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第1264話 三毛 ◆MowPntKTsQ 投稿日: 02/11/01 23:34 ID:zG542nQE
     「マンガお勉強会」

 爽やかな秋空が広がるある日。日ノ本家で、ある集会が開かれました。
 「アジア町マンガお勉強会」と銘打ったこの会合、その名の通り、アジア町のみんなが集まって、マンガの
ことを論評しあい、その手法について意見交換をするというものです。
 ………とはいっても、やることは各々が持ち寄った自作マンガを読んで、感想を述べる程度のものですが。
 今回の座長はニホンちゃん。日ノ本家にある膨大な量のマンガを山と積んで、ウヨ君と一緒にみんなを迎
えます。
 参加したのは、チューゴ君、タイワンちゃん、インドネシアちゃん、タイランド君、シンガ君、香ちゃん、マレー
シア君、そしてカンコ君の計八名。それに見学としてフランソワーズちゃんとアメリー君、そしてラスカちゃん
が混じっています。とはいっても、この三人、お勉強会にかこつけてニホンちゃんのマンガを読み倒すのが目
的のようですが。

 お勉強会は、静かに始まりました。穏やかな秋の光に満ちた部屋に、ページをめくる音、押し殺した笑い
声、そして涙を堪え鼻をすする音だけが響きます。
 みんな、質量ともに圧倒的なニホンちゃんのマンガに引き込まれているようです。フランソワーズちゃんな
ど、読破したマンガ本を城壁のように積み上げて、まるで籠城でもしているかのようですね。
 ニホンちゃんはニホンちゃんで、タイワンちゃんの描いたマンガの躍動感あふれる絵に関心しきり。
「こ、こんな手法が……」
 などと呟いています。目からウロコがもの凄い勢いで落ちているようですね。

     つづき

 さて、みんな本を読む手を休めて話し合い開始です。
「うーん、やっぱりニホンのマンガは面白いアル。オレも負けていられないアルな」
 と、口火を切ったのはチューゴ君。最近、彼はニホンちゃんの本の海賊版を作るのを辞め、家族にも注意し
ています。もともと様々な事柄に造詣が深い少年なので、侮れない潜在能力を持っているといってよいで
しょう。
「そうそう、絵も上手だけど、それ以上にストーリーが面白いのよね〜」
 珍しく彼に同意するタイワンちゃん。彼女は、可愛らしい容姿に似合わない、圧倒的な力感を持つ絵を描く
ので、日ノ本家にもファンが大勢います。ニホンちゃんとは違ったアプローチでの成功を収めているといって
良いでしょう。
「えー、でも、面白いマンガだけじゃないもの。恥ずかしくてとても見せられないようなマンガも、いっぱいある
んだよ〜」
 面映ゆげに言って、ちょんと舌を出すニホンちゃん。どうやら自信作だけ用意していたようですね。
「ま、名作の裏には数限りない失敗作が埋もれてるもんさ。うちの映画だってそうだしね」
 と、口を挟むのはアメリー君。彼もマンガを描いていますが、それはアジア町を席巻している「マンガ」とは
いささか異なる、「カートゥーン」と分類すべきものです。ただ、マンガの手法を取り入れたものも最近はぼち
ぼち描き始めたそうですね。
「うーん、このマンガいいなぁ。ねえニホンちゃん、これ、うちに持って帰ってもいい?」
「あ、タイランドずるい〜!ニホンちゃん、私これが欲しいな〜。いい?」
 タイランド君とインドネシアちゃん、気に入ったマンガをニホンちゃんにおねだり。この二人もマンガを描いて
いますが、やっぱりニホンちゃんのマンガが大好きです。それにニホンちゃんは快く答えます。
「うん、いいよぉ」


     つづき

「そういえば、ウヨの描くマンガも、以外と面白いアルな。ニホンとは好みが正反対みたいアルが」
「あー……オレはどっちかっていうと、格闘ものや戦闘ものが好きだから。姉さんは恋愛ものやギャグが好
みだけどね」
「あは、ウヨ君らしいね」
 タイワンちゃんが微笑みます。
「ラスカ、ニホンおねぇちゃんのマンガのほうが好きだなぁ。ポケモンだいすき〜」
 と、ラスカちゃん。黄色いネズミのぬいぐるみを抱えて、嬉々としてマンガを読んでいますね。
「うふふ、ありがとう、ラスカちゃん。……ね、よかったら、マンガのテクニック教えてあげるけど……どう?タ
イワンちゃん、カンコ君?」
 おやおや、ニホンちゃん、随分と気分がよいようですね。
 タイワンちゃんは、一瞬目を輝かせました。……が、彼女が口を開く前に、凄まじいだみ声が轟きます。
「ぶ、侮辱ニダ!ウリのマンファはニホンに引けを取らないニダ!!そんなごーまんな申し出なんか願い下
げニダァッ!!」
 顔をキムチ色にして怒鳴り散らすカンコ君でした。さっきから、自分のマンガがちっとも話題にならないので
いいかげんフラストレーションを溜め込んでいたようですね。
「あ、ご、ごめんね。べつにわたし、カンコ君やタイワンちゃんをバカにしたわけじゃなくって……えと…えと…
……………ふぇぇ…………」
 おろおろとカンコ君を宥めようとするニホンちゃん。その瞳にみるみる涙が溜まってきます。
 調子に乗って、余計なことを言ってしまった。彼女は、深い深い後悔に苛まれていました。


     つづき

「…うるさいわよ、バカンコ。あんたのマンガがニホンちゃんに引けを取らない?寝言は寝てから言ってよね」
 あうあうと狼狽えるニホンちゃんを押さえて、タイワンちゃんが口を挟みます。
「この際だからはっきり言うわ。あんたのマンガ、面白くない」
 単刀直入直球ど真ん中ストレートでした。一瞬爆風でも喰らったかのようにのけぞったカンコ君、顔面トウ
ガラシ色にして喚きます。
「なにを言うニダ!!マンファはウリの家が起源ニダ!ニホンはそれをパクッただけニダ!ウリのマンファが
面白くないはずがないニダ!!」
 と、そのとき。騒動などどこ吹く風とばかりにひたすら本を読んでいたフランソワーズちゃんが、ぽつりと呟
きました。
「………面白くありませんわね、このマンガ」
 ひょい、と本の砦の上に投げ出されたのは……カンコ君の「島」というマンガでした。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
 沈黙がやってきました。タイワンちゃんはニヤニヤとカンコ君を眺め、そのカンコ君は口を金魚のようにぱく
ぱく開閉させるだけ。ニホンちゃんはどうフォローしようかと本気で悩み、アメリー君とチューゴ君は笑いを堪
えて肩を震わせています。
「ま、そーいうこと。あんたのマンファとやらが読まれないのは、ただ単に、面白くない!…それだけよ」
 とどめのように言い放つタイワンちゃん。その横でインドネシアちゃんが、無言のままヘッドバンキングのよ
うな勢いで頷きます。


     つづき

「そ、それは違うニダ!ウリのマンファは作るのにコストがかかるからニダ!ニホンみたいにお手軽に作るわ
けじゃないニダ〜!」
「………姉さんやオレのマンガをお手軽にコピーしてるおまえに言われたかねぇよ」
 ウヨ君の、霜が降りるほど冷たい一言。アジア町のみんなの目が、ちょっとだけ泳ぎます。これに関して
は、みんないささか後ろ暗いところがあるようですね。
「あー、コピーはオレも偉そうなこと言えた義理じゃないアルが、カンコのは常軌を逸してるアル。なんでも、
ニホンの名前を消して、自分の名前に書き換えていたそうアルな」
 ざわざわざわ。
 「信じられない」とか「図々しいなあ」という囁き声が飛び交います。潔癖性のシンガ君などは、露骨な嫌悪
の目でカンコ君を睨んでいますね。
「そ、それは昔の話ニダ!ウリのマンファは……マンファは………も、もう来ないニダ〜〜!!」
「あ、カンコ君待って!」
「いいのよ、ニホンちゃん!放っときなさい!」
 脱兎の如く駆け出すカンコ君とそれを引き留めようとするニホンちゃん、そしてそのニホンちゃんを止めるタ
イワンちゃん。カンコ君は、部屋を飛び出していってしまいました。
 ばしんっ!どどどどどどどどどっ!!
「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?なになになに、何ですの!?」
 勢いよく閉められたドアのあおりを食って、うずたかく積まれた本の塔が崩れ、フランソワーズちゃんを生き
埋めにしてしまいました。
「わーっ!みんな掘り出せ!!」
 もう大騒ぎです。その騒ぎのなかで、ニホンちゃんは泣きべそをかいていました。
「ふえええぇぇぇぇぇぇん、なんでこーなるのぉ〜?」
 その声に混じって、カンコ君の「アイゴ〜〜〜〜〜〜〜」という雄叫びが木霊する、秋の一日なのでした。

                                            おしまい

某韓国海兵隊員氏はヘルシングが好きらしい……。

解説 三毛 ◆MowPntKTsQ 投稿日: 02/11/01 23:37 ID:zG542nQE
おひさしぶりの三毛であります。
今回のネタは、アジアマンガサミットでウリナラ漫画が侮辱されたから退場してやったニダ!という記事です。
http://bbs.enjoyjapan.naver.com/jaction/read.php?id=enjoyjapan_6&nid=3532&work=list&st=&sw=&cp=1
期待通りの行動かましてくれましたねw
これに、マンガに関するネタをちょこっと絡めてみました。

えー、最近「Still…」にかかりっきりなので、ソース付きの書き方忘れかけてましたw
リハビリのつもりで書いてみたけど……うう、出来が悪い。
しかし、こんな話にも無理矢理ラスカちゃんを登場させるとは……我ながら業が深いな。

では!

                             松井慶子 「Eye of the moon」を聴きながら  三毛 拝



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