉快でしたが、その時は特になにか
しようとは思いませんでした。木刀を使った素振りの風切り
音が、少しだけ高くなりましたが。
「最初から僕が育てた犬を買えば余計な治療代を払わずに
済んだんじゃないかい?」
と、えふつーの首筋を掻きながら言うアメリーくん。ニホン
ちゃんは、ふぁんとむにお手をさせながら曖昧に微笑みました。
「そうね。このふぁんとむがもうすぐ引退するけど、その代わ
りはアメリーくんから買おうかなあ。でもアメリーくんらぷたー
売ってくれる?」
「う〜ん、どうしようかなあ」
その後、しばらく他愛の無い会話を交わしたあと、アメリー
くんは「じゃあそろそろ帰るから」と言いました。
「バイバイ。また明日ね」
と手を振るニホンちゃん。アメリーくんはニッと笑い、ニホ
ンちゃんを抱き寄せ、その柔らかそうな頬に軽くチュっとしま
した。ニホンちゃんは突然のことに、はわわわわ状態です。
とそこに、怒号が響き渡りました。
「アメリィィッ!! 姉さんから離れろ!!」
ウヨくんは、木刀をくだけんばかりに握り締めながらアメリ
ーくんに駆け寄ります。
アメリーくんは一瞬ぽかんとしていましたが、ウヨくんが木
刀を大きく振りかぶるのを見て、きっと唇を結び、目を細め、
ニホンちゃんを突き飛ばしてファイティングポーズを取りました。
「日本剣! 愛国富士山斬りぃ!!」
ウヨくんの必殺の一撃。アメリーくんは得意のフットワーク
でなんとかかわします。しかし、避けたはずなのに、木刀のは
ずなのに、アメリーくんの袖がパカリと切り裂かれていました。
アメリーくんは舌打ちすると、再び木刀を振りかぶったウヨく
んの懐に飛び込みました。
「フラッシュ・ピストン・マッハ・パンチ!!」
ウヨくんが気づいた時には、すでにアメリーくんは
帰っていました。
看護していたニホンちゃんは、ウヨくんが起きあがるとう
れしそうな顔をしましたが、すぐにうつむいて、暗い表情で
言いました。
「武士、さっきのことで、お父さんが呼んでる……」
「武士! いったいどういうつもりだ!」
家族会議は、ニホンパパの怒号からはじまりました。
ニホンパパとウヨくんは四角い食卓の向かい側に座り、
ウヨくんから見て右にニホンママ、左にニホンちゃんが座っ
ています。三人のウヨくんを見つめる視線は、程度の差こ
そあれ一様に厳しいものでした。
しかしウヨくんはその瞳に闘志をらんらんと光らせ、お父
さんの声にもひるむ様子はありません。それどころかこう反
論すらしました。
「僕は悪くない、悪いのはアメリーだ! 姉さんがいやがって
いるのに……!」
「あれはアメリー家ではただの挨拶よ。そりゃわたしだって抵
抗あるけど、アメリー家の家風を」
「違う! ここは日之本家なんだから、アメリーの方がこっち
に合わせるべきなんだ!
ニホンちゃんの言葉を、ウヨくんは遮りました。ウヨくん立ち
あがり、みんな拳を振って言葉を続けます。
「だいたい、みんなは他の家に遠慮し過ぎなんだ! 人の顔色
ばっかりうかがって、自分の意見を引っ込めて、妥協して、損ば
かりしているじゃないか!」
思わず身を乗り出そうとするニホンパパを抑えて、ニホンママ
は優しい口調で反論しました。
「武士、日ノ本家はね、他の家と仲良くすることで豊かになってき
たのよ。自分の意見を押し通すだけじゃあ、他の人と協力できな
いでしょう?」
「プライドを売ってまで豊かさなんていらない!」
ニホンパパは顔を真っ赤にして怒鳴りつけました。
「いい加減にしろ! それならお前の食事は抜きだ! 今月の小
遣いも無し! 日ノ本家の豊かさがどれだけ貴重なものか、体験
させてやる!!」
ウヨくんは一瞬言葉に詰まりましたが、すぐに「僕は負けない!」
と叫んで部屋を飛び出していきました。
夜中の十一時半。ニホンちゃんは音を立てないようそっと
部屋から出ました。廊下の電気はつけず、抜き足差し足でお
父さんたちの寝室へ向かいます。
寝室の前にくると、ニホンちゃんはそっと、ほんの少しだけ
障子を開けました。中はまっくらで、かすかにニホンパパのい
びきが聞こえてきます。
ニホンちゃんはふうっとため息をつくと、障子を閉め、続いて
台所へ向かいました。
戸棚の中から、昼に残してしまった大福餅の箱を取り、ウヨ
くんの部屋へと向かいます。
ウヨくんの部屋は障子が少しだけ開いており、光が漏れて
いました。
(ああ、やっぱりお腹が減って眠れないんだわ……)
ニホンちゃんは、小声で「武士……」と呼びかけながら、部屋
の中に入ります。
ウヨくんは自分の勉強机に突っ伏していました。机の上には、
いくつもの付箋やしおりの挟まった何冊もの本が散らばっていま
す。左手には、ニッテイさんの写真が入った写真立てを握り締め
ていました。ニホンちゃんがウヨくんの顔をのぞきこむと、ウヨくん
は目を閉じ、かすかに寝息を立てていました。目元に、涙を拭っ
た跡がありました。
ニホンちゃんはウヨくんの肩に触れようとし、その手を途中で止
めました。
(どうせ眠っているんだもの。起こしちゃ悪いわ……)
机の隅に大福餅の箱を置くと、ニホンちゃんは書き置きを残すた
めに、なにか書くものがないかと机を探します。と、ウヨくんが顔の
下に何かノートを敷いているのに気づきました。
ほとんど隠れて見えませんが、かろうじて「真の独立」という文字
だけが見えました。鉛筆でぐるぐるとまわりを囲ってあり、二重線
まで引かれています。
少しため息をついて、ニホンちゃんは改めて机の上の本の題名
を見ました。
「日ノ本家再軍備」
「核武装論序説」
「平成維新に関する提言」
どうやら、ニホンパパに反論するための勉強の途中で、疲れて
眠ってしまったようです。
ニホンちゃんは部屋の押し入れからかけ布団を取り出すと、
ウヨくんにそっとかけました。そして、耳元でつぶやきます。
「武士……他人の顔色をうかがわずに生きている人なんて、誰
もいないのよ。あのアメリーくんやチューゴくんだってそうなの。
日ノ本家は狭いし人が多いから、特に他の家と助け合っていかな
ければいけないわ……。『真の独立』と武士は言うけれど、それは
サヨックおじさんの『非武装中立』やアメリーくんの『正義』や、カン
コくんの『半万年の歴史』と同じで、頭の中にしかないものなの……。
わたしの『全方位平和外交』もそうかもしれない。だから捨て去れ
とは言わないわ。でも、現実と妥協することを覚えなきゃ、そのう
ち潰れてしまうわ。それだけはいつか解ってちょうだい……」
そうして、ニホンちゃんは「食べたら見つからないように始末しな
さい」と書いた紙を箱の上に置くと、部屋の明かりを消して、そっと
出ていきました。
朝になりました。
一家揃っての朝ご飯は、今日は少しだけ暗い雰囲気です。
お父さんは新聞を睨んでおり、ウヨくんもほとんどしゃべりませ
んでした。
しかしウヨくんは、ニホンちゃんとニホンママに促されてパンを
半分だけ食べ、ニホンパパもそれに関して何も言いませんでした。
さて、ニホンちゃんとウヨくんが一緒に玄関を出ると、家の門の
陰からラスカちゃんが二人の前に飛び出してきました。
思いつめた表情で、ウヨくんを見ました。ウヨくんは、思わずうつ
むいてしまいます。ニホンちゃんは、ラスカちゃんとウヨくんの顔
を見て、少し二人から離れました。
ラスカちゃんは、少しの間、うつむいてウヨくんから視線を外し
ていました。しかしとうとう顔をあげ、ウヨくんの目をまっすぐに見
ると、思いつめた表情で言いました。
「昨日の自由けんきゅーのことだけど」
「うん……」
ウヨくんは昨日自分が彼女になにをしたか思い出し、胃を締め
つけられるような気分になりました。思わず目を背けてしまいます。
しかしここで目を背けたままにすることは、なおさらラスカちゃん
を傷つけることになるでしょう。ウヨくんは意を決してラスカちゃん
の視線を受けとめました。
「あのね、やっぱりあれ以上にいい自由けんきゅーが思いつかな
いの。でもね、やっぱりわたしだけでやるのは、ムリなの。でもどう
してもやりたいの。ウヨくん、手伝ってくれないかな? ぜったい
楽しいよ。ぜったいすごい自由けんきゅーになるんだから」
深海と同じ色のラスカちゃんの瞳を見つめながら、ウヨくんは思います。
(自分一人でなんでもやるのは、素晴らしいことだ。その考えは今
でも変わっていない。でも、他人と協力してなにかをやるというの
は、それはそれで悪くないことかもしれない。相手の顔色をうかが
ったり、遠慮したり、妥協したりするのは嫌なことだけど、それは
本当に耐えきれないほど辛いことだろうか?)
全てが石化したかのような沈黙があり、やがてウヨくんは言いました。
「うん、いいよ。一緒にやろう」
水銀だった空気がわたあめになりました。
「やったー! ウヨくんが手伝ってくれるなら、ぜったい花丸もらえるよー!」
ラスカちゃんはぴょんぴょん飛び跳ねて喜びます。ニホンちゃん
はほっと息をつき、二人のもとへ歩み寄りました。
三人で学校への道を進みながら、楽しく会話します。
「ラスカちゃん、どんなことやるの?」
「あのねー、クジラがいるでしょ? そのクジラのねー」
と、みんなが曲がり角を曲がったところで、カンコくんと出くわしました。
「あ、カンコくんおは」
ニホンちゃんの朝の挨拶を遮って、カンコくんは叫びます。
「朝っぱらからニホンの顔を見て気分が悪くなったニダ! 謝罪と
賠償を請ky」
「お前はちったあ顔色うかがえー!」
ウヨくんが正中線四連突きを叩き込み、カンコくんは「ア────ー
イ─────ーゴオォォォォォォォォォォ」の悲鳴を残しながら遥か
かなたへ吹っ飛んでいきました。
おしまい
解説
professer(←誤り)
投稿日: 02/07/15 01:44 ID:PGCERoex
あとがき
334での自分の発言に責任を取るというか、右翼批判者がああい
うアフォばかりではないことを証明したいというのが一番の動機で
した。ニホンちゃん作者としてはちと動機が不純かな? そういう
わけで今回特にソースは無し。ミサイル防衛とか不審船とか原爆と
かF-2とか(なにげに軍事ネタばっかりだな)を多少入れましたが。
自分の脳内にある「視野の狭い右翼」のイメージをウヨくんに仮託
してます。俗に核武装太郎とか反米厨房とか言われてる奴らです。
国益国益という割りにはホントに国益の計算が出来てんのかおまい
らというタイプが非常に多くて。
主題が主題だけにエンターテイメント性の向上が必須だと感じた
ので、キャラ萌え要素は積極的に取り入れたつもりです。各キャラ
のイメージがあっていれば幸いです。
それにしてもカンコくんて便利なキャラだなあ。彼のおかげでオチ
がつけやすいこと。いずれ彼が腹一杯キムチを食べられる話でも
書いてあげようか(w。
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