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第1436話 名無しさん 投稿日: 03/03/13 05:50 ID:77kOUxZo
         「竹取物語」
 今回の演劇会、5年地球組は何をやろうか、学級会で話し合いがおこなわれていました。
 「まあ最近何かとギスギスしてるしここは癒されるやつにしょうや」
 ロシアノビッチ君の言葉に一同大きく頷きました。そりゃあこれだけ個性派が集まれば衝
突も起こるでしょう。
 「じゃあ竹取物語なんてどう?ニホンちゃんとこの古いお話だけど」
 そう言って席を立ったのはタイワンちゃんです。心なしニホンちゃんのほうを見てていま
す。
 「それでいい?」
 誰も反対しません。一人何か言いたそうですがタイワンちゃんとアーリアちゃんの剣のよ
うな視線の前に凍りついています。かくして5年地球組版竹取物語、開幕です。
 まずお爺ちゃんことタイワンちゃん、竹から生まれたニホンちゃん、じゃなかった竹取姫
を家に引き取ります。アーリアちゃんことお婆ちゃんも大喜びです。あれ、お婆ちゃん姫を
自分の懐に引き寄せました。それをお爺ちゃんが奪います。あらあら、この夫婦大丈夫なん
ですかねえ。
 美しく成長した姫に五人の貴公子達が求婚します。
 「HEY姫、この鼠の遊園地をあげるから僕の妻に」
 BACOOOOOM           じぱ
 「姫、可愛いい猫をあげよう、そして私と一緒になるアル」
 CRASH               だぼべきしぼ
 「よお姫さん、美味い酒あるから俺となろうぜ」
 JE
 「よお姫さん、美味い酒あるから俺と一緒になろうぜ」
 JET                  ざご
 「愛しい姫よ、僕の限りない愛を」
 ZAAK                 めちゃ
 哀れ五人の貴公子のうち四人はお爺ちゃんとお婆ちゃんの一撃でKOされて
しまいました。
 「全く持って来いつった物くらい持って来いっての」
 「捨てて来い」
 四公子、侍女達に引きずられ庭に捨てられます。
 「全く愚かですこと」
 「ちゃんと約束の物持ってきてから告白しなさいな」
 侍女に扮したエリザベスちゃんとフランソワーズちゃんのびているアメリー
君、チューゴ君、ロシアノビッチ君、マカロニーノ君を放り捨てます。あのお、
いくらなんでも共演者は大事に扱いましょうね。
 「僕もいるのに・・・」
 あ、カナディアン君もいました。けど誰も忘れてました。
 話は進み姫が月へと帰る日となりました。侍女達も護衛の侍に扮するバラ雄
君やマレーシア君、宮女のインドネシアちゃん、フィンランちゃんも心配そう
です。
 「ニホンちゃん、いや姫は誰にも渡さないわ」
 「そう、姫は私だけのものだ」
 お爺ちゃんとお婆ちゃん、目がメラメラと燃えています。しかも互いに睨み
合っているから火花まで散っています。
 「姫、行ってしまうのですか」
 帝ことゲルマッハ君がお聞きになられます。姫は哀しそうに頷きます。
 「・・・そうですか」
 やがて満月が紫の夜空の中心に位置します。淡い黄金色の光が辺りを照らし
ます。
 月から牛車を中心とした一団が現われます。そして姫の屋敷の庭に降りて来
ました。
 「姫、お迎えに参りました」
 車の中から十二単を美しく着飾った女性が現われました。トル子ちゃんです。
 「姫、いかないで!」 
 「行かないでくれ」
 お爺ちゃんとお婆ちゃんが姫の単の袖を掴み必死に引き留めます。目に涙す
ら浮かんでいます。
 「・・・御免なさい」
 姫は哀しそうに言いました。そしてゆっくりと二人の方を振り向き言いまし
た。
 「お父さん、お母さん、今まで育ててくれて有難う」
 その黒く澄んだ瞳からも涙がながれています。三人は最後に強く抱きしめ合
うと別れを告げ姫は月からの使者達に連れられ天へと上って行きます。見えな
くなるまでこちらを見ながら。
 カーテンコールです。お爺ちゃんとお婆ちゃんにボコられた公子達から始まり
侍女、宮女、侍、使者、帝、そしてお爺ちゃんとお婆ちゃんが出てきます。
 最後に姫の登場です。見事主役を演じきった十二単の小柄な女の子に場内割れ
んばかりの拍手です。舞台は大成功でした。
 舞台は大好評のうちに終わりました。これで学校一の問題児集団と思われてい
た五年地球組もいささか評判を上向けたようです。なおこの劇、最初の竹を斧で
伐る時「アイゴー」と音がしたのがひそかな話題となりました。
 

 元ネタは「守って守護月天」の竹取姫のお話です。効果音は車田正美先生と藤
田和日朗先生のものです。なんか前半と後半で話の雰囲気が変わっちゃいました。
中断したりして申し訳ありません。

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