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第1339話 ナナッシー 投稿日: 02/12/16 21:37 ID:sp9GF2oT
『腐ったマスカット』

「・・・フゥ・・・」
少し鬱が入ったため息をついたのは5年地球組担任のフラメンコ先生です。
先生は今日も、近頃不良扱いされている中東組の様子を監視していました。
先日職員会議での決定で、無差別校内暴力を未然に防ぐため
その恐れがある生徒達を監視することになったのです。
しかし、教師が生徒を疑ってかかるような行動をすることは
彼女にしてみれば不本意以外の何ものでもありません。鬱が入るのも当然です。
「・・・いつまでこんな状況が続くのかしら・・・・」
38回目のため息をつきかけたその時、フラメンコ先生の視界に見慣れない・・・
と言うより、正体不明のマスクマンが現れました。
「・・・・・・・・なにあれ・・・・・・・」
「あれはキッチョムですよ、先生」「きゃ」
突然背後から声をかけられ短い悲鳴を上げたフラメンコ先生。
振り返ると、そこには謎のマスクマン=キッチョム君?を睨みつけるアメリー君がいました。
「ど、どうしてアレ↑がキッチョム君だって分かるの?」
「家からつけてましたから」「・・・・・・・・・あ、そう」
それもどうかと思うフラメンコ先生でしたが、今は目の前の不審者を捕まえることが先決です。
フラメンコ先生は謎のマスクマンに駆け寄り、声をかけました。
「ちょっと、あなたそこで何やってるの?」
するとマスクマンはすごい勢いで逃げ出そうとするではありませんか。
「あ、こらちょっと!待ちなさい!」
しかし、待てと言われて待つ不審者はいません。さらにスピードを上げて逃げて行きます。
「・・・(プツン)・・・待てと言っているのが聞こえんのかぁぁぁぁああぁ!」
かつての爆弾娘の血が蘇ったのか、フラメンコ先生は当時を彷彿とさせるコルテスキックで
マスクマンを・・・・いえ、マスクマンの目の前の塀を粉砕しました。ですが、彼の動きを止めるには十分です。
「さ、マスクを取りなさい」「いやだ、断る・・・・ニダ」「取りなさい」「ヤダ・・・ニダ」
このままでは拉致・・・じゃなく埒があきません。
するとアメリー君がマスクマンを羽交い絞めにして叫びました。
「先生!マスク剥ぎならあの技だ!」「!!!!」
・・・そうあれは、当時の小学生なら誰もが真似した今や伝説のツープラトン・・・
・・・滾る・・・体中の血液が逆流せんばかりに滾る!
・・・疼く・・・早くその獲物を喰らわせろと上腕二頭筋・三頭筋が疼く!
・・・てゆうか何でアメリー君知ってるの?
「行くわよ!アメリー君!」「応!」

『クロス○ンバー!!』
「やっぱり、アメリー君の言うとおり、正体はキッチョム君だったのね・・・」
マスクを手にしたフラメンコ先生は呟く様に言いました。
「・・・で、学校に来てくれたのはいいけど、マスク被って何するつもりだったの?」
キッチョム君はふてぶてしくそっぽを向いて応えようとしません。
「・・・そう、じゃアメリー君またよろしく」「はい先生」
言うが早いかアメリー君は再びキッチョム君を羽交い絞めにしました。
「・・・何をする気ニダ?」「決まってるじゃない、も・ち・も・の・け・ん・さ」
「!そんなの、生徒の人権侵害ニダ!コクレン校長に・・・」
「だまらっしゃい!」
暴れるキッチョム君を一喝し、そのポケットを素早く調べるフラメンコ先生、何かを見つけたようです。
「これは?」「・・・紙粘土ニダ、イエメンの奴に頼まれたニダ」
確かに紙粘土ですが、教師としての勘がフラメンコ先生に警告を発しています。
「・・・チェストー!」『パカッ』
気合一閃!フラメンコ先生が手刀を入れると紙粘土の中から何かが転がり落ちました。
素早くアメリー君がそれを拾い上げます。
「これは、マスカット花火!こんなものを運んでたの!?」
驚きを隠せないフラメンコ先生に対し、再びそっぽを向いてそ知らぬ顔のキッチョム君。
キッチョム君を叱りつけながら、フラメンコ先生の心はやり切れない悲しみに包まれていました。
その悲しみは、教師という職に捧げた彼女の情熱に深く暗い影を落とします。
その時、背後から二人分の声が聞こえてきました
「あ、フラメンコ先生こんなとこにいたんだ〜」
「コクレン校長先生が探してたニダよ〜」
仲が悪くも結局一緒にいるニホンちゃんとカンコ君でした。
元気に駆け寄ってきた二人でしたが、その場にいたキッチョム君と
アメリー君が持っていた物を見て瞬時に状況を理解し、表情を凍りつかせます。
しかし、フラメンコ先生自身も戸惑いを隠せず、二人にかける言葉が思いつきません。
気まずい沈黙が流れ始めた時、アメリー君が口を開きました。
「先生。ここは僕に任せてください」「え、でも・・・」
「大丈夫、僕を信じてください。早く校長先生のところへ行って下さい」「・・・」
(・・・アメリー君は利発な子・・・きっと今の私よりこの状況を上手くまとめてくれるはず・・・)
「分かったわ、アメリー君に一任します。でも、後で報告を入れるようにね」「はい」
フラメンコ先生は踵を返して今ニホンちゃん達が来た方向へ走り出しました。

「・・・ブラジャー・・・今こんなことやってる場合じゃないニダよ・・・」
やるせない思いでカンコ君がキッチョム君をたしなめましたが、当の本人は聞く耳を持ちません。
ニホンちゃんも、何を話せばいいのか言葉が見つかりません。
再び漂いかけた沈黙を破ったのはまたもアメリー君でした。
「ほらよ」「!」
なんとアメリー君はマスカット花火を、キッチョム君に投げ返したのです。
「目障りだ、とっとと持って逝け」「・・・・」
キッチョム君は受け取った花火をポケットに入れると何事も無かったかのように立ち去りました。
その後ろ姿を見送ったニホンちゃんがアメリー君に尋ねました。
「・・・アメリー君・・・あれで、いいの?」
「ああ、俺達にあいつの持ち物を奪い取る権利はないからね。それに・・・」
「それに?」
「・・・いや、なんでもない」
アメリー君はそれ以上の追及を拒絶するかのように、その場から去って行きました。
ふと見ると、カンコ君はがっくりとうなだれ「アイゴー」と悲嘆に暮れています。
ニホンちゃん自身、キッチョム君との仲直り交渉は暗礁に乗り上げていました。
「・・・いつまで、こんな状況が続くのかな・・・・」
誰にともなく、ニホンちゃんは呟くのでした。

おしまい。

(解説)
ナナッシーでございます。
元ネタはもちろん、スカットミサイル運搬中の北朝鮮の船がスペイン・アメリカ海軍に拿捕された事件ですね。
時系列的に先のネタがもう出てるんですけど、ケンチャナヨ。

http://japanese.joins.com/html/2002/1211/20021211213641500.html
http://japanese.joins.com/html/2002/1211/20021211221727100.html
http://japanese.joins.com/html/2002/1212/20021212144011500.html
http://japanese.joins.com/html/2002/1212/20021212212506100.html

にしても、教師は大変ッスね。誰かフラメンコ先生に愛の手を!
ちょっとお遊びが過ぎたのは、要求される前に謝罪します(w

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