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第1506話 名無しさん 投稿日: 03/05/05 01:26 ID:8PEF0ETM
 「13番目のカード」
 チューゴアパートのペキンの部屋の一室、そこはほとんどの人、そうチューゴ家でも限られた
人しかその所在を知らない謎の一室です。
 中央に円卓が置かれた部屋にチューゴ君は一言も喋らず座しています。円卓の中央には一本の
蝋燭が置かれそれだけが灯りとなっています。その灯りに照らされるチューゴ君の表情はいつに
も増して冷たく、そして怒気があります。
 ゆらゆらと蝋燭の炎が揺れます。それを見てチューゴ君は部屋に客が来たことを悟りました。
 「・・・来たアルな」
 客はアメリー君でした。いつもの陽気さはなく深刻で、そして暗い怒りを含んだ表情でした。
 「待たせたな」
 円卓につきながらアメリー君は言いました。
 「別に。ロシアノビッチはどうしたアル?」
 「さっき玄関で会った。もうすぐ来る」
 「そうアルか」
 暫くして重い扉がギギギ、と音を立てて開かれる音が聞こえてきました。当のロシアノビッチ
君の入室です。いつもは酒で真っ赤な彼の顔も暗く、かつ表には出さぬ憤怒が見られます。
 「悪い。遅れたか」
 「いや」
 「丁度いい時間アル」
 「そうか。じゃあ始めようぜ」
 彼も円卓に座りました。ゆらゆらと陽炎の如く闇の中に揺れる炎が三人の顔を照らし出しまし
た。その顔には子供のものとは思えぬ程の凄みがありました。
話はわかってるよ。キッチョムとこの花火だろ」
 ロシアノビッチ君の言葉に二人は黙して頷きました。先日このペキンの部屋で行われた
二人とキッチョム君を加えた三者会議でキッチョム君は花火を持っていることをアメリー
君に告げたのです。そして同時に彼はしれっとした顔で言い放ちました。
 「ウリがこれをどうするかはアメリー次第ニダ」
 と。つまり今まで持っていないと言っていたのは真っ赤な嘘でありしかもあのアメリー
君に脅しをかけてきたのです。
 他人は平気で脅しても自分が脅されることは許せない彼は怒り心頭です。また脅しのゲ
ームをかけてきたと言い席を立ちました。
 チューゴ君も怒りました。せっかく自分が用意した会談の場でそのような馬鹿げた発言
をしたのですから。しかも彼にも嘘をついていたのです。顔に泥を塗られた彼も即座に自
分の部屋に帰ってしまいました。
 また両者は自分達以外に花火を持とうとする者は絶対に許しません。彼等に逆らって花
火を持ったイン堂君はそのことでクラス会でしつこく吊るし上げを喰らいました。温厚な
イン堂君ですらそうなのです。いつもナイフを持ち歩き悪事ばかり働くキッチョム君なら
どうなるか。言うまでもありません。
 「俺もあいつが花火を持つことは許さねえ。あいつは危険すぎる。しかも」
 ロシアノビッチ君の顔が怒りで歪みます。
 「あいつは俺にも嘘をつきやがった」
 三人の意見は一致しました。人魂の如く燃える火を中心に互いに頷き会いました。
 「潰す。問題はその後だな。エリザベス達に任せるか?」
 「EU班か?無理だろ。アラブならいざ知らず連中があんなちっぽけな家
に来る筈がない」
 「石油もなんもないアルぞ」
 ロシアノビッチ君の言葉に他の二人は反対しました。
 「ニホンに任せるアルか?」
 「ニホンちゃん?彼女はもう連中とは絶対関わりたくないそうだぜ」
 「相変わらずニホンのとこの財政も苦しいみたいだしな」
 チューゴ君の提案の却下です。
 「コクレン先生は?」
 「無理アルぞ。先生今身体ボロボロアル」
 「金も発言力も期待できねえな」
 アメリー君の意見もボツです。他にもオージー君のとこやASEANグル
ープ、バチカンのおっさんも候補に挙がりましたが立ち消えです。三人共ど
うも出来る限りキッチョム家とは関わりあいになりたくないとの考えですね。
 「どうしようか」
 その時三人の脳裏にある人物が浮かび上がりました。
アメリー君が陰惨な笑みを浮かべ言いました。
 「あいつしかいないな」
 「ああ、あの馬鹿アルな」
 「普段から統一、統一、て言ってるしな」
 他の二人も暗い、ぐつぐつと不気味な音を立てて煮えたぎる釜を見る魔女の様な
笑みを浮かべます。
 「断れないよなあ、あれだけ騒いでたんだから」
 「逆らったらあいつも始末するだけアル」
 「それはそれで好都合だしな」
 三人の意見は完全に一致しました。崩壊の時に逃げてくるであろう鼠はカンコ君
に押し付け、一連の『仕事』において足りないであろうお金や犬はニホンちゃんに
彼女悲願であるジョーニンリジ入りと引き換えに出してもらうこととなり同時にア
メリー君家の商品の大幅購入、チューゴ君の社交ダンス部入り、ロシアノビッチ君
家の援助等も内密に認められました。
 「じゃあ(もう決まってるけど)採決だ。キッチョムはどうする?」
 アメリー君の言葉を合図に三人は懐に手を入れその中からそれぞれ一枚のカード
を取り出し自分の前に置きました。それはタロット大アルカナ13番目のカード、
『死』でした。血塗られた巨大な大鎌を持つ死神がぞっとする笑みを浮かべていま
す。その笑いは奇しくも今の三人の笑いと全く同じでした。
 「これでよし」
 蝋燭が溶けます。まるで命の蝋燭の様に。三人が部屋を後にした時蝋燭は完全に
消えました。カンコ家を巨大な暗雲が包もうとしていました。

解説 名無しさん 投稿日: 03/05/05 01:36 ID:8PEF0ETM
ソースは解りますね、
『北朝鮮米に核保有宣言』と『ロシア、核保有公式発表なら制裁に参加』
です。遂に滅亡へのカウントダウンですかね。それにしても今回この三人
やけにおどろおどろしいな。とても小学生とは思えん。初めてホラーな感
じで風刺を取り扱ったのですがどうでしょう?感想お願いします。

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