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第1457話
焔星 ◆/tKycZin5w
投稿日: 03/03/31 00:34 ID:scLL+lEY
デジカメロケット01
そもそものきっかけはキッチョム君がみんなに連絡せずに花火を打ち上げたことでした。
花火は打ち上げるときに周囲の家を驚かさないように予め打ち上げる日を回覧板で連絡しておくのが通例です。
しかし、キッチョム君はその予告無しでいきなり発射したのです。
キッチョム君が打ち上げた花火は、なんと日本池と日ノ本家を通り越して太平池まで飛んでいきました。
前々から「キッチョムのヤツが何かしているらしい」とアメリー君から噂を聞いていたニホンちゃんですが、
いきなり発射するとまでは思っていなかったようです。
翌日、学校が終わるとニホンちゃんはキッチョム君と話をするべくカンコ家へ向かいました。
「あ……あの、キッチョム君、なんでいきなり私の家に向かって花火を打ったの?」
「あれは花火じゃないニダ!」
「え!?」
「あれはウリの技術の粋を凝らして作り上げた自作のペットボトルロケットニダ。さてはニホン、ウリの技術がうらやましくなったニダか?」
「そ、そうなの。今度からは打ち上げるときには前もっておしえてね〜(汗)」
家に飛び帰るやいなや、ニホンちゃんはアメリー君に電話しました。アメリー君はデジカメを積んだペットボトルロケットを多く打ち上げ、
ご近所であやしい行動を起こしている者がいないかのぞき見をしています(あまり誉められたことではありませんが……)
おかげでアメリー君はキッチョム君が打った花火の情報を一番多くつかんでいたのです。
「アメリー君、キッチョム君が『あれはペットボトルロケットだ』って言っていたけどそんなこと無いよね?」
「ああ、こっちでもずっとトレースしていたけれど。あいつが打った花火は間違いなく太平池に落ちている」
デジカメロケット02
やりとりをかわす内にニホンちゃんには有る考えが生まれてきました。現状ではどうしてもこういったことを知るにはアメリー君に一々
教えてもらわなければなりません。これは非常に手間ですし、電話代もかかります。何とか自分でこういったことを調べるわけにはいかないのか?
他の家ではよその家をこっそり調べるのにペットボトルロケットの一番上にデジタルカメラを組み合わせた物を打ち上げて調べます。
幸いニホンちゃん自身ペットボトルロケットを打ち上げるだけの実力もありますし、他の家の様子を(こっそり)調べるのに使うカメラなら
去年の誕生日に親戚のカメラ屋をやっている観音おじさんと二光おじさんがくれた最新鋭デジタルカメラがあります。
これを搭載すれば何とかなるでしょう。その日からニホンちゃんの徹夜が始まりました。
誰にも知られたくないため真夜中に作業をするしかなかったのです。
「ふわ〜ぁ 流石に眠いよぉ……」
「ニホンちゃん、どうしたの?」
あまりに眠そうなニホンちゃんに気が付いてアサヒちゃんが声をかけます。
「まえにキッチョム君が花火を打ったでしょ? その対策を……」
はっと口をつぐみますが時遅し、アサヒちゃんはその言葉をしっかり聞いてしまいました
「一発だけなら誤射かもしれないじゃない! そうやってニホンは再軍備の道をすすむののね!! グングツの音が聞こえる〜!!!」
そういって走り去ってしまいました。きっと明日の壁新聞の記事にするつもりなのでしょう
「どうしよう……」
自分のミスに茫然自失するニホンちゃんに後ろから声をかけた存在が居ました
「姉さん。僕に任せてよ」
「ウヨ・・・・・・」
その晩からニホンちゃんが作業をするときにはウヨ君が見張りをするようになりました。おかげで無理に徹夜をする必要もなくなり着々と作業は
進みました。おかげでペットボトルロケットの搭載機械制作時間としては驚異的な3週間で一応の完成を見たのです。
しかし、その間にいろいろなことがありました。カメラを乗せるペットボトルロケットの2回連続失敗をしたのはキッチョム君が花火をうったのと同じ
5週間前。2回連続のペットボトルロケットの失敗にニホンママからのお小遣いも減らされてかなり厳しい状態でした。
しかし、どうにか新型ペットボトルロケットも完成を見、十分実用の域に足したとニホンちゃんは確信を持てるようになりました。
リュー君の住む離れの一室、種子島の間の縁側から何時もペットボトルロケットを打ち上げるニホンちゃん。ここでペットボトルロケットを打ち上げる
ときにはリュー君にも前もって話をしてから打ち上げるのですが今回は様子が何時もと違います
「種子島の間を通っちゃだめだって!?」
「お願い、どうしてもこのペットボトルロケットの中身は秘密にしたいの。無茶だって分かっているけど協力して」
「う〜ん。何とかならない? ここを通れないとなるとボクもかなり不便だから……」
「じゃあ、通行許可証を作るからそれをウヨに見せて。それで通れるように話をしておくから」
普段はペットボトルロケットをアサヒちゃんやリュー君、他にも誰にでも見せていたニホンちゃんですが今回ばかりはあまりに異例です。
それもそのはず。アメリー君がイスラム組のイラク家と喧嘩を初めてしまい、その余波地球町全体に不穏な空気を生み出していたのです。
ここ1〜2週間、キッチョム君と色々有ったニホンちゃんも例外ではありません。アメリー君からキッチョム君がまた花火の準備をしている
らしいとの噂が伝わってきたのです。しかし、ニホンちゃんの頭はペットボトルロケットの打ち上げで精一杯。キッチョム君の方にまで気が回りません
ましてや失敗するわけには行かないのです
デジカメロケット04
「姉さん……うん。俺がしっかりしなきゃ」
なにやら決意したウヨ君、どこかへ電話しているようです。
「あ、おじさん? ウヨです……お隣さん家のあの話は聞いていると思いますが……ええ、今度姉さんがペットボトルロケットを打ち上げるので
見張って欲しいのです……ありがとうございます!! お願いします」
そんなこんなで打ち上げ当日
本当は打ち上げ日自体も内緒のはずでしたがいつの間に広まったのか打ち上げ日も時間もばれています。
アジア町の各家から双眼鏡でこちらを覗いている気配があります。
「やっぱりアサヒからもれたのかなぁ」
「ウヨ! そこの噴射用の水注入ホース取って! 今から圧力かけるから注意して!!」
ウヨ君のつぶやきもどこへやら。すでにニホンちゃんの目は職人のそれになっています。デジカメを打ち上げるよりペットボトルロケットを
無事打ち上げることの方に気が向いてしまっているようです
「カウントダウン!!」
「10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……0!」
「リフトオフ!!」
「サブタンクからの水供給終了、切り離し!」
「切り離し!!」
「デジタルカメラカバー部分離!」
「分離!!」
「第一メインタンク水供給終了、切り離し!」
「切り離し! 引き続き軌道修正、極軌道へ入ります……トランスポンダからの信号受信、軌道投入……完了!!!」
デジカメロケット05
「……ふぅっ」
汗びっしょりになりその場に倒れ込むニホンちゃん。失敗が許されないのはどのペットボトルロケットでも同じなのですが、特に今回は大変だったようです
ふと、隣のカンコ家を見てみるとキッチョム君の部屋から横断幕が出ていました。
「『ウリとニホンの間でお互いに脅すような行動はしない』って約束を破ったニダァァァァァァァァァァァァァァァッ!
ウリの衛星打ち上げるニダァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
アメリー君がイラク家と喧嘩を始めてからずっと引きこもりが続くキッチョム君。今回の事件にも姿を見せませんでした
「キッチョムのやつ! 姉さん、対策立てないと!」
慌ててウヨはニホンちゃんに声を掛けますがニホンちゃんはデジタルカメラから送られてくる映像を凝視したままです。
「う〜ん、写真はまぁまぁだけどロケットの制御がまだまだ……か。この方面でアメリー君に勝つにはもっと打ち上げないと……」
どうやらニホンちゃん、衛星技術の向上に余念がないようです
〜余談〜
キッチョム君が打ち上げた花火ですが、本来ロケットにはきちんとした
速度定義があり、一定以上の速度に達しないとロケットとは言えません。
キッチョム君が打ち上げた自称:ロケットはその速度に達していないので
“ロケット”とはとうてい言えないのです。
もちろんキッチョム君が打ち上げた自称:ペットボトルロケットの名前は
「手歩丼」です
解説
焔星 ◆/tKycZin5w
投稿日: 03/03/31 00:52 ID:scLL+lEY
去年の夏に続いて2作目の投稿となる焔星です
元ネタは情報衛星打ち上げ&H2A5号機発射です
誤字を一カ所発見(汗)
誤)ウリの衛星打ち上げるニダァ
正)ウリも衛星打ち上げるニダァ
なお、作中に出てくる「観音おじさんと二光おじさん」は
観音おじさん=¢anon
二光おじさん=nikom
です。不用意にキャラを増やして申し訳ありません。
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(*^ー゜)b Good Job!!
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