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第1529話 名無しさん 投稿日: 03/05/21 04:23 ID:8vQtTga5
 「ペット!?」
 タイワンちゃんはニホンちゃんが大好きです。ニホンちゃんとおしゃべりをするのも一緒に遊ぶ
のも大好きです。特に自分の家にニホンちゃんを呼ぶのはもう何にも替え難い幸せです。なにしろ
アーリアちゃんに邪魔されませんし。
 今日はニホンちゃんを見事ゲットです。アーリアちゃんを振り切りカンコ君をKOしニホンちゃ
んを家に連れ込み・・・じゃない招待することに成功しました。
 「ねえねえ、これ食べてよ。すごく美味しいよ」
 杏仁豆腐をすすめます。ニホンちゃんが甘党なのはもう承知。
 「月餅。ニホンちゃん大好きだよね」
 彼女がヨコハマの間でいつも食べていることは調査済み。
 「これ飲む?今流行りのお茶よ」
 今度はタイワン家自慢のお茶です。もういたれつくせりの大盤振る舞いです。
 (これもニホンちゃんをあたしのものにするため。ふふふふふふふふふ・・・・・・)
 なんか危険な香りまで漂ってきます。
 「あの、タイワンちゃん」
 気付いているのかいないのか(注:後者)ニホンちゃんがタイワンちゃんに話かけます。
 「あ、ああ、何?」
 一瞬心の中の考えに気付かれたのかとどきっ、としました。
 「なんかお庭で犬の鳴き声がするけど。タイワンちゃん家ファルコンでしょ?そんなに吼える
犬じゃない筈だけど」
 「犬?」
 「うん。ほらオオーーーーーーーーンって遠吠えまで」
 「ああ、あれファルコンじゃないよ。うちのペット」
 「ペット!?」
 「そうなの。この前ちょっとしたルートで買ったんだ。よかったらニホンちゃんも見る?」
 「うん、勿論!」
 実はニホンちゃんかなりの動物好きなのです。
 「じゃあ庭に行こう。いいの見させたげる」
 「行こ、タイワンちゃん!」
 さっと部屋を出て階段を降りていきます。
 「あら、効果あるみたい。ふふふ」
 なんか裏がありそうですな。
二人はお庭に来ました。そこにそのペットはいました。一見犬に見えます。けれどすぐに
犬じゃないとわかります。剣呑な眼差し、鋭い牙、大きな身体・・・。目の前のこの動物が
なにかニホンちゃんはすぐに理解しました。
 「あの、タイワンちゃん、これって・・・」
 「うん、オオカミ。ロシアノビッチから買ったの」
 あっけらかんと答えます。
 「やっぱり!ねえ、危ないよ」
 「何言ってんのよ。オオカミは人を襲わないのよ。こんなのもう常識じゃない」
 「あの、わたしが言ってるのはそういう問題じゃなくて・・・」
 「他にもいっぱいいるよ。見せたげる」
 そう言ってニホンちゃんを庭の奥の方へ引っ張っていきます。
 「テナガザル。ブジリーがこっそりと売ってくれたわ。あいつ他にもこのジャガーとか
オオアリクイとかワニとかも売ってくれたの。気前いいのよね」
 (このお猿さんもういないんじゃなかったっけ)
 「でこの金色の猿。チューゴの奴内緒だって言ってたけど特別に見せたげるね。ふふふ」
 (たしかパンダより大事にされてるんじゃ・・・)
 「ピューマ。アメリー君のシカゴ地下室で買ったわ。アメリー君も絶対言うなって言って
るんだけどね」
 (そりゃあ、ねえ・・・)
 ニホンちゃんもう真っ青です。
 (なんでニホンちゃん顔が青いんだろ。あ、あたしのコレクションに驚いてるんだ。よおし)
 さらに続けます。
 「カンガルー。オージーから」
 (タイワンちゃん、それカンガルーじゃなくてフクロオオカミなんじゃ・・・)
 「で、コモドドラゴン。インドネシアから特別購入」
 (インドネシアちゃん、どうやって売ったの?)
 「あ、あの、タイワンちゃん・・・・・・・・・・」
 ニホンちゃん震える声でタイワンちゃんに尋ねます。
 「何?」
 タイワンちゃんにっこりとした顔で聞きます。
 「あのね、悪いことは言わないからこのペット全部持ち主に返した方がいいよ。極秘に」
 そっと耳打ちするように言います。
 「なんで?買ったのよ。普通に商いで」
 「・・・皆売るとき周りを異様に気にしてなかった?」
 「うーん、そういえばなんか黒い服着た怖いお兄さん達が懐に手を忍ばせてたっけ」
 「でしょ!?だ・か・ら・すぐに返した方がいいよ」
 「わかんないな。うちじゃあ皆こうした動物集めてるよ」
 「あの、タイワンちゃん、『わしんとんさんのお約束』って知ってる?」
 「?何、それ」
 「・・・いえ、知らないならいいの」
 このお約束は以前町内会で決められたのですがタイワンちゃん家はある事情でサインし
ていないのです。
 「ねえニホンちゃん、お池行こう。ジュゴンや海亀もいるよ」
 「・・・・・・・うん」
 ニホンちゃん諦めて溜息混じりに池へ行きます。タイワンちゃんくれぐれも緑豆君達に
見つからないようにね。

 おまけ
 その日の夜カンコ君は明日の夕食にする犬を探していました。
 「ニダッ、美味しい犬はいないニダか?」
 辺りを見回すとタイワンちゃんの家の前にものすごく大きい犬がいます。
 「決めた。あれにするニダ」
 棒を握り締め近づきます。しばらくしてあの叫び声が夜空に響いてきました。
「アーーーーーイーーーーーーゴーーーーーーーーーーオーーーーー!!」
 狼と犬じゃあ格が違います。
 「オオーーーーー−ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン」
 今日も満月に遠吠えが聞こえます。

解説 名無しさん 投稿日: 03/05/21 04:27 ID:8vQtTga5
今回のソースは
 ワシントン条約
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/wasntn.html
世界の絶滅危惧種
http://eco.goo.ne.jp/wnn-z/
です。タイワンちゃんのおうちは確かワシントン条約には参加していないはずですね。
 オオカミの資料は
http://karass-web.hp.infoseek.co.jp/zoo/wolf.html
です。日本では絶滅したということになっています。
 今回な作品は鳥頭紀行が元ネタです。動物は漫画にも出ていないのも出してますが。
フクロオオカミも絶滅したと言われて久しいけどまだ目撃例があります。
 一種の動物が地球から姿を消してしまうのは哀しいことですね。

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