戻る
<<戻る
|
進む>>
第1190話
名無し@ブータン帰り
投稿日: 02/08/24 00:32 ID:3K9t7KFa
初投稿につき、お目汚しとは思いますがご勘弁ください(^^;
「ブータンちゃんのおしゃれ」その1
3年地球組、ウヨ君のクラスメートのブータンちゃんは、
いつも同じような巻スカートの服を着ています。
それは「キラ」というブータンちゃんの家に古くから伝わる衣装で、
お家の決まりで、いつでも、どこでもそれを着ていなければならないのだそうです。
それは、ウヨ君たち3年地球組の仲間達からすれば、ちょっと奇妙に見えるのでした。
例えばウヨ君はジーンズをはく時もあれば、半ズボンの時だってあります。
同じクラスのラスカちゃんだって、オーバーオールの時もあれば、
可愛らしいフリルのたくさん付いたスカートの時だってあります。
みんなそれぞれのお家に古くから伝わる衣装がありますけど、
今ではあまりそれを好んで着る人はいません。
でも、ブータンちゃんはいつでもキラを着てきます。遠足のときも、学芸会のときも。
みんなが理由を聞いても、「おうちの決まりだから…」と、他の服を着ようとしませんでした。
「ブータンちゃんのおしゃれ」その2
そんなある日……。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
今日も一日、楽しくて、そしてちょっぴり眠たい授業が終わりました。
机の中をきちんと片付けて(カンコ君とは違います)、帰り支度をするウヨ君に、
ブータンちゃんが声をかけてきました。
「ねぇ、ウヨ君……」
「あぁ、ブータンちゃん。なに?」
ブータンちゃんはしばらくモジモジとしたあと、意を決したようにウヨ君に言いました。
「あのね、今日……ウヨ君のウチに行ってもいいかな?」
「?……それは良いけど……どうしたの?」
なんだかいつもと様子が違うブータンちゃんが、ウヨ君には気になります。
「理由はウヨ君の家で話すから……ダメ?」
もうブータンちゃんの顔は真っ赤です。
「いいよ、分かった。じゃぁ、かえろ?」
ウヨ君は理由が気になりますが、あえてここは何も言わず、
ブータンちゃんと一緒に帰ることにしたのでした。
「ブータンちゃんのおしゃれ」その3
「で、いったいどうしたの?」
ニホンちゃんの家、ウヨ君の部屋で二人はお茶とお菓子を挟んで座っています。
「あのね…実は……」
「じつは?」
「…………………」
「…………………」
二人の間を、沈黙が流れます。ウヨ君はなんだかそれが気まずくて、お茶をすすります。
その時、ブータンちゃんが意を決して言いました。
「実は……お洋服を買いたいの!」
ブバッ! その言葉を聴いた瞬間、ウヨ君はビックリして、お茶を噴き出してしまいました。
「ゲホゲホゲホッ!」
「だ、だいじょうぶ、ウヨ君!?」
「だ、大丈夫…」咳き込みながらもウヨ君はブータンちゃんに安心するように言います。
「でも、いったいどうしたの?」
「実は…」
ブータンちゃんが恥ずかしげに語り始めました。それは、こういうことだったのです。
ブータンちゃんのおしゃれ」その4
数日前、ブータンちゃんのお父さんが、家族会議でこう言ったのです。
「我が家も、これからは午後5時以降、家の中に限り好きな服を着てもいいようにしようと思う」
「お父さん、ホント?」
「あぁ、本当だとも。ただし……」
「ただし? ねぇなんなのお父さん?」
「ブータンは、スカートはキラのままでいること。いいね?」
「えぇ〜っ!」
ブータンちゃんはお父さんの前で、思わずほほを膨らませてしまいます。
それはそうでしょう。これからは家の中とはいえ、自分の好きな服を着られると思ったのですから。
普段は表には出さないけれど、ブータンちゃんだって女の子。
ラスカちゃんみたいに、可愛い服だって着てみたいと思ったこともあります。
この時ばかりは、お父さんの決定にも関わらず、何度もお願いしたのです。
「ねぇ、お父さん。スカートもいいでしょ?」
「ダメだよ。ブータンに一番似合うのはキラなんだから」
「えぇ〜、でも私もラスカちゃんみたいな可愛いお洋服欲しい〜!」
「ラスカ……お父さんの言うことが聞けないのかい?」
「……はぁ〜い……」
お父さんに怒られたら大変、またキラだけ着なきゃいけなくなってしまうかもしれません。
ブータンちゃんはしぶしぶですがうなずくしかありませんでした。
「ブータンちゃんのおしゃれ」その5
「……と、いうわけなの」
ようやく話を聞き終えたウヨ君、それでようやく納得がいきました。
「いいよ、そんなことならお安い御用さ。いま姉さん呼んでくるから、一緒に選んでもらおう?」
そう言ってウヨ君はニホンちゃんを呼びに行きます。やがて、両手いっぱいの洋服を抱えて、
ニホンちゃんとウヨ君、そしてニホンちゃんと遊んでいたタイワンちゃんがやってきました。
「女の子の福は、ウヨじゃ分からないから。一緒にえらぼ?」
「そうそう、ニホンちゃんと私がバッチリ選んであげるから。まかせて♪」
女三人寄れば、何とやら。いつの間にかウヨ君の部屋を占領して、楽しい洋服選びが始まります。
「ねぇねぇタイワンちゃん、これってどうかな?」
ニホンちゃんが白いブラウスを広げます。
「あ、それ可愛い♪ あとこのTシャツも…この色どう?」
「あ〜、それいいかも。きっとブータンちゃんに似合うよ!」
「このネコのアップリケ…かわいいです」
3人がワイワイ賑やかに選んでいる中、ウヨ君はただただ呆然と見ています。
やがていくつか洋服が選ばれた時に、ふとタイワンちゃんが言いました。
「ブータンちゃん、着て帰ったら?」
その言葉にブータンちゃんは一瞬キョトンとしたものの、すぐに満面の笑顔になりました。
「いいんですか?」
「いいもなにも、そうと決まればさっそくファッションショーの準備よ!」
「ブータンちゃんのおしゃれ」その6
そこからはもう大変です。女の子3人はニホンちゃんの部屋で
この突然のファッションショーに大張り切り。
(もっともモデル役のブータンちゃんは、半分何がなんだか分かりませんが)
ウヨ君一人が取り残されて、観客役です。
やがて、タイワンちゃんがドアを開け、高らかに宣言しました。
「れでぃーすあんどじぇんとるめん、新しいブータンちゃんをごらんください!」
……やがて、ニホンちゃんと一緒に着替え終わったブータンちゃんが、
恥ずかしそうに部屋の中に入ってきます。
「あ………」
ウヨ君はそう呟いたきり、言葉が出ませんでした。
そこに立っていたブータンちゃんは、ぜんぜん今までとは違う印象だったからでした。
白いブラウスに、ピンクのベスト。
ただ服装が変わっただけなのに、なんだか急に大人びたようにも見えます。
(ブータンちゃん……こんなに可愛かったんだ……)
「ウヨ君…? やっぱり、似合わないかな……」
口を開けたまま固まっているウヨ君に、ブータンちゃんは不安そうに問いかけます。
「う、ううん…よく、似合ってる……」
「……ほんと?」
「…うん…か、かわぃぃょ…」
「ありがとう、ウヨ君…」
最後の方はもうぜんぜん聞き取れないくらいの声でしたが、ブータンちゃんには通じたようです。
「ブータンちゃんのおしゃれ」その7
それから数刻。
夕焼けの河原道を、ウヨ君とブータンちゃんが話をしながら歩いていました。
「今日は本当にありがとう。でもゴメンね、途中でウヨ君ほっぽっちゃって…」
「いいよ、気にしないで。第一、女の子の服は僕には分からないから」
「うん……。ウヨ君って…やさしいね」
「……え?」
「ううん、なんでもない。……あ、ここで大丈夫だから。…明日、また学校でね?」
「うん……またね、ブータンちゃん」
「じゃぁ、さよなら!」
夕日の中、駆けていくブータンちゃん。手にはニホンちゃんからプレゼントされた洋服が
たくさん入った紙袋を持って、元気良く駆けていきます。
(いつか…ブータンちゃんも僕らと同じように、普通の服しか着なくなっちゃうのかな……)
夕日に溶けていくその後ろ姿を見て、ウヨ君は少し寂しく、そう思うのでした。
解説
名無し@ブータン帰り
投稿日: 02/08/24 00:49 ID:3K9t7KFa
え〜、まず最初に謝罪を…
その4で「ラスカ……おとうさんの〜」とありますが、当然ラスカちゃんではなく、
ブータンちゃんのことです(w。謝罪はしますが賠償は(以下略)。
ソースなんですが、これ実体験なもので、ソースはありません。
でも、現在ブータンでは午後五時以降男性は自由に私服を、女性はスカート以外を
比較的自由に着られるようになっているそうです。
そのうち、自分のHPでも作ろうかとは考えているんですが、まずはこういうかたちで。
ちなみに、その時のガイドさんは、ジーンズにシャツで出歩き、警官に呼びとめられると
「アイムジャパニーズ」で通すという、イカシタ人でした。
あの国もこれくらいなら可愛いのに(w
この作品の評価
結果
その他の結果
選択して下さい
(*^ー゜)b Good Job!!
(^_^) 並
( -_-) がんばりましょう
コメント: