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第1373話 グミっこエリー1 投稿日: 03/01/11 22:37 ID:p4LPHHnx
「お嬢様、お出かけですか?」
セバスチャンがエリザベスちゃんに問い掛けました。
いつものトラッドな服装とは打って変わって、長靴にラフな服装に身を包んでいます。
「ええ。南東の黒水へ。留守はお願いね。」
なにやらちょっと顔が上気しています。
「わかりました」
「あと、カンコが最新作のビデオの事で何やら言ってくるだろうけれど、適当にあしらっちゃって」
「わかりました」
「中東組の件だけど、あたくしも参加すると伝えておいて」
「わかりました」
「では、いってくるわ」
「わかりました。では、お気をつけて」
エリー、家を後に出て行きます。そのあとをこっそりついていく一つの影。
「エリーったら、今のいそがしい時期に何しに出て行くのかしら?」
エリーのライバル、フランソワちゃんです。
エリザベスちゃんの家の南東、フランソワちゃんの家との近くには黒水と呼ばれる川が流れています。
そこは丁度今の時期、干上がって泥地と化しています。
「エリーったらこんなところに来て、何するつもりなのかしら?」
上下とも厚着にくるまれているフランソワと違い、エリザベスちゃんはジャンパー以外は長靴に素肌に半ズボンというきわめて寒そうな格好です。
長靴も、太腿まである釣り用とはいえ、今の季節には寒さがきつそうです。
そんなエリザベスちゃんは、震えながらも泥地を眺めていいました。
「・・・では、行きましょう」
エリザベスちゃん、長靴履きのまま、泥地の中へ足を踏み入れました。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ
泥を踏みながら、ゆっくりゆっくり、泥地の中を歩いていきます。
「ふう、ふう」
泥が絡みつくのか、歩くのも結構疲れるみたいです。長靴は足首まで泥まみれです。
後をつけてきたフランソワちゃん、ちょっとこけました。
「何をするのかと思っていたら・・・なんだかなあ・・・」
そんなフランソワちゃんのこともお構いなく、エリザベスちゃんずんずん泥地の中を進んでいきます。
じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ
泥が深くなったのか、長靴はふくらはぎの部分まで沈んでいます。足を抜くのも一苦労です。
「はあ、はあ・・」
エリザベスちゃん、結構つらそうです。こころなしか、目も潤んでいるようです。
ぶるぶる
見ているだけのフランソワちゃん、冬のこの季節は厚着まみれとはいえ、立っているだけではきついです。
「うう、寒くて風邪引きそう・・・」
フランソワちゃん、ぶるっとふるえました。一方のエリザベスちゃん、結構きつい運動量のせいか、かえって汗だくです。
ぐじゅる
泥は更に深くなり、膝が沈みかかっています。
「これ以上深いと歩けないわ・・・コースを変えましょう」
エリザベスちゃん、向きを変えて泥の中を進みます。それを見続けていたフランソワちゃん、妙な気分になってきました。
「何かしら・・・なにか、懐かしいような・・・ときめくような・・」
フランソワちゃん、なにやら顔が赤らんでいます。
ずぼっ
と、エリザベスちゃん、いきなり長靴の履き口まで泥の中に沈んでしまいました。
「どうしよう、深みにはまっちゃった・・・」
エリザベスちゃん、必死になって足を抜こうとします。
「な、どうしたのよ、エリー!」
フランソワちゃん、その様子を見て慌てて泥の中へ走りこんでいきます。
じゅぼ、じゅぼ、じゅぼ
ブーツが泥の中に沈んでいきます。
「うう、走りにくい・・・きつい・・・」
厚着のせいもあってか、早くも息があがってます。
「・・・一、二の、よっこらしょっと」
一方、エリザベスちゃんは、一気に泥から長靴ごと足を引き抜きました。
「ここも危ないわね・・・コースを変えましょ・・・あら?」
エリザベスちゃんが振り向くと、泥の中をこっちに向かって必死に歩いているフランソワちゃんが目に入りました。
「あら、フランソワ、何しに来たの?」
「それはこっちのセリフ・・・うわ!!!」
ぶじゅう
フランソワちゃんも深みにはまったのか、いきなり膝まで泥の中に沈んでバランス失い、その拍子にこけてしまいました。
「う、うえええええん!!!」
もっと小さいころ、長靴履いて、泥や水溜りの中で遊ぶのが好きだった。
いつの間にか記憶の奥底に置き去りにしていたこと。

「最近の地球村って、いろいろ大変でしょ。それでストレス解消のためにね。」
フランソワちゃん、エリザベスちゃんの家でシャワーで泥を落としています。
「・・・あなたらしい子供じみた趣味ね・・」
「・・・そうね、見かけよりずっときつい運動だから、年老いて運動神経鈍くなってこけるようなあなたには、もう無理かもね。
 泥で歩きにくい分足腰も鍛え上げられるし、普通のウォーキングより効果あるかも」
「・・・今度は・・」
「え?」
「今度は私も付き合うわよ。ダイエットのいい運動になりそうだし」
「どうぞご自由に。でも、今度はこけても助けないわよ」
いつものエリザベスちゃんとフランソワちゃんです。
一方、外では・・・
「やい、エリー!ビデオのことで謝罪と賠償を(略」
おやおや、カンコ君、今度はエリザベスちゃんの所にねじ込んでいます。
やがて・・
「ファビョーーーーーーン!アイゴー!!」
いつものセリフを残して退場です。
「ブラジャーキッチョム、それはやりすぎニダーーーー!!!エリーのビデオが洒落にならないニダーーーーー!!!」
どうやら花火管理の約束を破るとキッチョム君が叫んでいるのを聞いてしまったようです。
エリザベスちゃんのストレス、更にたまりそうです。

「子」−「一」=? 答えは「了」で、おそまつ

解説 グミっこエリーあとがき 投稿日: 03/01/12 10:48 ID:cqA8CkjZ
ネタは1/4静岡新聞夕刊の国際面コラムからの記事から。
イギリス南東部のブラックウォーター川の干上がった泥地を行進する「泥んこレース」から。
ネットでは載っていないかも。
これに妄想を加味しましたが、お目汚しで。

キッチョムくん、瀬戸際外交大暴走中ですね。
アメリーがイラク組との戦争に集中したいのを見越しての行動だけど、チューゴ君の逆鱗にも触れそう。

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